アルゼンチンのサンルイス州が、米ドルにペッグ(連動)した独自ステーブルコインの発行を可能にする法案を承認した。「アクティボ・デジタル・サンルイス・デ・アホロ」と名付けられたこのトークンは、州の流動金融資産で100%裏付けられ、州内の18歳以上のすべての住民が利用できるようになる。

この法案は、州の年間予算の2%を上限にステーブルコインを発行することを認めている。また、当事者間での資産の譲渡が可能なことも規定しているが、取引にどのチェーンを使用するかは明記されていない。サンルイス州には43万人以上が住んでいる。

ステーブルコインの発行は、「投資および社会経済発展のための金融イノベーション」という名称の法案に記載されている取り組みの1つに過ぎない。同法案は、ブロックチェーン技術を通じた州内のいくつかの産業分野の発展促進を目的としており、価値の創出や監査手続きの改善などを目指す。

法案ではステーブルコインの他にも、地元のアーティストによる非代替性トークン(NFT)の発行も認めており、金融と文化のインクルージョン促進を目標に掲げる。法案には次のように書かれている。

「『サンルイス・アート・デジタル・アセット』は当州発のアートコレクションとなり、地元のアーティストに対して、作品をデジタル化し、州内のウェブプラットフォームを通じてデジタル市場で売買できるようにする機会を与える。それらのコレクションの作成にはNFT(非代替性トークン)技術が用いられ、このデジタルアート作品を唯一無二のものとし、アーティストやデジタル資産の保有者には所有権と真正性を与える」

アルゼンチンで仮想通貨の採用が推進されている背景には、同国の複雑な経済シナリオがある。アルゼンチンのインフレ率は2桁を超えており、企業・政府の仮想通貨やブロックチェーン技術への取り組みに拍車がかかっている。フォーカスエコノミクス(FocusEconomics)のパネリストたちは、年末時点のアルゼンチンのインフレ率を73.5%と予想している。