建物の外壁パネルが損害を受けた場合、自然災害が原因であればその補修費用が火災保険の給付対象となることがある。
しかし、建物の損害の原因はさまざまだ。
この記事では、どのようなケースであれば外壁パネルの補修が火災保険の対象になるのかについて解説していきます。
外壁パネルの損害は火災保険で補償できる
外壁パネルの損害は、損害の原因が災害によるものである場合にのみ給付の対象となります。
一方、時間の経過とともに劣化することを経年劣化といいますが、火災保険は経年劣化による損害は補償の対象にはなりません。
外壁パネルのどのような損害が火災保険の対象になるのでしょうか?
火災保険で申請できる?
具体的な外壁の損害として考えられるのは、ひび割れ(クラック)、コーキング劣化、壁の穴、凹み、損傷、色褪せ、カビ、コケ、チョーキング、塗装の剥がれなどでしょう。
このうち、経年劣化という扱いで火災保険の支給対象とならないのは、コーキング劣化、色褪せ、カビ、コケ、チョーキング、塗装の剥がれは、原因が劣化であることが多いため、火災保険の対象外となります。
それ以外の、ひび割れ(クラック)、壁の穴、凹み、損傷については災害が原因であれば火災保険の対象となる可能性が高いです。ただし、ひび割れも災害ではなく経年劣化が原因であれば、火災保険の対象外となり、塗装の剥がれは、例えば外部から者が飛んできて塗装がはがれたような場合は火災保険の対象になる可能性があるなど判断が難しいケースがあります。
補償を受けるための条件
火災保険の補償を受けるためには、加入している火災保険の補償内容が発生した災害をカバーする内容である必要あります。
火災保険の補償内容は、火事だけはなく、火災、落雷、破裂・爆発、風・雹(ひょう)・雪、水災、外部からの物体の飛来、衝突、水濡れ、不測かつ突発的な事故など多岐に渡ります。
風で物が飛んできて、建物の外壁に損害を与えた場合は風を原因とする災害、つまり風災に該当しますが、この場合、加入している火災保険が風災をカバーしていなければ補償の対象にはなりません。
ただし、念のため確認は必要ですが、風災はほとんどの火災保険は補償対象に含まれています。
一番大切なことは、加入している本人が外壁パネルの補修費用が、自然災害が原因の場合は出るかもしれないと知っておくことです。
火災保険は長期間で加入するケースが多いうえ、火災保険専用の担当営業がついていないことも多いため、実は支給要件になっているのに誰も教えてくれないというケースは少なくないのです。
受け取るまでの大体の流れ
火災保険の請求はとても簡単です。
自然災害による外壁の損傷個所を見つけたら、まず保険会社に連絡をして、事故のあった日時、損傷個所、損害の規模、原因などを連絡します。このタイミングで、保険会社は契約者あてに火災保険の請求書類を送付します。
なお、この段階で保険会社に火災保険が出るか出ないかを聞いても、具体的な損傷個所の写真などがないので、明確な返答は得られないでしょう。
次に、損傷個所を証明するために損傷個所を写真に撮ります。次に外壁パネルの補修業者に依頼をして、補修の見積もりを取り付けます。しかし、損傷個所が建物の高い部分であったり、見落としてしまう可能性もありますので、損傷個所の撮影も同時にお願いしてしまう方が安心です。
また、この段階では、まだ火災保険が出るか出ないかわかりません。火災保険が給付されるなら補修したいと考えている人はこの段階で、業者に修理を依頼してしまわないように注意してください。
そして見積もりと写真、そして、必要事項を記載した保険金請求書を保険会社に返送をします。
送られてきた給付書類、写真、見積もりを保険会社の査定係が確認し、火災保険の給付の可否や、支給額を決定します。
給付の可否が決まれば1週間程度で火災保険金が入金されるのが一般的です。なお、補修業者に直接振り込みをすることも可能です。
外壁パネルによる損害の給付事例、給付金額
外壁パネルによる損害の給付事例にはどのようなものがあるでしょうか?
