英国の中央銀行であるイングランド銀行が中央銀行発行のデジタル通貨(CBDC)発行を検討している。イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁が学生向けのウェビナーの中で構想を明かした。

13日付のブルームバーグによると、ベイリー総裁はデジタル通貨発行の可能性を模索していることを認めた。

「イングランド銀行のデジタル通貨を作るべきかの質問については、検討している。検討し続けるだろう。社会における支払いそのものに大きな影響を与える可能性がある。2、3年後に何らかの形でデジタル通貨開発に向かうことになるだろう」

ブレグジット(英国のEU離脱)をめぐる交渉が続く中、英国単体の方がEUより早くCBDC発行に漕ぎ着けるかもしれない。英国は、欧州の官僚機構と相対する必要がなくなるほか、そもそもユーロ圏経済の一部ではない。このため英国は独自の通貨であるポンドをEUに所属しながら維持してきた歴史的経緯がある。

最近、デジタル通貨に対する風向きが世界的に変わってきている。

現在までCBDC開発で遅れをとっていた日銀がようやくを重い腰をあげてCBDCの実証実験を行うことを明かした。また、今週初めにはG20が現金に変わる決済手段として、デジタル通貨を容認する方向で調整していることがわかった

CBDC開発でリードする中国のデジタル人民元はすでに一部でテストされていると報じられている。2022年の北京五輪では本格運用される可能性も取り沙汰されている。

ちなみにイングランド銀行のベイリー総裁は、ビットコイン(BTC)保有者に対しては「すべてを失う覚悟をすべき」と手厳しい意見を述べていた

「以前にも公の場でビットコインへの懸念を表明したが、もしビットコインを買いたいなら、全てを失う覚悟をするべきだ。もし買いたいなら止めないが、あなたが買ったものは何の本質的価値もないことを理解するべきだ。付帯的な価値はあるかもしれないが、本質的な価値はない」

今年3月にはたたき台

イングランド銀行の前総裁を務めたマーク・カーニー氏は、先進国の中央銀行トップの中でも、デジタル通貨の可能性にいち早くポジティブな意見を表明した人物の1人だ。

昨年8月、世界の中央銀行関係者が集まるジャクソンホール会議で、カーニー氏はフェイスブックのリブラのようなデジタル通貨が世界の準備通貨として米ドルに取って代わる可能性に言及している

「経済政策の不透明性や保護主義が高まる中、ネガティブなショックに対して現状では適切に対応できない。なぜなら、限定的な政策スペースが世界経済におけるディスインフレーションを悪化させているからだ」と、カーニー氏は講演の中で指摘。その上で、世界の準備通貨として米ドルが、人民元よりもリブラのようなデジタル通貨に取って代わる方が良いと述べた。

またフェイスブック主導のリブラ構想について、英議会の公聴会の中で現在の金融システムにも欠陥があると述べ、デジタル通貨の可能性について肯定的な見方を示した。

「既存のシステムは、今の時代に合ったものではない。これらの支払いは瞬時に行われるべきであり、銀行券をオンラインで交換するのと同じようであるべきだ。それは実質的にコストがかからず、100%回復できるようになる必要がある」

その後、今年3月にはイングランド銀行は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の議論のたたき台となるディスカッションペーパーを公表した

ペーパーの内容は、今後の制度設計の論点を整理したもの。CBDCは決済インフラにイノベーションを起こすが、金融安定性に悪影響を与える可能性もあると言及した。発行するかどうかは決定していないが、CBDCを発行する場合は英ポンドと同じ価値になるとしている。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン