株式投資や投資信託などの投資で利益を得ても、すべてが手元に入るわけではない。利益が生じた場合、所得税や住民税を納めなければならないためだ。

投資で利益を得た場合は、確定申告が必要となる場合がある。確定申告とは、年間の所得額と所得税額を計算し、国に納める手続きのことだ。会社員や公務員も、利益の種類や開設した証券口座によっては確定申告が必要となる。

本記事では、投資で得た利益の種類や課税方法、証券口座の種類、税負担を軽減する方法などを解説する。

投資の利益にかかる税金の課税方法と税率

投資で得た利益には所得税と住民税が課せられる。課税方法は、「総合課税」と「分離課税」がある。どちらの課税方法になるかは利益(所得)の種類等によって変わる。

総合課税では、投資による利益と給与所得や事業所得など他の所得と合算した金額に所定の税率をかけて、所得税や住民税の額を計算する。所得税の税率は、課税の対象となる所得に応じて5〜45%まで7段階に分かれており、所得が高くなるほど税率も上がる。

住民税の税率は、所得の金額にかかわらず一律10%だ。また2037年までは、所得税の2.1%の復興特別所得税を納める必要がある。

所得税率一覧

分離課税は、他の所得とは切り離して税額を計算する課税方法だ。株式投資で得た配当金や売却益、投資信託の分配金、預貯金の利息収入などに20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)の税率をかけて税額を計算する。

たとえば200万円を株式に投資し、1年後の売却価格が220万円であったとしよう。税額は、(220万円-200万円)×20.315%=4万630円となり、手元に残る金額は15万9370円となる。※売買手数料は考慮せず

また分離課税には、確定申告が必要である「申告分離課税」と、利益の受取時に税金が源泉徴収される「源泉分離課税」の2種類がある。

投資の利益にかかる税金の課税方法・種類・税率まとめ


投資による利益の種類

投資による利益は「譲渡所得」「配当所得」「利子所得」「雑所得」のいずれかに該当する。

「譲渡所得」とは、資産を譲渡することで発生する所得だ。株式や投資信託の売却益・解約益などは、譲渡所得となり申告分離課税の対象となる。ただし金やプラチナなどの売却益は、総合課税の対象である。

「配当所得」に当てはまるのは、上場株式の配当金や、運用先に株式が組み込まれた投資信託(株式投資信託)の分配金などだ。なお投資信託の分配金のうち「特別分配金」には、課税されない。特別分配金は、分配金のうち購入時の基準価格(個別元本)を下回る部分であり、利益ではなく元本から支払われているため非課税とされている。配当所得は、原則として総合課税の対象だが申告分離課税も選択できる。また所定の要件を満たす配当所得は、 受取時に税金が源泉徴収されるため確定申告は必須ではない。

「利子所得」は、預貯金の利息や債券の利子、債券への投資が中心である投資信託(公社債投資信託)の分配金などが該当する。利子所得の多くは源泉分離課税の対象であるが、外貨預金の利息は総合課税制度の対象となるため確定申告が必要だ。なお外貨預金の利息は、確定申告時に「外国税額控除」を適用すると、現地で納めた税額が一定金額を限度に所得税から控除できる。

「雑所得」に該当するのは、FXや先物取引、仮想通貨などで得た利益だ。また外貨建て商品の売買によって発生した為替差益も雑所得とみなされる。雑所得は、基本的に総合課税の対象であるが、FXの決済益やスワップポイントなど、一部は申告分離課税の対象である。

投資による利益は「譲渡所得」「配当所得」「利子所得」「雑所得」がある


証券口座の種類

株式や投資信託などの金融商品を取引するためには、証券会社で口座を開かなければならない。証券会社で開設できる口座は、以下の3種類であり、口座の種類によって税金の納め方が異なる。

  • 特定口座・源泉徴収あり
  • 特定口座・源泉徴収なし
  • 一般口座

特定口座では、証券会社が年間の損益をまとめた「年間取引報告書」を作成してくれる。「特定口座・源泉徴収あり」(申告不要)を選択した場合、利益から税金が自動で差し引かれるため、確定申告は原則として不要だ。「特定口座・源泉徴収なし」を選択した場合は、年間取引報告書をもとに自身で確定申告をしなければならない。

一般口座を選択すると、証券会社から年間取引報告書が発行されないため、自身で投資の損益や税額を計算し確定申告をする必要がある。特定口座と比較するとメリットは少ないが、一部の未公開株を取引するためには、一般口座を開設する必要がある。

