キーポイント:
米国の製造業データが弱含む中でも、連邦準備制度の流動性供給計画と企業の好決算が、株式および暗号資産市場を下支えしている。
暗号資産の時価総額は3月以降で8.5%上昇した。
仮想通貨トレーダーの間では、暗号資産が株式市場から明確に「デカップリング」する必要性がしばしば強調されてきたが、過去10日間において、ビットコイン(BTC)および主要アルトコインの日中の値動きは、米S&P500と密接に連動しており、貿易戦争の展開が市場心理を支配する中でもその傾向が続いている。
デカップリングが実現すれば、暗号資産が独立した資産クラスとしての地位を確立することになり、世界経済のリセッション懸念に対する防御手段となる可能性もある。この相関関係が続いていることから、市場参加者の間では「暗号資産市場は今後も株式市場の動きに追随し続けるのか」「真のデカップリングが起こるために必要な条件は何か」が議論されている。
貿易摩擦下でも堅調な株式市場
S&P500は2月19日に高値を付けて以降、4カ月間下値支持となっていた5,800ポイントの水準を回復できずにいる。それでも、カナダやメキシコとの貿易摩擦、そして主要経済地域のほぼすべてに影響する新たな関税の影響を受けながらも、株式市場は顕著な回復力を見せている。
中国国営メディアは最近、米国が水面下で貿易交渉を開始したと報じた。中国は現在も米国からの輸入品に対して125%の報復関税を維持しているが、エタン、半導体、特定の医薬品などの分野には免除措置を与えている。一方、米国も自動車メーカーに対して新関税の一部免除を行っており、双方が徐々に譲歩し始めていることが示唆される。
S&P500は4月7日に4,835ポイントで底を打った可能性があり、現在の5,635ポイントからさらに上昇する余地もある。企業が中国以外での生産移転や米国内での拠点拡大を進めることで、貿易摩擦に適応しつつあるなか、堅調な第1四半期の決算が株式市場を下支えしている。
例えば、マイクロソフトは前年比13.2%の売上成長を報告し、利益率の改善とAI需要の強さを示した。メタも4月30日に市場予想を上回る決算と売上を発表している。これにより、AIバブルの懸念や、貿易戦争によって企業の投資が抑制されるという懸念が和らいだ。
市場の焦点は連邦準備制度へ移行
4月に5カ月ぶりの低水準となった米国の製造業PMI(購買担当者景気指数)の低下よりも、FRBの今後の政策対応に市場の注目が集まっている。バランスシートの縮小を1年間実施した後、FRBは現在、売り圧力を緩和するために資産購入の再開を検討している。
流動性の増加は一般にリスク資産にとって好材料とされる。したがって、完全なデカップリングが起こらなかったとしても、仮想通貨はより支援的なマクロ経済環境の恩恵を受ける可能性がある。
短期的な相関関係はあるものの、暗号資産市場はここ数カ月で株式市場を上回るパフォーマンスを示している。3月以降、仮想通貨の時価総額は8.5%増加した一方で、S&P500は5.3%下落している。6カ月間の推移で見ると、この乖離はさらに大きくなり、暗号資産は29%上昇し、S&P500は2%下落している。したがって、これらの市場が常に完全に同期して動いていると考えるのは不正確である。
S&P500が底を打ったと断言するには時期尚早であり、貿易戦争が解決されたと結論づけるのも時期尚早である。経済的なリセッションは、両市場に悪影響を及ぼす可能性がある。ただし、現時点における株式市場の強さは、投資家のリスク回避姿勢が弱まっていることを示している。現状のような株式と仮想通貨の高い相関関係が、しばらくは最も望ましいシナリオである可能性もある。
本記事の見識や解釈は著者によるものであり、コインテレグラフの見解を反映するものとは限りません。この記事には投資助言や推奨事項は含まれていません。すべての投資や取引にはリスクが伴い、読者は自身でリサーチを行って決定してください。