仮想通貨懐疑派である米証券取引委員会(SEC)のキャロライン・クレンショー委員は、リップルとの和解案を激しく批判した。
SECとリップルは5月8日、ニューヨークの連邦裁判所に共同で書簡を提出し、2024年8月に下された差止命令の解除と、民事制裁金1億2500万ドルのうち7500万ドルをリップルに返還することを求めた。
しかし、クレンショー氏は同日発表した声明の中で、この和解案がSECの執行力を損ね、裁判所による証券法の解釈権限を弱めると批判した。
「今回の和解と、SECの仮想通貨執行プログラムの体系的な解体は、投資家に対する重大な背信行為であり、我々の法律を解釈する裁判所の役割をも軽視するものだ」とクレンショー氏は述べた。
トランプ政権のもとで、SECは前任のゲーリー・ゲンスラー前委員長の強硬路線から軟化しつつあり、仮想通貨企業に対する多数の執行措置を取り下げてきた。
一方でクレンショー氏は、もしトーレス判事が和解案を受け入れれば、「すでに得られていた投資家保護の成果が消え、規制上の空白が生まれる」と指摘し、「仮想通貨専門チームによる規制枠組みの整備が完了するまでの間、著しい空白状態に陥る」と主張している。
「この和解は、我々の機関が守るべき投資家や市場にとって最善のものとは言えず、むしろ新たな疑問を生む」
リップル裁判の今後
昨年8月、トーレス判事はリップルが機関投資家にXRPを販売した行為について、証券法の適用対象と判断し、同社に1億2500万ドルの制裁金支払いを命じていた。
今回の和解案により、リップルとSECは法廷での争いに終止符を打とうとしているが、元連邦検察官のジェームズ・フィラン氏によれば、まだ最終決着には至っていない。
フィラン氏は5月8日のX投稿で、まずトーレス判事が和解案に対して同意するかどうかを判断する必要があると述べた。
この判断が出されれば、SECとリップルは連邦第2巡回区控訴裁判所に対し、トーレス判事への「限定的差し戻し」を求めることになる。これが認められれば、正式な和解申し立てが行われる。
「差止命令が解除され、資金が分配された後に、SECとリップルは控訴裁判所に対し、SECの控訴およびリップルの反訴の取り下げを申請する。これですべてが終了する」とフィラン氏は説明した。
SECは2020年12月、リップル・ラボ社に対して訴訟を提起し、同社が未登録の有価証券であるXRPを違法に販売していたと主張していた。