なお特定口座・源泉徴収なしや一般口座を開設しても、株式の配当金や投資信託の分配金、債券の利子は源泉徴収される。

多くの投資家が、損益の計算や確定申告が必要でない「特定口座・源泉徴収あり」を選んでいる。しかし年間の利益が20万円以内である会社員や公務員は「特定口座・源泉徴収なし」を選ぶ方が良い場合がある。給与以外の所得が年間20万円以下の場合、確定申告をする必要がなく所得税を納めなくて良いためだ。

ただし以下のような場合は、給与以外の所得が年間20万円以下であっても確定申告が必要であるため、投資で得た利益に対する税金も申告・納税しなければならない。

  • 年間の給与所得が2000万円を超える場合
  • 2カ所以上の事業所から給与を受け取っている場合
  • 医療費控除や住宅ローン控除などを申請する場合 

※医療費控除とは、年間で支払った医療費のうち一定金額が所得から控除される制度 
※住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んだ人が受けられる税の優遇制度

また給与以外の所得が年間20万円以内であっても住民税は支払う必要があるため、自治体の担当課で納付手続きをしよう。

証券口座の種類3つまとめ

損益通算・繰越控除

「損益通算」とは、投資で発生した損失を他の証券口座の取引で生じた利益と相殺できる制度だ。たとえば、証券会社Aの株取引で30万円の利益が、証券会社Bの取引で10万円の損失が発生したとしよう。何もしなければ証券会社Aで発生した利益に対して、30万円×20.315%=6万945円の税金がかかる。そこで証券会社Aと証券会社Bの利益を損益通算すると、税額は20万円×20.315%=4万630円に減る。

また年間の損失が利益を上回る場合は、「繰越控除」を利用することで、損失を最大で3年間繰り越せる。仮に損益通算をしたあとに、10万円の損失があった場合は、翌年の利益から10万円を控除できる。

損益通算や繰越控除を適用するためには、開設する証券口座の種類にかかわらず確定申告をしなければならない。 

投資での利益にかかる税金を抑える方法

投資での利益にかかる税金は、以下の方法で抑えられる可能性がある。

  • 配当控除
  • NISA
  • iDeCo

投資にかかる税金を抑える方法「配当控除」「NISA」「iDeCo」

配当控除

配当控除とは、国内株式の取引で配当金を得た場合、総合課税を選択して確定申告をすると配当金のうち一定割合が所得税や住民税から控除される制度だ。配当所得が1000万円以下である場合、控除額は配当所得の10%だ。

法人は事業で得た利益から、法人税を支払った残りを配当金として投資家に分配している。配当金に対して所得税や住民税が課せられると二重課税となってしまうため、配当控除が設けられている。

ただし配当控除を利用するためには、総合課税を選択したうえで確定申告が必要となる。申告分離課税、申告不要を選択すると、配当控除は受けられない。また配当控除の対象となるのは、日本国内に本店がある法人から受け取った剰余金や配当、分配などだ。外国法人から受け取った剰余金や配当などは、配当控除の対象とならない。


NISA

NISA口座を開設すると、一定金額内の投資であれば、譲渡益や分配金、配当金などが非課税となる。NISAには「一般NISA」の他に、積立投資に特化した「つみたてNISA」や、子ども用の「ジュニアNISA」があり、非課税投資枠や非課税投資期間などが異なる。

 

一般NISA

つみたてNISA

ジュニアNISA

対象商品

株式・投資信託など 投資信託、ETF

株式・投資信託など

非課税投資枠

年間120万円 年間40万円

年間80万円

非課税投資期間

5年間 20年間

5年間

投資可能期間

2014年~2023年
※2027年まで延長予定
2018〜2037年
※2042年まで延長予定

2016年~2023年

投資方法

積立投資
スポット購入
積立投資のみ

積立投資
スポット購入

ただしNISA口座で損失が発生しても、他の特定口座や一般口座と損益通算はできない。加えて、つみたてNISAでは、個別株式に投資ができない点にも注意が必要だ。


iDeCo

iDeCoとは、毎月一定額の掛金を拠出し、投資信託や保険商品、定期預金などで運用し、老後の年金を自分自身で作る制度である。積み立てた掛金と運用益は、60歳以降に老齢給付金として受け取れる。受取方法は、年金または一時金、あるいはその両方が選択可能だ。

iDeCoの運用益は、非課税である。また年間の掛金と同額が、所得税や住民税の課税対象となる所得から差し引かれるため、高い節税効果が期待できる。

年金で受け取った場合は「公的年金等控除」が、一時金で受け取った場合は「退職所得控除」がそれぞれ適用されるため、税負担はある程度軽減される。

なおiDeCoで選択できる金融商品のほとんどが投資信託であり、個別の株式には投資できない。またiDeCoの掛金上限額は、職業や勤務先の企業年金制度の有無に応じて異なる。

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