国際的な貿易緊張の高まりが仮想通貨市場を不安定にする中、こうした不確実性が機関投資家による仮想通貨採用を後押しする可能性があると、複数の業界幹部がコインテレグラフに語った。

4月2日にトランプ大統領が米国の輸入品に対して大規模な関税を発表して以来、主要な仮想通貨は二桁台の急落を記録し、年初から続く市場の下落トレンドに拍車をかけている。

しかし、ウェーブ・デジタル・アセッツの共同創業者兼CEOであるデイビッド・シーマー氏は、「経済的不確実性は、歴史的にもデジタル資産への分散投資を求める機関投資家の関心を加速させてきた」とコインテレグラフに語った。

シーマー氏はさらに、「従来の銀行決済チャネルが地政学的緊張の影響を受ける中、ブロックチェーンベースの決済ソリューションに対する需要が増加している」と述べ、国際決済ネットワークに依存しない仮想通貨の利点に言及した。

関税を巡る混乱

トランプ氏は4月9日、先週発表した関税措置の実施を一時停止する一方、中国製品に対する関税を最大125%に引き上げる方針を発表した

このニュースを受けて、米国の主要株価指数であるS&P500は8%超の急騰をみせ、先週の関税発表による下落を一部取り戻した。仮想通貨市場もこれに連動し、ビットコイン現物価格および市場全体の時価総額も約8%上昇した。

コンクリート&グロー・ファイナンスの共同創業者兼CEOであるニコラス・ロバーツ=ハントリー氏は、今回の関税騒動によって分散型金融(DeFi)の戦略的価値が改めて浮き彫りになったと語っている。

「DeFiは、信用へのアクセス、利回りの獲得、資本移動において中立的かつ国境を越えた代替手段を提供する」と同氏は述べ、「相互運用性と検閲耐性に注力する好機でもある」と続けた。

一方で、ナンセンのリサーチアナリストであるオーレリー・バルテール氏は、仮想通貨価格が当面は従来の金融市場と同様の動きを続けるとの見方を示している。

「市場の売り圧力が継続する限り、仮想通貨も他のリスク資産と同様に、より高いベータ値を持つリスク資産として連動する傾向が続くだろう」と、バルテール氏は述べている。