株式投資で利益を得るには、株を売るタイミングの判断が重要だ。株を安値で買えたとしても、適切なタイミングで売却しなければ利益を得られないからだ。
「株価が上がった」という理由だけですぐに売却すると、大きな利益を得られない。しかし、売り時を逃して株価が下がってしまえば損失が発生する。株式投資で十分な利益を確保するには、どんなタイミングで利益確定(利確)すればよいのだろうか。
今回は、株価チャートから下落トレンド転換や株を売るタイミングを判断するポイントを解説する。
株を売却(利確)するタイミングの原則
株価は上下を繰り返しながらも、大きな流れ(トレンド)を形成している。株のトレンドは以下の3種類に分類できる。
- 上昇トレンド:株価チャートが右肩上がりの状態
- もみ合い局面:株価チャートが一定の値幅で横ばいの状態
- 下落トレンド:株価チャートが右肩下がりの状態
初心者が株式投資で利益を得るには、株価が上がり始めたら買い、下がり始めたら売る「順張り」が原則だ。
一般的には、上昇トレンドやもみ合い局面から下落トレンドに変わるときが売却(利確)するタイミングとなる。下落トレンドへの転換点を見極めることができれば、売却するタイミングを判断しやすくなるだろう。
出所:SBI証券 トヨタ自動車(7203)のチャートより作成
下落トレンド転換を判断するポイント
株価が下落トレンドに入ったことを見極めるには、どんなところに注目すればよいのだろうか。ここでは、株価チャートから下落トレンド転換を判断するポイントを紹介する。
ローソク足が右肩下がりになっている
ローソク足が右肩下がりになっている場合、株価は下落トレンドにあると判断できる。ローソク足の形状を見ればすぐにわかるので、初心者でも判断しやすいだろう。ただし、ローソク足を見るときは、表示期間に注意が必要だ。
たとえば、1カ月などの短期では下落トレンドでも、1年以上の長期で見ると上昇トレンドというケースもある。特に投資スタンスが中長期投資の場合は、短期と長期どちらの株価チャートも確認してトレンドを判断することが大切だ。
移動平均線が下がっている
移動平均線は、一定期間の株価の平均値をつなぎ合わせたものだ。主に「短期」「中期」「長期」の3つがあり、移動平均線が下向きの状態のときは下落トレンドにある。
移動平均線は、短期線と長期線の動きでトレンドの転換点を判断できる。たとえば、短期線が長期線を上から突き抜ける「デッドクロス」は、株価が下落トレンドへ転換するサインと言われている。
また、株価と移動平均線の乖離も注目すべきポイントの1つだ。株価が急上昇すると、株価と移動平均線は大きく乖離する。その後は移動平均線との乖離を埋めようとする力が働くため、下落トレンドへの転換点となることがある。
チャートパターンに注目する
株価のチャートパターンに注目して、株価のトレンドを判断する方法もある。ここでは、下落トレンドへ転換する代表的なチャートパターンを2つ紹介する。
ダブルトップは、株価が2回高値をつけて「M」の形を描くチャートだ。2回目の高値の後に株価が前回の安値(ネックライン)を割り込むと、下落トレンドに転換する可能性がある。
三角保ち合いは、株価の高値と安値の幅が徐々に狭くなり、三角形を描くチャートだ。株価が上値抵抗線(レジスタンスライン)を超えると上昇トレンド、下値支持線(サポートライン)を割り込む場合は下落トレンドへ転換するサインとなる。下値支持線を割り込むと、株価は大きく下落する傾向にある。
株価のトレンド転換点を判断するチャートパターンは多数存在する。まずはダブルトップや三角保ち合いのような典型的なパターンを覚えることから始めよう。
株を売るタイミング(利確)を実際のチャートで解説
ここでは、具体例として実際の株価チャートを使いながら、株を売るタイミングを解説する。
直近安値割れ
直近安値割れとは、株価が直近の安値を下回ったタイミングで売却する方法だ。直近の安値を下回ると、株価が下落トレンドへ転換したサインとなる。
任天堂(7974)のチャートを確認すると、株価は6万2500円を下値としてもみ合い局面が続いていた。しかし、7月15日辺りで下値を割り込むと、その後は下落トレンドに入っている。移動平均線が下がっていることからも、下落トレンドに転換したことがわかる。
株価が直近安値付近まで下がったところ(売り①)が最初の売りタイミングだ。直近安値を割り込んではいないが、デッドクロスが出現し、株価は下落基調にあったため、このタイミングで利確するのは選択肢の1つといえる。
また、株価が直近安値を割り込んだところ(売り②)も売りタイミングとなる。売り①は売却するか判断が難しいため、株価が直近安値を割り込んだ売り②で売却できるのが理想だ。
株価と移動平均線の乖離
短期と長期に関係なく、株価と移動平均線の間が大きく開くと株価は大きく動く傾向にある。ここでは、株価と移動平均線の乖離に注目して売りタイミングを判断する方法を確認しよう。
東急(9005)の株価チャートを確認すると、6月前半に株価が上昇し、株価と25日移動平均線が大きく乖離している。しかし、その後株価は25日移動平均線に近づくように下落に転じている。
出所:SBI証券 東急(9005)のチャートより作成
