The Open Network(TON)財団がアラブ首長国連邦(UAE)で発表したゴールデンビザに関する誤報は、法令順守と適切な事前レビューの重要性を示す事例となった。現地の仮想通貨専門弁護士であるNeosLegal創業者イリーナ・ヒーバー氏が明らかにした。

TON財団によるこの発表は、「コミュニティの利益のため」として意図されたものだったが、UAEの複雑な仮想通貨規制に抵触する形となったという。

UAEでは仮想通貨サービス提供事業者(CASP)を5つの規制当局が管轄しており、ドバイの仮想資産規制庁(VARA)はマーケティングに関しても厳格なルールを設けている。ヒーバー氏は「地元政府関係者の支援があったとしても、連邦法と地方法に完全に準拠した形で仮想通貨のプロモーションを行う必要がある」と指摘。特にステーキングやトークン関連の勧誘は、CASPとしての規制対象になる可能性があるため慎重な対応が求められるという。

TONのゴールデンビザ騒動:経緯

TON財団は5日、トンコイン(TON)のステーキングと引き換えにUAEのゴールデンビザを取得できるというプログラムを発表した。

しかし翌日、UAEの規制当局は即座に共同声明を発表し、この発表を否定。「デジタル資産の保有者にゴールデンビザは発行されない」と明言した。また、VARAはTONの発行元が同庁の認可を受けていないことも指摘した。

削除された当初の発表では、「10年間のゴールデンビザ取得には、3年間10万ドル分のトンコインをステーキングし、さらに3万5,000ドルの手数料が必要」とされていた。

A screenshot with a now-deleted statement from the TON Foundation that was originally posted on Saturday. Source: Cointelegraph

TON財団はその後、「発表が時期尚早だった」として訂正。現在は認可を受けた第三者との協業を検討中としている。コメント要請にはすぐには応じなかった。

さらに、テレグラムのCEOパベル・ドゥロフ氏も当初この発表を後押しする形で、インフルエンサーAsh Crypto氏の投稿をX(旧Twitter)でリポストしていたが、翌日には削除している。

Ash Crypto’s X post that Pavel Durov retweeted and that rested on his X profile until Monday, 1:00 pm UTC at least. Source: Cointelegraph

Ash Crypto氏による投稿は、「TONがUAEと提携し、TONのステーカーに10年のゴールデンビザを提供する」としており、月曜午後1時(UTC)までドゥロフ氏のアカウント上で表示されていた。火曜午前10時(UTC)時点では、元の投稿はAsh Crypto氏のアカウント上で依然として閲覧可能だった。

CZによる早期警告

バイナンス元CEOのチャンポン・ジャオ(CZ)氏をはじめとする仮想通貨業界の著名人は、発表直後からその信ぴょう性に疑問を呈していた。

CZ氏はXで「これは本当なのか?」と反応し、「本当なら素晴らしいが、いまのところ矛盾する情報ばかりだ」と述べた。

Source: Changpeng Zhao

CZ氏は、政府当局からの公式発表が存在しない点を特に問題視しており、「たとえ信頼できる情報源であっても、必ず裏付けを取るべきだ」と呼びかけている。

TONの発表は当初、仮想通貨コミュニティ内で大きな盛り上がりを見せ、土曜にはトンコイン価格が急騰したが、当局による否定発表後には急落に転じた。

法務レビューが“数百万の罰金”を防ぐ

初期の期待とは裏腹に、UAE当局の迅速な否定により、TON財団の発表は「注意喚起の一例」として扱われる結果となった。法務専門家は、仮想通貨業界における“話題優先型”の発表が、適切な検証を経ないまま行われた場合に招くリスクを強調している。

「仮想通貨業界では、一日だけでも話題を独占しようとしがちだが、UAEでは法制度がすでに確立されている」とヒーバー氏は述べる。

「熟練した仮想通貨法務の専門家なら、マーケティング資料のレビューに2〜3時間あれば潜在的な問題を指摘できる。その短時間のチェックが、何週間にもわたる規制対応や数百万ディルハムの罰金を回避することにつながる」とも語り、次のように付け加えた。

「法務レビューは足かせではなく、持続可能な成長を築くための基盤です」

VARAはコインテレグラフの取材に対し、発表した共同声明を参照するよう述べ、それ以上のコメントは控えた。

S.BLOXに口座開設をして最大で3,000円のビットコインがもらえるリニューアルキャンペーンを実施【PR】

ビットコイン価格, マーケット, 仮想通貨価格予測, Market analysis