中国の中央銀行である中国人民銀行は、トークンのエアドロップをイニシャル・コイン・オファリング(ICO)にあたるとして監視の対象に含めていく考えだ。2日に公表した金融安定報告書の中で言及した。

報告書の中では、ICOと仮想通貨取引に対する厳しい姿勢を改めて示している。特にICOについては「違法な」資金調達手段であるとし、金融詐欺などのリスクがあると指摘している。

投資家に無料でトークンを発行する、いわゆる「エアドロップ」の手法が、当局のICO規制を回避する方法になっていると、報告書は指摘する。エアドロップがトークンの保有を促し、市場での投機的な動きにつながっているとみる。

人民銀行は、政府が仮想通貨の発行を厳しく規制しているにも関わらず、このような動きが増加していることに警戒感を示し、投資家保護のため、規制当局による「早期発見」を進めていく考えだ。また海外の規制当局との国際協力の必要性にも言及した。

また報告書の中では、海外に移転している仮想通貨企業や、中国国内の投資家の代わりに外国の代理店を使って仮想通貨への投資をしている企業への懸念を表明。ブロックチェーンのイノベーションを装った詐欺的なホワイトペーパーや仮想通貨投資プロジェクトにも注意喚起を行っている。

さらに人民銀行は、報告書の中で、仮想通貨分野で相場操縦やマネーロンダリグの疑いがあることにも言及。仮想通貨が資本規制や国際的制裁の回避に使われ、テロ資金供与に使用されるといった、社会へのマイナスな影響があるとも述べている。

人民銀行によると、中国政府のICO禁止措置が発動される前の2017年7月18日までの時点で、65のICOが中国で行われた。この期間中、ICOの参加者の総数は10万5000人にのぼり、調達した資金は26憶元(約3億7540万ドル)に達した。

エアドロップに対する監視を強化することに加えて、この報告書の中では中国人民銀行の仮想通貨への対応の歴史的経緯についても触れている。2013年に人民銀行がビットコインのリスクに対して通知を公表し、その中でビットコインはバーチャルなコモディティ(商品)だと定義し、中国国内では通貨には当たらないとした。さらに17年9月に人民銀行はICOへの禁止措置を行った。

人民銀行など国の監督当局が仮想通貨取引とICOについて厳しい批判を繰り返しているが、中国では仮想通貨を保有すること自体は違法ではない。中国深圳市の裁判所は10月にビットコインはザインさんとして保護されるとする判断を下した