株価と移動平均線の乖離に注目する場合、株価の上昇が落ち着いて下がり始め、株価が移動平均線を下回った(売り①)が最初の売りタイミングだ。売り①を逃した場合は、移動平均線がデッドクロスを形成したところ(売り②)が売りタイミングとなる。
上昇トレンドから下落トレンドへの転換直後
上昇トレンドから下落トレンドへ転換した直後も売りタイミングの1つだ。株価上昇がしばらく続いた後に下落して、株価が下値支持線を割り込むと下落トレンドに入ったと判断できる。
リコー(7752)の株価チャートを確認すると、株価が上昇から下落に転じて下値支持線を割り込んだ後も下落基調で推移しているのがわかる。また、移動平均線がデッドクロスを形成していることからも、下落トレンドに転換したと判断できる。
出所:SBI証券 リコー(7752)のチャートより作成
株価が下値支持線を割り込んだところ(売り①)が最初の売りタイミングだ。売り①を逃した場合は、移動平均線がデッドクロスを形成するところ(売り②)が売りタイミングとなる。
短期での株価急騰時
基本的には、株価が下落トレンドに転換したときが売るタイミングだ。しかし、下落トレンドでなくても、短期で株価が急騰したときは利確を検討しよう。株価が急騰すると下落に転じるのも早いため、じっくり待っていては売り時を逃す可能性があるからだ。
ゲンダイエージェンシー(2411)の株価チャートを確認すると、しばらく値動きがなく、出来高も少ない状況が続いていた。しかし、第1四半期の決算内容や自社株買いの発表などに反応して株価が急騰し、出来高も急増している。
出所:SBI証券 ゲンダイエージェンシー(2411)のチャートより作成
値動きが少し落ち着いたところ(売り①)が最初の売りタイミングだ。ただし、このタイミングでは「まだ株価上昇が続く」と判断するかもしれない。売り①を逃した、または株価上昇が続くと判断する場合は、株価がやや下落したところ(売り②)が売りタイミングとなる。
読みが外れた場合の対処法
株価はさまざまな要因で変動するため、売りタイミングだと思っても読みが外れることもある。株価が予測通りに動かなかった場合は、どのように対処すればよいのだろうか。
あらためて売買タイミングを探る
下落トレンドに転換したと思って売却したが、実際は上昇トレンドが続く場合はあらためて売買タイミングを探る方法がある。上昇トレンドがしばらく続くと判断できるなら、すぐに買い戻してもいい。
ただし、株式投資は株価が上がり始めたら買い、下がり始めたら売る「順張り」が基本だ。しばらくは株価チャートの動きを確認して、トレンドの転換点を見極めることを心掛けよう。
別の銘柄にシフトする
読みが外れたとしても、一度売却したら別の銘柄にシフトするのも1つの方法だ。
銘柄を変えることで気持ちが切り替わり、売買タイミングを冷静に判断できるかもしれない。また、一度売却した銘柄は、トレンドの転換点を判断できるタイミングが訪れるまでに時間がかかることもある。
状況にもよるが、基本的には売却した銘柄からはしばらく離れて、別の銘柄を探すのがいいだろう。
急いで利確する
売りタイミングを逃し、その後も株価の下落が続いている場合は、すぐに売却して利益を確保しよう。
「もう少し待てば株価は上昇する」と思って保有し続けると、さらに株価が下落して損失が発生する恐れがある。また、一度下落トレンドに入ると、投資家の売り注文が集まって株価が急落するケースもある。
まだ含み益があるうちに急いで利確しよう。
株の売却(利確)で陥りがちなミスと注意点
利確を急ぎすぎない
株価チャートから売却タイミングを判断するときは、利確を急ぎすぎないことが大切だ。初心者の場合、損失を怖がって利確を急ぐ傾向にある。利益の確保は重要だが、利確が早すぎると少ない利益しか得られず、資産を大きく増やすのは難しくなる。
株式投資では、上昇トレンドから下落トレンドに転換したタイミングで売却するのが基本だ。利確を焦らず、株価が下落トレンドへ転換するタイミングを見極めよう。
損失が怖い場合は、株価が指定した値段以下になると自動で売り注文を出す「逆指値注文」を活用すれば損失を回避できる。
利益を最大化しようとしない
株式投資では、利益を最大化できるのが理想だ。しかし、「株価はまだ上がる」と持ち続けた結果、売るタイミングを逃して損失が発生しては意味がない。
「売り買いは腹八分」「頭と尻尾はくれてやれ」という相場格言があるように、欲張らずにある程度のところで利確することが大切だ。株価が下落トレンドへ転換したと判断できる場合は、早めに売却することを心掛けよう。
初心者は下落トレンド転換時の利確を心がけよう
初心者が株式投資で利益を得るには、下落トレンドに転換したタイミングで利確するのが基本だ。ローソク足や移動平均線、チャートパターンなどから下落トレンドへの転換点を見極めて、保有株の売却タイミングを判断しよう。
【関連記事】
株価チャートを読めるようになろう!【初心者向けテクニカル分析】
上昇トレンドで買いを入れるタイミングは?実際のチャートで解説【株式投資】
ファンダメンタル分析とテクニカル分析 利点や使い分けを解説【株式投資】
年間120万円の非課税投資ができる「一般NISA」とは