世界での仮想通貨市場を急成長を受け、仮想通貨に関する規制の設置が最優先課題となっている。3ヶ月間で、多くの決定が下された。

 仮想通貨市場は、ビットコインや他の様々な有名なコインが、昨年12月に過去最高値をつけた後、年明けと同時に苦しい展開を見せている。極東で不安定さが増し、ダボスの世界経済フォーラムでは、明確に仮想通貨業界に対する冷淡な態度となって現れた 。

 しかし、高い期待にあった米証券取引委員会(SEC)や米商品先物取引委員会(CFTC)による仮想通貨に関する公聴会は、アメリカで規制の動きがさらに進むとする懸念を緩和した。この動きを見て、単純に政府と金融機関が、世界中で勢いを増す仮想通貨の規制を試みていると考えるべきではない。

 実際は、この会議の動きをきっかけに、イギリス財務省は仮想通貨のタスクフォースを構成する計画だ。SECとCFTCの例に基本的に従って、イギリスにおいて、仮想通貨産業を規制し、その成長を強化するためのガイドラインを示していくことになった。


グローバル・サンドボックスは仮想通貨を育む場

 イギリスは、おそらく、アメリカよりもずっと先をいっている。イギリスの金融行動監視機構(FCA)が、イギリス版の成功に続き、グローバル版のサンドボックスを立ち上げているからだ。英ニュースサイトのトラストノーズによると、FCA役員で競争戦略庁の長官であるクリストファー・ウーラード氏は、多くのフィンテックのスタートアップ企業が、市場へに参加しているが、その裏には、このプログラムの成功が関係している。

 国際的な連携を強化する計画は、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、極東からも参加者が集うFCAのテクスプリントのイベントから開始する見込みだ。3月にロンドンで発表されたスピーチでは、FCAジョン・グリフィス・ジョーンズ会長は、イギリスで注目を集める仮想通貨について熱心に語った 。「昨今注目の話題は、仮想通貨をどうするかというものだ。公共部門としては、それを一つの通貨の形として認めたくないという本音がある。だが同時に、消費者には、ロンドン東部のカナリー・ワーフで魅力的な投資として宣伝している。だから、仮想通貨は規制の範囲内で提供しないと、消費者にありとあらゆる被害がもたらされる可能性がでてくる」。

 FCAは、仮想通貨やイニシャル・コイン・オファリング (ICO) に対して、より客観的な態度をとっているようだ。昨年9月には消費者に対して、仮想通貨によって予期せぬ落とし穴にはまる可能性があることを警告している。

 昨年12月、FCAは、一般的な仮想通貨には反対する一方で、規制下にある金融サービス向けの分散型台帳技術の導入には興味を示したという。とはいえ、FCAはこうも言い加えた。「分散型台帳技術の導入は、運営上のリスクが適切に認識され、それが緩和される対策がとられるのであれば、(認可、非認可両方の分散台帳技術ネットワークを含む)あらゆる形の分散台帳技術が展開される可能性はある」。

 これは、FCAがビットコインや関連するICOのような公開台帳の展開を検討し、推進しようとしていることを端的に物語っている。


金融機関はいまだに興味を示していないのか?

 しかしながら、仮想通貨は、相変わらず、特に銀行のトップからは、基本的に冷淡な口調であしらわれている。つい先月、ロンドンのリージェント大学のイベントで、イングランド銀行(英中銀)のマーク・カーニー総裁は、ビットコインを痛烈に批判した。この仮想通貨は、成熟した通貨への道をたどることに失敗したのだと。

 「仮想通貨は、今までのところ、貨幣の伝統的な役割という点に関して、完全に失敗している。世界中に広がっているからといって、必ずしも価値があるとは限らない。だから誰も、仮想通貨を交換の媒体として使わないのだ」、とカーニー氏は述べた。

 コインテレグラフは、イギリス財務省や仮想通貨を推奨するタスクフォースの動きについて、マサチューセッツ工科大学の経済学教授のジョン・ヴァン・リーネン氏に話を聞いた。この高名な経済学者は、イギリスの金融機構の心情に変化が起きる可能性について、やや暗い見通しを描いた。彼は、政府、主流金融機関などの心情に変化が起きることはないだろうが、国民の仮想通貨に対する感じ方は、緩和されてきたと考えている。

 とはいえ、ヴァン・リーネン氏は、こうも打ち明けた。仮想通貨の人気上昇と連動して、規制が明確になれば、仮想通貨市場はイギリスで持ち直すかもしれない。再び、カーニー氏のリージェント大学での発言に戻ると、こうした金融機関は、ブロックチェーン技術の効果にはもともと関心があったようだ。

 カーニー氏は「仮想通貨の根底にある技術については、分散化した金融取引を実証する方法として有用であるかもしれない」と言っている。

 こう考えられないだろうか。この仮想通貨のためのタスクフォースは、自身の利益のために仮想通貨とブロックチェーン技術の最良の特性についてあら探しをしているのかもしれない。しかし、そんな閉鎖的な考え方では、世界規模で発展するこの仮想通貨という技術の発展は一向に進まない。明らかに、全体としては分散化という概念の価値を損ねている。