ブロックチェーン分析企業のチェイナリシスが、一次制裁について審査するための2つのツールを急遽投入することを発表した。仮想通貨業界に無料で提供するという。

同社が10日に公表したレポートによると、審査ツールには新たな追跡ソフトウェアの主要コンポーネントが2つ含まれている。このソフトウェアは、経済制裁を回避する意図があると思われる活動について、取引所がウォレットや取引を審査するのをサポートする。即時提供される第1弾のツールは、オンチェーンのオラクルだ。

このオンチェーンのオラクルは、分散型金融(DeFi)のプロジェクトに特化したスマートコントラクトであり、仮想通貨ウォレットのアドレスが制裁対象の地域に含まれているかどうかを検証する。つまり、米国や欧州連合(EU)、国連が作成した経済制裁のリストに掲載されているすべてのウォレットを、そのオラクルを実行しているすべての者が自動的に閲覧できるようになるのだ。

来月のリリースを予定している第2のツールは、アプリケーション・プログラミング・インターフェイス(API)である。APIはオンチェーンのオラクルとまったく同じデータを利用して、ウォレットが制裁リストに含まれているかどうかを検証する。しかしこちらは、仮想通貨の中央集権型取引所やモバイルのユーザーインターフェイスなど、より多彩なアプリケーションで利用できるように設計されている。

チェイナリシスの共同創業者でCEOのマイケル・グロナガー氏は、仮想通貨の透明性の重要性に言及しながら、声明で以下のように述べている。

「ブロックチェーンに本来備わっている透明性により、制裁回避に対して仮想通貨が強力な防波堤になることを、今こそ業界が示すときだ」

同CEOはまた、チェイナリシスが審査ツールの開発を加速しており、仮想通貨業界のすべての人や団体に無料で提供するとも述べている。

「現在課されている制裁を考慮して、私たちはこれらのツールの開発を優先している。仮想通貨市場に参加するすべての者が、こうした透明性を活用し、基本的な制裁審査を行うために必要なものを無料で確保できるだろう」

チェイナリシスはさらに、「最近人気を集めている分散型プロトコルやプラットフォームの多くには、制裁リスクを効果的に管理できるツールが組み込まれていない」と指摘し、成長を続けるDeFi分野における取引の監視・精査にさらに力を注いでいくとも述べている。