スイス国立銀行(中央銀行)のトーマス・モーザー代理政策委員は、仮想通貨とブロックチェーン技術はまだ発展途上にあり、中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)の導入は時期尚早という考えを明らかにした。地元紙のスイスインフォが21日に報じた

 モーザー代理政策委員は、スイスのツーク市「クリプトバレー」で開かれているコンフェレンスで講演し、現状のブロックチェーン技術を音楽業界の「不毛な技術革新」だったCDと比較。音楽ストリーミング配信が音楽のデジタル化を推進したように、ビットコインやブロックチェーンは消費者に対して完全に新しい選択肢を提供できる状態になっていないと話した。

 「ビットコインにも同じようなことが起きなければならない。より安く、より便利になった時だけ消費者は新しいものに飛びつく」

 モーザー代理政策委員は、2010年にスイス国立銀行の理事に任命されていて、ブロックチェーンの可能性については認めている。ただブロックチェーンが主流になる時は、「今日の状況から大きく異なっているだろう」という持論を展開し、現段階でスイス国立銀行が発行する独自のデジタル通貨「eフラン」を思い描くことはできないと話した。

 同じコンフェレンスで21日、スイス政府行政を担う連邦参事会のジョナサン・N・シュナイダーアンマン氏は、いつかブロックチェーンは「我々の経済全体に広く普及するだろう」と発言していた。ただ同氏は、国民がまだブロックチェーンに対する知識を十分に持っていないため、教育機会の充実が喫緊の課題だと付け加えた。

 「eフラン」については、2月にスイス証券取引所(SIX)のロメオ・ラッハー会長が提案。連邦参事会は先月、スイス国会に対して「eフラン」を導入した場合のリスクとチャンスについて報告を求めていた。

 スイスはツーク州に「クリプトバレー」と呼ばれる仮想通貨ハブを設けており、タックスヘイブンというステータスもあることから仮想通貨に友好的な国として知られる。ブロックショー・ヨーロッパ2018が発表した調査結果によると、ブロックチェーン企業を立ち上げるのに最も適している欧州10カ国の1位にスイスがランキングされた