株式投資で利益を得るには、どの銘柄をどんなタイミングで売買するか判断しなくてはならない。売買タイミングを判断する方法には、「ファンダメンタル分析」と「テクニカル分析」の2つがある。

両者は特徴が異なるため、投資スタイルに合わせてうまく使い分けることが大切だ。今回は、ファンダメンタル分析とテクニカル分析の種類や利点、注意点について詳しく解説する。


ファンダメンタル分析とは

ファンダメンタル分析とは、企業の事業内容や業績、経済環境などをもとに銘柄を分析する手法で、「ファンダメンタルズ分析」とも呼ばれる。

経済ニュースや企業の決算資料などを読み、株価の割安度や将来性を分析して投資判断を行うのが特徴だ。企業価値に対して株価が割安だと判断できる場合は、株価が上昇するまで株式を保有する。

ファンダメンタル分析では、「企業価値と株価に差がある場合、その差を埋めるように株価は変動する」と考える。短期的な値動きよりも企業価値を重視するため、中長期投資向けの手法といえる。

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ファンダメンタル分析の種類

ファンダメンタル分析では、さまざまな経済指標が用いられる。また、企業の業績や財政状態を示す指標から株価の割安度を判断する。ファンダメンタル分析で使われる代表的な指標は以下の3つだ。

  • 株価収益率(PER)
  • 株価純資産倍率(PBR)
  • 株主資本利益率(ROE)

PERは、株価が1株当たり純利益の何倍まで買われているかを表す指標だ。「PER(倍)=株価÷1株当たり純利益」で求められる。たとえば、A社の株価が1000円、1株当たり純利益が50円のとき、PERは20倍(1000円÷50円)となる。

PERは、数値が低いほうが株価は割安だと判断される。一般的には15倍を下回ると割安、上回ると割高とされるが、絶対的な基準はないので、同業他社と比較して判断することが大切だ。

PBRは、株価が1株当たり純資産の何倍まで買われているかを表す指標だ。「PBR(倍)=株価÷1株当たり純資産」で求められる。たとえば、B社の株価が1000円、1株あたり純資産が500円のとき、PBRは2倍(1000円÷500円)となる。

PBRは仮に企業が解散したとき、株主にどれだけの取り分があるかを意味する。PERと同じく、数値が低いほうが株価は割安だと判断される。

一般的には、PBR1倍(株価=資産価値)が株価の底値の目安だが、最近では長期にわたって1倍を下回る銘柄も増えている。同業他社と比較した上で、株価が割安かを判断する必要がある。

ROEは、自己資本に対してどれだけの利益を上げたかを表す指標だ。「ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100」で求められる。たとえば、C社の当期純利益が10億円、自己資本が100億円のとき、ROEは10%(10億円÷100億円×100)となる。

ROEは、企業が効率的な経営を行っているかを意味する。数値が高いほど、「株主が拠出した資金を上手に活用している」と判断できる。一般的に「ROEは10%以上が目安」と言われるが、業種による違いもあるので、同業他社との比較が重要だ。

これらの指標をもとに投資銘柄を探すときは、証券会社のスクリーニング機能を使うと便利だ。「PER15倍以下」「PBR1倍以下」といった条件を入力すれば、条件を満たす銘柄の一覧を表示してくれる。

ファンダメンタル分析で使われる指標3つまとめ「PER」「PBR」「ROE」

ファンダメンタル分析の利点と注意点

ファンダメンタル分析には以下のような利点がある。

  • 短期の値動きにとらわれずに済む
  • 長期で大きな値上がり益が期待できる

ファンダメンタル分析は企業価値に注目し、株価の割安度や将来性を分析する手法だ。短期の値動きに一喜一憂することなく、株価が上昇するまでじっくり待つことができる。

現在は株価が低迷していても、多くの投資家が企業価値の高さや将来性に気づけば、長期的には株価上昇によって大きな利益を得られるかもしれない。

一方で、ファンダメンタル分析には以下の注意点もある。

  • 分析に時間と手間がかかる
  • 業績の良い企業が値上がりするとは限らない

ファンダメンタル分析では、優良銘柄を探すためにさまざまな投資指標を使って分析を行う。自分なりの分析手法を確立するまでは、分析に時間と手間がかかるだろう。

また、現在の業績がよくても、将来業績が低迷すると予測される場合は株価が下がることがある。投資銘柄を選ぶときは現在の業績だけでなく、業績予測や将来性にも注目しよう。

ファンダメンタル分析まとめ


テクニカル分析とは

テクニカル分析とは、過去の値動きやデータをもとに銘柄を分析する手法だ。チャートのパターンやトレンドに注目し、今後の株価を予測して売買タイミングを判断する。

たとえば、過去の値動きに一定のパターンがあれば、将来も同じパターンで株価が動く可能性が高いと予測する。

テクニカル分析では、「株価は需要と供給のバランスで決まる」と考える。業績などの経済的要因よりも値動きのパターンを重視するため、短期投資向けの手法といえる。

株価チャートのイメージ図

テクニカル分析の種類

テクニカル分析は、目的に応じていくつかの種類に分類できる。主なテクニカル分析の種類は以下の通りだ。

  • トレンド分析:市場全体のトレンド(方向性)を分析する
  • オシレーター分析:トレンドの強さ・過熱感から変化の大きさや兆しを分析する
  • フォーメーション分析:チャートパターンから今後の値動きを予測する

