国際決済銀行(BIS)は、年次経済報告書の公開に先立ち、6月24日にデジタル決済に関する章を先行して発表した。発表した章の中では、デジタル決済、そして中央銀行デジタル通貨(CBDC)について取り上げている。

この報告書では、中央銀行がCBDCを未来の選択肢として検討する必要性を指摘している。

「政策機会の最前線でのオプションの1つは、CBDCの発行であり、これは大きな変化をもたらす可能性がある」

CBDCを支持する最近の変化

BISのレポートでは、CBDCに関するスピーチの量を計測し、ポジティブな発言とネガティブな発言の量を比較している。今年に入ってから肯定的な発言が増えており、CBDCに対する支持の幅が広がっている。

Source: Bank for International Settlements

出典: Bank for International Settlements

また新型コロナウィルスのパンデミックによってオンライン商取引の増加や「現金によるウィルス感染に対する懸念が高まっている」事実を指摘している。

さらに新型コロナによる経済危機に対抗するため、世界各国で量的緩和策が実行されており、「現在、中央銀行の役割は、今までと同じくらい重要になっている」と、報告書では述べている。

リブラとデジタル人民元

フェイスブックの仮想通貨リブラは、中央銀行に変化に大きく迫っている。約1年前にホワイトペーパーが発表されたリブラは、世界的に大きな議論を呼び起こした。

今回のリリースの記者会見の中で、BISのイノベーションハブの責任者であるブノワ・クーレ氏は、「よく言われるように、リブラはグローバルコミュニティが目覚めるきっかけだった」と発言している。

しかし、クーレ氏は、、CBDCを巡る「軍拡競争」(特に米国と中国との間で)が起こっているという見方を否定している。

「実際に競争があるとは思わない」と、クーレ氏は述べた。「この段階では、他社が行っていることから学びたいと思っているだけだ」と語った。

BISのリサーチャーであるヒュン・ソンシン氏は、CBDCの利用は国際的なものではなく、国内的なものだろうと強調した。

「それは主に、国内の支払での安全性と効率性、そして金融包摂のためのものだ。…国際的な側面はカバーされるとは思うが、現時点では設計の特徴や実際に使用について私たちが知っていることとは異なる」

ブロックチェーンとCBDC

多くの人が指摘しているように、CBDCは必ずしもブロックチェーン技術に依存しているわけではない。ただ、BISのレポートでは、長期にわたるユースケースを満たすことに焦点を当てている。。つまり、現金が持つ特徴のいくつかを備えていることが重要性だと指摘している。

「技術的に、成功するリテールCBDCは、物理的な現金に弾力性のある包括的なデジタル的な補完を提供する必要がある。そのため、CBDCは、現金を魅力的なものにするすべての機能を備えている必要がある。基本的な要素は、発行体への信頼、法定通貨のステータス、補償されたリアルタイムのファイナリティ、そして幅広い可用性だ」

クーレ氏は、分散型台帳技術が念頭にあるとコインテレグラフに語ったが、「技術的なソリューションを特定するために必要な議論の一部に過ぎない」と述べ、断言することは避けた。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン