会社員をはじめとした労働者は、雇用保険に加入している。雇用保険に加入している労働者は、会社を辞めたときや解雇されたときなどに給付を受けられる。雇用保険は失業保険と呼ばれることもある。

雇用保険の給付を受けるためには、原則としてハローワークで所定の申請をする必要がある。雇用保険に加入して保険料を支払っているにもかかわらず、給付の内容を知らず申請すらしていない労働者は少なくない。そこで本記事では、雇用保険に加入する人が受けられる給付「失業等給付」の内容や要件などを、わかりやすく解説する。

 


雇用保険とは

雇用保険とは、失業や育児、介護などの理由で収入が減ってしまったときに、労働者の生活を支えるための給付が受けられる社会保険だ。以下の条件を満たす労働者は、自身や勤務先の意思とは関係なく雇用保険に加入して被保険者となる。

  • 31日以上継続して雇用される見込みがある
  • 週の所定労働時間が20時間以上である

雇用保険に加入すると「雇用保険被保険者証」が発行される。雇用保険被保険者証は、紛失しないよう勤務先で管理されており、退職時に労働者へ返却されるのが一般的だ。失業したときに雇用保険から給付を受ける際は、勤務先から受け取った雇用保険被保険者証が必要となる。

雇用保険の保険料は、被保険者と勤務先双方で負担して納める。業種により異なるが、労働者負担分の雇用保険料率は賃金の0.3%~0.4%となっており、通常は毎月の給与から天引きされる。

雇用保険の加入者が受けられる給付

雇用保険の給付は、労働者が失業したときや雇用の継続が難しくなった時などに支給される「失業等給付」と、育児休業取得したときの「育児休業給付金」がある。さらに失業等給付は、以下の4種類に分かれている。

  • 求職者給付:失業した人が求職活動をしているときに受けられる給付
  • 就職促進給付:早期に再就職すると支給される給付
  • 教育訓練給付:労働者の能力向上を目的とした給付
  • 雇用継続給付:介護休業を取得する場合や高齢になっても働く場合の給付

失業したら生活費の補填がうけられる「求職者給付(基本手当)」

求職者給付は、失業した人の生活の安定を図りつつ、より求職活動がしやすくなるよう賃金に変わる金銭を支給してくれる制度だ。雇用保険の加入者が受給できる代表的な給付である。一般的にいわれる失業手当、失業保険、失業給付とは求職者給付のこと、中でも「一般求職者給付(基本手当)」を指している場合が多い。ここでは基本手当の受給要件や給付日数、受給額などを解説していく。

失業手当(基本手当)を受給できる要件

基本手当を受給できるのは、雇用保険の加入者であった人のうち以下の2つを満たす人だ。

  1. ハローワークで求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること
  2. 離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12カ月以上あること
    ※ただし、特定受給資格者または特定理由離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6カ月以上ある場合でも可


簡単にいえば退職や解雇、倒産などで離職をしても、働ける能力や意思がなければ基本手当は受給できない。そのため病気やけが、出産ですぐに就職ができない人や、定年退職をしてしばらく休養する予定の人は、基本手当の支給対象外となる。また退職時点ですでに次の就職先から内定をもらっている労働者も、失業していないため基本手当は受給できない。

失業手当(基本手当)を受給できる期間

基本手当の支給を受けられる期間(所定給付日数)は、退職理由や勤務先で働いていた期間(=雇用保険の被保険者であった期間)に応じて、90〜360日のあいだで決まる。とくに以下の「特定受給資格者」や「特定理由資格者」に当てはまると、給付日数が手厚くなる場合がある。

  • 特定受給資格者:勤務先の倒産や解雇などで、再就職先を探す時間が充分に確保できなかった人
  • 特定理由資格者:働く期間が定められている労働者のうち労働契約を更新してもらえなかった人

特定受給資格者と特定理由資格者の所定給付日数は、雇用保険の被保険者であった期間や年齢などに応じて異なる。

特定受給資格者や特定理由資格者は、勤続年数が長いほど、基本手当の最長受給期間も長くなる。また家族の生活費や子どもの教育費などで支出が多い傾向にある年齢の方は、長期にわたって基本手当の受給が可能だ。

一方、自己都合退職者をはじめとした一般の離職者の所定給付日数は、以下のとおり全年齢共通であり、特定受給資格者や特定理由資格者よりも全体的に短くなっている。

基本手当を受給できるのは、離職をしたあと職業安定所ハローワークに来所し求職の申し込みをした日(受給資格決定日)から、7日の待期期間が経過したあとだ。しかし特定受給資格者や特定理由資格者に当てはまらない一般の離職者は、7日間の待期期間が満了したあと、さらに3カ月の給付制限期間が終わらなければ、基本手当を受給できない。ただし令和2年10月1日以降に離職した人は、給付制限期間が2カ月に短縮される場合がある。

なお基本手当の受給期間は、原則として離職をした日から1年間だ。基本手当は受給期間内で所定給付日数を限度として支給される。受給期間が過ぎると、給付日数が残っていたとしても基本手当の支給はなくなる。ただし病気やけが、妊娠、出産、育児などで、引き続き30日以上働けなくなった場合は、その働けなかった期間だけ受給期間が延長される。

失業手当(基本手当)の受給額

基本手当の受給額は、1日あたりの受給額である「基本手当日額」に、給付日数をかけて計算する。基本手当日額は、離職をした日の直前6カ月で勤務先から受け取った賃金の合計を180で割った「賃金日額」に、50〜80%の給付率をかけて計算する。なお離職前の平均給与が高いほど、基本手当日額を計算するときの給付率は低くなる。

また基本手当日額には、年齢に応じた上限が定められている。

  • 30歳未満:6760円
  • 30〜44歳:7510円
  • 45〜59歳:8265円
  • 60〜65歳:7096円
    ※2021年(令和3年)8月1日時点の上限額

たとえば年齢32歳、離職する前6カ月の平均給与が月額35万円(年収500万円)、勤続年数(雇用保険の被保険者であった期間)が10年の会社員が退職した場合、賃金日額は35万円×6カ月÷180日=1万1667円となる。離職時の年齢が30〜44歳であるため、基本手当日額は以下のように計算する。

賃金日額が4970〜1万2240円である場合、基本手当日額は「基本手当日額=0.8×賃金日額-0.3{(賃金日額-4970)/7270}×賃金日額」で計算する。この計算式に賃金日額1万1667円を当てはめると、基本手当日額は6109円となる。

もしモデルケースの会社員が会社の倒産で離職した場合、特定受給資格者となって所定給付日数は210日となるため、基本手当の総支給額は6109円×210日=128万2890円である。自己都合退職であった場合、所定給付日数は120日となるため、基本手当の総支給額は6109円×120日=73万3080円となる。

求職者給付には、ここで紹介した一般求職者給付(基本手当)のほか、基本手当に相当するものとして、65歳以上の被保険者には高年齢求職者給付金、短期雇用特例被保険者には特例一時金、日雇労働被保険者には日雇労働求職者給付金がある。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大にともなう特例

2021年8月現在も感染が止まない新型コロナウイルスの影響で、失業する人が相次いでいる。そこで雇用保険の基本手当について、給付期間の延長や対象範囲拡大などの特例が実施されている。

まず基本手当の給付期間については、所定の要件を満たすと60日延長される。また、職場で新型コロナウイルスの感染者が発生したり、本人または同居する家族に基礎疾患があったりしたことが原因で自己都合退職をした場合も、特定受給資格者となって手厚い給付が受けられる可能性がある。

特例はほかにも実施されており、より基本手当が受給しやすくなっているため、離職をした人はハローワークに相談にいくと良いだろう。

失業手当(基本手当)を受給する手続き

雇用保険を利用するためには、ハローワークで求職の申し込みをし以下の書類を提出する必要がある。

  • 雇用保険被保険者証
  • 雇用保険被保険者離職票(1,2)
  • 個人番号確認書類:マイナンバーカード・通知カードなどから1種類
  • 身元確認書類:運転免許証・マイナンバーカードなど
  • 写真(最近の写真・正面上半身・縦3.0cm×横2.5cm)2枚
  • 印鑑
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード

必要書類を提出したあとは、退職理由を元に、申請者が失業しており、すぐに働ける状態かどうかをハローワークが確認し、「受給資格の決定」が行われる。受給資格の決定を受けた失業者は、「雇用保険受給者初回説明会」に参加し、雇用保険の説明を受ける。