損害の規模によって、大小かなり差はありますがおおよその相場についてご紹介します。
なお、保険会社によって補償内容に多少の差異はありますので必ず事前に詳細は確認してください。
支払われる保険金種類や金額
損害が火災保険の対象となる場合は、実際の修理費用の他、以下のようなものも給付対象となります。
保険会社によっては、対象とならない場合もありますので確認が必要です。
応急処置費用
暴風により壁に穴があき、雨水が吹き込んできて応急処置を修理業者に依頼した様な場合は補償の対象となります。かかった費用が必要と認められれば、全額支給となります。
残存物片づけ費用
木造建物が暴風などで、大規模な損害となったとき、剥がれ落ちたがれきなどの処分や清掃費用も補償の対象となります。
範囲特定費用
修理業者が見積作成に必要となった費用も火災保険の対象となります。
臨時費用保険金
保険金が支給される場合に、保険金額に上乗せして支払われます。
臨時費用保険金の相場は支給される火災保険×10%が一般的です。ただし上限を設けている場合がほとんどです。
実際の給付事例、給付金額
・外壁の穴、へこみ
穴やへこみの場合は、1か所当たり約1万円~6万円です。風が原因であれば、風災として、外部からの衝突による損害であれば、物体の飛来・衝突が火災保険の補償内容に含まれていれば支払いの対象となります。
足場が必要であれば、足場代も基本的には火災保険の対象となります。
・サイディングの剥がれ
サイディングの剥がれも、自然災害が原因であれば火災保険の対象となる可能性が高いです。補修費用の相場は1万~20万円。
単価に問題が無ければ、補修費用全額が火災保険の対象となります。
・外壁のひび割れ(クラック)
1㎡あたり1,700円~2,500円。足場なしなら補修費用は1~5万円。足場ありなら1~50万円。
クラックは経年劣化を原因とすることが多いですが、過去に大規模な震災があった地域では、目に見えないクラックが発生していることがあります。
なお、地震を原因とするクラックは、火災保険では支払いの対象にはならず、地震保険に加入をしていることが必要です。
地震保険は、火災保険と異なり、実損額が支払いになるわけではありません。
損害の程度により地震保険金額の5%(一部損)、地震保険金額の30%(小半損)、地震保険金額の60%(大半損)、地震保険金額全額(全損)。この4パターンの支払いしかないので、仮に地震保険金額2,000万円に加入をしていたとすると、損害の規模によって100万円、600万円、1200万円、2,000万円このどれかの金額が支払われます。
補償が受けられない場合
火災保険は基本的には経年劣化による支払いが認められませんが、損害額が免責額に満たない場合、保険の目的が異なる場合も補償の対象とならないので注意が必要です。
補償が受けられない理由とは
・損害額が免責額の範囲内
火災保険は、事故があっても一定額までは自己負担とする設計にすることができます。この自己負担額を免責額といいます。加入している火災保険の免責額を10万と設定している場合は、損害が10万円にならなければ火災保険は支払われないので注意が必要です。
免責額は少しでも火災保険を安くしたいという時に用いられ、免責額が大きくなるほど火災保険料は安くなりますが、小さな事故では機能しなくなってしまうので注意が必要です。比較的昔の火災保険に加入をしている場合は、風や雪の害が免責20万円となっている場合があります。お手元の証券を一度確認してみると良いでしょう。
・火災保険料を払っていない
火災保険料を払っていない場合も、保険金が支払われません。いざという時のために、火災保険料は確実に支払いましょう。
・火災保険の目的が異なる
外壁が風で破損し雨漏りが発生。部屋の中の家財が雨でぬれてしまったが、建物の火災保険にしか加入をしていなかったケースについて。
この場合、加入している保険の目的は建物のみで家財は対象となっていません。火災保険は保険の目的を間違えないこと。また、建物と家財は別々に加入する必要がある点には注意が必要です。
・時効を過ぎてしまった
火災保険には請求期限があり、損害が発生してから3年で時効となります。事故の発生にきづいたら、速やかに請求手続きを行ないましょう。
受けられない場合の対処法
基本的に経年劣化で外壁パネル等を補修する場合は、費用は自己負担になります。ただ、塗装に関しては、地域によっては助成を受けられることがあります。
災害によって自身の財産が損害を受けた場合、損失を所得から差し引くことができ、確定申告で税金の還付を受けられることがあります。
また、大規模災害によって建物が損害を受けた場合は、要件を満たせば災害減免法によって所得税額が軽減されます。
まとめ
外壁パネルは自然災害が原因であれば、補償の対象になります。しかし、一概に自然災害か、経年劣化かという判別は、専門業者でない限りは区別が付きにくいものです。また、自分の見えない箇所で損害が発生しているかもしれません。自然災害が発生した場合は、専門業者にまずは建物を見てもらうことをおすすめします。
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