以前からツイッター上で論争を繰り広げていた仮想通貨イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏と”破滅博士”として知られる経済学者のヌリエル・ルビーニ教授が、4日、韓国ソウルであいまみえた。

両者は、ソウルで開催されているカンフェレンス「Deconomy」で対談。ルビーニ教授は、アウェーの雰囲気の中、従来からの主張である「仮想通貨は詐欺」や「ビットコインの世界の格差は北朝鮮よりひどい」などアンチ仮想通貨発言を連発。ブテリン氏が反論した。

Decryptによると、今回、両者は仮想通貨の匿名性やプライバシーを巡って激しく議論を戦わせた。

ルビーニ教授は「仮想通貨は匿名にはならないのが現実的だ」と発言。政府は仮想通貨が「スイスの銀行口座」のようになることを許すはずがなく、これまでのシステムと同じようにKYC(顧客確認)、取引の監視、税金監査が行われるだろうと述べた。

仮想通貨には検閲に対する耐性があるというのは神話だ。現実的に政府が匿名性を許さないだろう」

ブテリン氏はこの見方に対して反論。匿名仮想通貨ジーキャッシュを例に挙げ、「既存の規制や政策に従いながら仮想通貨取引の匿名性を担保することは技術的に可能だ」と述べた。

「例えば、あなたが小売店を経営していて、10%の税金を支払わなければならないとしよう。まず第1に、単純に監査することができる。同時にゼロ知識証明を使って2つのパーティーがお互いの取引の詳細を知らずにそれが正しいことを証明できる」

ブテリン氏は、ジーキャッシュのプライバシー技術の1つであるZK-SNARKsについて「合法的でかなりクールだ」と付け加えた。

先日、匿名仮想通貨ジーキャッシュ(ZEC)を開発するエレクトリック・コイン・カンパニーのズーコ・ウィルコックスCEOは、ジーキャッシュを上場させることは、むしろ規制当局にとってメリットがあると解説。誰からも自らの経済取引を監視されない権利であるプライバシーに対する意識は仮想通貨業界の中で高まっている。

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ブテリン氏の主張に対して、ルビーニ教授は反論。

「数兆ドル規模のいかがわしい活動が(仮想通貨業界)で見られる。全ての取引が匿名になるシステムを許す国は1つもない。だから、彼らは仮想通貨の匿名性に対して取り締まりを強化するだろう。完全に匿名な仮想通貨は生き残れないだろう」

ブテリン氏は「完全な匿名性」を主張しているわけではないが、ルビーニ教授は納得できなかったようだ。

その後、両者ともに勝利宣言した。

ちなみに唯一両者が合意したのは、仮想通貨業界に投機的な資金が流入している点だったという。

ブテリン氏とルビーニ教授の論争が始まったのは、昨年10月8日。ルビーニ教授がブテリン氏のことを「一生独裁者」とツイッターで呼んだことがきっかけだ。これに対してブテリン氏は次のように皮肉を返した。

「金融危機は今から2021年の間に起きると正式に予測する。私には特別な知識もないし、実際にそう思っているわけではないが、後に世間から「最近の金融危機を予測した達人」として称賛される可能性が25%(もしくは何%でも)あるからね」

ルビーニ教授のあだ名である「Dr.Doom(破滅博士)」の由来は、2008年の金融危機を予言したことだ。