種類別の主なテクニカル指標をまとめた。

トレンド分析

・移動平均線(ゴールデンクロス、デッドクロス)
・MACD
・ボリンジャーバンド
・一目均衡表
・DMI

オシレーター分析

・RSI
・ストキャスティクス
・移動平均線乖離率
・RCI
・サイコロジカルライン

フォーメーション分析

・ダブルボトム、ダブルトップ
・三角保合い
・ヘッドアンドショルダーズ(三尊、逆三尊)


たとえば、トレンド分析の移動平均線は、株価のトレンドを把握するのに便利だ。移動平均線が上向きなら株価は「上昇トレンド」、下向きなら「下降トレンド」、横ばいなら「もみ合い局面」と判断できる。

また、短期移動平均線が長期移動平均線を下から上へ突き抜けることを「ゴールデンクロス」といい、買いシグナルとされる。反対に、短期移動平均線が長期移動平均線を上から下へ突き抜けるのは「デッドクロス」で、売りシグナルとされる。

テクニカル指標は種類が多いので、最初からすべてを使いこなす必要はない。気になる指標をいくつか組み合わせて、相場のトレンドを把握することから始めるといいだろう。

証券会社が提供しているトレーディングツールを使えば、個人投資家でも比較的簡単にテクニカル分析ができる。


テクニカル分析の利点と注意点

テクニカル分析の利点は以下の通りだ。

  • チャートを見るだけで売買タイミングを判断できる
  • 経済知識がなくても投資判断がしやすい

トレーディングツールを使ってテクニカル指標をチャートに表示させれば、チャートを見るだけで売買タイミングを判断できる。ファンダメンタル分析のように、さまざまな資料・データを確認する必要はない。そのため、経済知識がなくても投資判断がしやすくなる。

一方で、テクニカル分析には以下の注意点もある。

  • 過去のパターンと実際の値動きが一致するとは限らない
  • 突発的な出来事には対応できない

株価はさまざまな要因で変動するため、過去のパターンと似た値動きをしても、予測通りに株価が動くとは限らない。また、政治や経済に関する重要な出来事が起こると、パターンに関係なく株価は大きく変動する。

テクニカル分析は過去のパターンやトレンドに基づいて値動きを予測するため、突発的な出来事には対応できないことを覚えておこう。

テクニカル分析まとめ

 

ファンダメンタル分析とテクニカル分析の使い分け

ファンダメンタル分析とテクニカル分析は、どのように使い分ければよいのだろうか。どちらを重視すべきかは、投資スタイルによって変わってくる。具体的には、短期投資と中長期投資のどちらを選ぶかで判断するといいだろう。


短期投資ではテクニカル分析のみを使う

スキャルピングやデイトレードのような短期投資では、テクニカル分析のみを使う。スキャルピングは数秒~10分程度、デイトレードはその日のうちに決済し、どちらもポジションは翌日に持ち越さないのが特徴だ。

短期で何度も売買を繰り返して小さな利益を積み上げる手法であるため、チャートを見て瞬時に売買タイミングを判断しなくてはならない。投資銘柄の業績や将来性をじっくり分析する時間はないので、短期投資にファンダメンタル分析は不向きといえる。


中長期投資ではファンダメンタル分析とテクニカル分析を組み合わせる

中長期で株式投資に取り組む場合は、ファンダメンタル分析とテクニカル分析を組み合わせるといいだろう。たとえば、投資銘柄を選ぶときはファンダメンタル分析、売買タイミングはテクニカル分析で判断するといった具合だ。

中長期投資で利益を得るには、収益性や安全性を分析して長期保有できる銘柄を選ぶ必要がある。ただし、優良銘柄であっても、売買タイミングを間違えれば利益を得られない。

ファンダメンタル分析だけでなく、テクニカル分析で過去の値動きのパターンやトレンドに注目すれば、売買タイミングを判断しやすくなる。

短期ではテクニカル分析のみ、中長期ではテクニカル分析とファンダメンタル分析を併用するのがおすすめ

投資のスタイルに合わせて分析手法を選ぼう

ファンダメンタル分析とテクニカル分析は特徴が異なり、どちらも利点や注意点がある。「どちらが良い・悪い」とは決められないため、投資スタイルに合わせてうまく使い分けることが大切だ。

ただし、ファンダメンタル分析は専門知識が必要な部分もあるため、初心者には難しいと感じるかもしれない。その場合は、テクニカル分析でトレードを始め、ファンダメンタル分析は少しずつ勉強していくといいだろう。

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