豪ドル(AUD)ペッグのステーブルコイン「AUDトークン(AUDT)」を今月初頭に発表したオーストラリアのブロックチェーン企業クロノ・テック(Chrono.tech。旧社名Chronobank)が、パートナーとなる国内銀行の獲得に苦労しているという。

クロノ・テックのプラットフォーム上で利用可能なAUDTは、豪ドルと1:1で交換できるERC-20規格基盤のステーブルトークン。同社プラットフォームには、個人・企業向けの仮想通貨給与計算ソリューション「PaymentX」、仮想通貨イーサリアムのスケーラビリティを改善するレイヤー2ソリューション「プラズマチェーン」を基盤とするハイブリッド取引所「TimeX」、仮想通貨支払い対応のフリーランス向け求職サイト「LaborX」が含まれている。

同社のセルゲイ・セルギエンコ(Sergei Sergienko)CEOは、パートナー銀行の獲得は容易ではないと明かした。

コインテレグラフに対してセルギエンコCEOは、個人・企業が労働時間を売買できるHR(人事・採用)向けサービス「クロノバンク(ChronoBank)」で利用できるLH(Labor Hour)トークンの計画からステーブルコインに至るまでの経緯や、オーストラリアにおける法規制や銀行などについて語った。

オーストラリアの大手銀行、いまだ仮想通貨関連企業との提携を躊躇

セルギエンコCEOは、ステーブルコインの開発と立ち上げに関する「最も困難な課題」は、ステーブルコインを保管してくれる銀行を見つけることだったと述べた。

「(オーストラリア国内の)4大銀行のうちいくつかと話し合った際、彼らの研究チームは皆興奮していたもの、誰も最初の1歩を踏み出そうとしなかった」

その一方で、多くの小規模銀行が、ブロックチェーンをエキサイティングなニッチ分野として見ている点にすぐに気が付いたそうだ。

「新しい銀行は、仮想通貨に対して非常に寛容だ。なぜなら、彼らは顧客集めに苦労しており、仮想通貨分野について、(他行から)自分達の銀行に乗り換える顧客を集められる、ニッチ分野の一種とみている。仮想通貨と聞いただけで追い返したりしない」

しかしセルギエンコCEOは、銀行の名前は明かさなかった。

国際商取引の合理化を目指すAUDT

セルギエンコCEOは、豪ドルでペッグされたAUDTが、オーストラリア人が国内外で送金や決済を行う際の一般的な手段となることを期待していると述べた。

「理想的な使用例は、または豪ドル建て口座のお金を友人に送金したい場合や、アメリカのサービスで何らかの支払い場合だ。彼らがボタンをクリックするだけで、(受取人やサービスは)イーサリアムを受け取れる」

また、「私が見たいのは、豪ドルをAUDTに変換し、それをさらに(米ドルペッグのステーブルコインの)USDCやUSDTに替えた後、最終的に米ドルに交換するという、すべてシームレスに統合された状態だ。それが、我々が努力しているものだ」と述べた。

クロノ・テック、LHトークンからステーブルコインに移行

2016年、クロノ・テックはLHトークンに取り組み始めた。労働者が企業などに対して労働時間を提供する法的拘束力のある契約義務に裏打ちされたトークンだった。しかし同社は、約12ヵ月前にAUDT開発にシフトしたという。

「LHトークンについて人々の理解を得るのは難しすぎることが明らかになった。そのため、オーストラリアを拠点としていることもあり、豪ドル裏付けのステーブルコインの方が適していると考えた」

セルギエンコCEOは、同社がステーブルコイン発行の際に法規制上の課題に直面したものの、仮想通貨と法定通貨を交換に要するライセンスの取得は「まったく困難ではなかった」と述べた。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン