過去40年間で最高レベルのインフレが様々な数値として表れ、世界経済もますます厳しい様相を見せている。そのため多くの金融アナリストは、米ドルの価格の乱高下や下落の可能性に対処するために、金への投資を勧めている。

何年もの間、仮想通貨取引を行う人々はビットコイン(BTC)のことを「デジタルゴールド」と呼んできた。しかし、ビットコインは本当に金よりも優れた投資対象なのだろうか?それでは、金へ投資することの利点を説く投資家たちがよく行う主張をいくつか見た上で、なぜビットコインが長期的な投資の選択肢として金よりもずっと優れているかもしれないのかを解説しよう。

価値の保持

金およびビットコインを購入する共通の理由として非常に一般的なのが、どちらにも経済的に不安定な時期にその価値を保ってきたということだ。

この事実に関しては豊富な記録があるし、金がこれまでの歴史の中で最も優れた資産保護の手段として機能したことも幾度かあったことは否めない。しかし、金の価値は決して不変というわけではない。下のグラフは、金の投資家たちも長期間にわたる価格下落を経験してきたことを示している。

Gold price. Source: TradingView

例えば、金を11年9月に購入した人は、現金で購入時と同じ分の金額を取り戻したければ、20年7月まで待たなければならなかった。そして、その後も金を所有し続けたとすれば、その価格は再び購入時とほぼ同じになるか、あるいはそれを下回ることとなっただろう。

ビットコインの歴史において、その価格が最高値まで回復し、更にはそれを上回るまでに3~4年以上かかったことはない。このことは、長期的に見ればビットコインは金よりもその価値を保持する能力に優れている可能性があることを示している。

BTCはインフレヘッジとして金よりも優れているか?

金はこれまでインフレに対する優れたヘッジ手段として見られてきた。なぜなら、その価格は生活費の上昇に応じて上がる傾向があるからだ。

だが、ビットコインと比較した金のチャートをよく見てみると、金の価格はこの2年間で21.84パーセントと控えめな上昇をしている一方で、ビットコインの価格は311パーセントもの上昇をしていることが分かる。

Gold vs. BTC/USDT 1-day chart. Source: TradingView

全体的な生活費の上昇スピードが一般のほとんどの人にとって手に負えないものである場合、進行し続けるインフレーションよりも速いペースで価値が上昇し得る資産を保有することは、実は資産を保持するよりもむしろ増加させるための助けとなるのである。

22年におけるビットコインの不安定さと価格の下落は苦しいものであったが、金と比べてビットコインは現在に至るまで、長期的な展望を持つ投資家たちへとずっと多くの利点を提供してきたのである。

地政学的に不安定な時代での役割

金は「危機的状況のための商品」とよく呼ばれていて、地政学的に不安定な時代にもその価値を保つことでよく知られている。世界の緊張が高まると、人々が金に投資することは知られている。

残念なことに、紛争地域やその他の不安定な地域に暮らす人々にとって、高価な物品を持ち運べというのはリスクのある提案だ。資産の差し押さえや窃盗に遭う可能性があるためである。

ビットコインはこうした状況にある人々にとってより安全な選択肢となる。なぜなら、シードフレーズを暗記してしまえばお金を無くす心配をせずに移動することができるからだ。目的地に着いたら、ウォレットを復元して、自分の資産を管理できるようになる。

ビットコインがデジタルであるという特性、そして、非中央集権型のマーケットプレイスやローカルビットコインのようなP2Pの取引所が多数利用可能であることによって、ビットコインを手に入れるための機会は金よりも豊富にあるのだ。

ドルの価値は下がり続けている

米ドルはこの数か月は堅調だったが、いつもそうとは限らない。ドルの価値が他の通貨と比べて落ち込んだ時期に、投資家たちが金やビットコインに群がったことは知られている。

もしも様々な国がこれからも米ドル重視の姿勢からより多極的なアプローチへと軸足を移していくのであれば、大規模なドル売りが起こり得るだろう。しかし、その資金がドルよりも弱い通貨を買うのに使われるわけではない。

金は数千年にわたって定番の資産だったが、現代のデジタル社会では広く使われているわけでも、受け入れられているわけでもない。また、若い世代の大部分は金のコインを実際に見たことすらない。

こうした若い世代にとって、ビットコインは人々のデジタルに溢れたライフスタイルに溶け込むことのできるより親しみやすい選択肢となるのだ。また、ビットコインは余計な防犯対策も実際の保管場所も必要としない。

ビットコインの希少性

金が投資対象として優れている理由のひとつとして、金は希少であり、長年にわたる減産期の後にはその供給に制約がかかるという点を、多くの投資家や金融専門家らが指摘している。

新たな金鉱が金を生産できるようになるまでには5年から10年はかかる。つまり、金の供給が急速に増加する可能性は低いということだ。各国の中央銀行も金を売却するペースを08年に大幅に遅くしている。

とは言え、地中にはまだ5万トン以上の金が埋まっていると推測されている。金の価格が大幅に上昇するようなことがあれば、採掘者たちが喜んでその大量の金を掘り出すことに専念するだろう。

一方、ビットコインは発行される総量が2100万枚と定められており、その発行ペースも分かっている。ビットコインのブロックチェーンが持つ公共的な特性のおかげで、全てのビットコインの場所を知り、認証することが可能となっている。

地球上に存在する金の貯蔵所を実際に全て突き止め、認証するための方法は一切存在しない。つまり、金が本当はどれほど供給されているかを知ることは決してできないのである。このため、ビットコインは希少性という観点から見ても金より断然優れているのだ。ビットコインは、人類がこれまで生み出してきた通貨の形態の中でも最も確かなものなのである。