失業手当(基本手当)を受給できるのは、原則として失業認定日のおよそ1週間後だ。失業認定日とは、失業状態にあるかどうかや求職活動の実績などが確認される日である。受給資格の決定から約4週間後が初回の失業認定日となり、以降も4週間に1度のタイミングで設定される。なお失業認定日と失業認定日のあいだは、2回以上の求職活動をしなければならない。

会社都合で退職をした人は、失業認定日から1週間程度で基本手当が振り込まれる。しかし自己都合で退職した人は、2カ月または3カ月の給付制限期間が終わらなければ基本手当の支給は開始されない。そのため一般の退職者が基本手当を受給できるのは、給付制限期間が終了したあとに訪れる2回目の失業認定日から1週間が経過したあとだ。

早期に再就職をするともらえるお祝い金「就職促進給付」

就職促進給付には「再就職手当」「就業促進定着手当」などがある。再就職手当は、基本手当の受給資格を満たした人が、安定した職業に就いた場合、基本手当の残りの支給日数が一定以上あると受けられる手当だ。再就職手当の支給額は、以下のとおりである。

基本手当の支給残日数

支給額

所定給付日数の2/3以上

所定給付日数の支給残日数×70%×基本手当日額

所定給付日数の1/3以上

所定給付日数の支給残日数×60%×基本手当日額

※基本手当日額の上限は、6120円(60歳以上65歳未満は4950円)

就業促進定着手当は、再就職手当の支給を受けた人が、再就職先に6カ月以上雇用されており、離職前の賃金日額より低下している場合に受けられる給付だ。簡単にいえば、再就職先の賃金が前職よりも下がってしまった場合に、最大で6カ月分の差額を支給してもらえる制度である。ただし支給額には上限があるため、差額のすべてを補填できるわけではない。

再就職のためのスキルアップ支援「教育訓練給付」

教育訓練給付は、主体的に能力開発をするための取り組みや、中長期的なキャリア形成を支援するための給付だ。教育訓練給付には「一般教育訓練給付金」「特定一般教育訓練給付金」「専門実践教育訓練給付金」の3種類がある。

「一般教育訓練給付金」は、所定の要件を満たした人が所定の教育訓練を終了すると、10万円を上限として受講費用(最大1年分)の20%を支給される制度だ。ただし受講費用が4000円未満の場合、一般教育訓練給付金は支給されない。

「特定一般教育訓練給付金」は、「一般教育訓練給付金」よりも再就職しやすい高度な資格等を取得する際に、20万円を上限として受講費用の40%が支給される制度だ。

「専門実践教育訓練給付金」は、特定の専門学校や業務独占資格など、主に長期の専門実践教育訓練を受講している間、または修了した場合に、教育訓練経費の50%(年間上限40万円)が、2年間支給される制度だ。訓練修了後1年以内に雇用された場合は、追加で受講費用の20%(年間上限16万円)が受け取れる。「一般教育訓練給付金」「特定一般教育訓練給付金」よりも専門性を高めたい場合に利用しよう。


雇用継続給付

雇用継続給付には、「高年齢雇用継続給付」と「介護休業給付」がある。

高年齢雇用継続給付は、高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金の2種類があり、前者は、60歳を過ぎてからの賃金が前6カ月の賃金日額の75%未満に下がった場合に補填が受けられる制度だ。補填額は60歳以降の賃金の最大15%である。
後者は、基本手当の支給残日数を100日以上残して、60歳以降に再就職した場合に支払われる給付金だ。支給額は高年齢雇用継続基本給付金と同じく60歳以降の賃金の15%であり、再就職手当か高年齢再就職給付金のどちらか一方しか受給できない。

介護休業給付は、親族の介護のために休業した場合、賃金日額の67%を受給できる制度だ。介護休業は3回まで、合計93日間取得できる。

雇用保険の範囲は失業時を中心に幅広い

失業した際の賃金を補填する基本手当を中心に雇用保険の失業等給付について解説した。失業から次の就職先が見つかるまでの期間の賃金を補う「基本手当(失業手当)」のほかにも、早期に再就職を促進する「就職促進給付」、再就職のためのスキルアップを支援する「教育訓練給付」、再就職による賃金の低下を補う「高年齢雇用継続給付」、介護による休業時の賃金を補う「介護休業給付」など、雇用保険のカバー範囲は広い。育児休業中の賃金を補う「育児休業給付」も雇用保険の範囲である。会社員であれば全員加入している雇用保険の保障範囲をよく把握しておこう。

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