バンク・オブ・アメリカのアナリスト、フランシス・ブランシェ氏は、ビットコインを「非常に不安定」で「非現実的」であり、富の貯蔵やインフレのヘッジ手段としては役に立たず、壊滅的な資産であると批判した。

ブランシェ氏は、決済大手企業Visaが1時間あたり2億3600万件のトランザクションを処理する一方、ビットコインは1400件のトランザクションしか処理できず、仮想通貨は非現実的な決済方法だと主張した。

ブランシェ氏の主張は、過去数年間に伝統的な金融機関が仮想通貨に批判的な姿勢だったことを彷彿させるものだが、最近のゴールドマンサックスやJPモルガンといった大手金融機関が仮想通貨に積極的なのとは対照的だ。

ビットコインの供給量は2100万BTCという上限が設定されており、時間の計画とともに価格が上昇していくという考えに対して、ブランシェ氏はBTC価格は需要と供給によって動くと主張。供給が固定されているため、需要が変動すれば、価格が変わることになると指摘している。

ブランシェ氏はまた、ビットコインが安全な避難資産だというアイデアにも反論している。「ビットコインはリスク資産とも相関関係があり、インフレとは関係なく、非常に不安定なままであるため、富の貯蔵や決済機構としては実用的ではない」と述べている。

「そのため、ビットコインをポートフォリオで保有するという議論は分散化ではなく、安定したリターンにもならず、さらにインフレの保護手段にもならない。それはビットコインの需要が供給を上回っていることに依存して、価格が上昇しているだけだ」

多くの投資家が主にリターンに関心を持っていることを考えると、過去10年間で最高のパフォーマンスを発揮した資産であるビットコインの評価は、ブランシェ氏による批判を跳ね付けるものになるかもしれない。

ただし、ビットコインの環境への悪影響という要素は、大企業や投資家が採用する上での脅威となる可能性がある。環境や社会的な要素を重視する「トリプルボトムライン」という考え方からすれば、ビットコインへの投資が問題視される懸念がある。

仮想通貨の業界関係者は、ビットコインのマイニングの39%から76%が再生可能エネルギーを使っているという数字を引用するが、ブランシェ氏は実際にはBTCマイニングの4分の3が石炭火力を主力とする中国で行われていると主張している(この主張は、中国の四川省での水力発電が利用されていることを無視している。コインシェアーズの分析では、世界のハッシュレートの50~66%を占めるのは四川省のマイナーだという)。

ブランシェ氏は、BTC価格の上昇がマイニングの難易度を押し上げ、ビットコインマイニングでの二酸化炭素排出量を容赦なく増加させると予測している。

「システムの複雑さが増せば、最終的に価格の上昇、ハッシュパワーの上昇、エネルギー消費量の増加、そして最終的にCO2排出量の増加という悪循環が生まれることになる」

ブランシェ氏は、ビットコインへの10億ドルの投資は、1年間で120万台のガソリン車と同じ炭素排出を生み出すと資産している。つまりテスラの15億ドルのBTC購入は、道路で走るガソリン車は年間180万台分追加するということになる。

こういった環境面の批判に加え、ブランシェ氏は「マネーロンダリング、汚職、賄賂、詐欺、データプライバシーの侵害」といったリスクがビットコインに付きまとうと主張。さらに中央銀行デジタル通貨(CBDC)の登場が、ビットコインにとって長期的な脅威になるとも述べている。

ブランシェ氏の主張はあくまでアナリスト1人の見解であり、バンカメ全体の考えというわけではないことには注意するべきだろう。ほかの金融機関でも、一部の部門がビットコインに批判的でも、ほかの部門がビットコインに未来はあると考えてるケースもある。