RAIとは、イーサリアムを担保とした一種の「ゆるやかな」ステーブルコインで、分散型金融で重要となる価格安定性と非中央集権性の両方を実現しようとするプロジェクトだ。価格が完全に固定されているわけではなく、制御工学の手法を使ってイーサリアム価格をゆるやかに追うことから「ジェントルコイン(Gentlecoin)」とも呼称される。MakerDAOによって運営されるステーブルコイン「DAI」から分岐したコインだが、DAIとは異なりドルのような法定通貨にペグされていない。

RAIはリフレクサーラボ(Reflexer Labs)によって開発されているが、資金の管理を含む運営は自律的になされる。リフレクサーラボの代表者はステファン・イオネスキュー氏(Stefan Ionescu)。RAIの共同創業者であるアミーン・ソレイマニ氏は物議をかもしたスパンクチェーンの創業者でもある。

リフレクサーラボは著名ファンドから資金調達しており投資家の期待は大きい。コインベースの共同創業者でもあったフレッド・アーサム氏率いる投資ファンド・パラダイムが2020年8月にリード投資家として168万ドルを集めた他、先週にもパンテラキャピタルとLemniscapが主導する414万ドルのシリーズA資金調達ラウンドが完了した。

RAIが解決しようとする問題の一つは、分散型金融において基軸となっているETHのボラティリティ問題だ。ETH価格の変動が激しいとDEFIのサービスに影響がでるケースがある。そこでイーサリアム価格の変動をゆるやかに反映するRAIが活用できるというわけだ。RAI価格はETH価格の短期的な急騰や急落の影響を受けない。

RAIのもう一つの魅力は法定通貨にペグされていないため、ETHという完全に仮想通貨由来の価値の表現単位となることだ。仮想通貨が発展しても最終的にはその価値がドルや円などの法定通貨であらわされることに辟易している人も多いのではないか。RAIはそういったユーザーに支持される可能性がある。

ETHを担保としながら、ETH価格が変動しても価格が変動しないステーブルコインの仕組みはこうだ。

ユーザーがRAIをえるためにイーサリアムをステークする。イーサリアムを預金に入れ、代わりにRAIをもらうイメージだ。(現在RAIの扱いがあるのは分散型取引所Uniswap。)

RAIには償還(Redemption)価格と市場価格の2つの価格がある。市場価格が償還価格から乖離した場合、ステークされたイーサリアム(ETH)に金利が設定される。これによりユーザーはRAI価格を償還価格に戻すインセンティブを得ることができる。

ソレイマニ氏は「(金利が)一種のバネのような働きをする。RAIの市場価格が償還価格から遠のくほど金利はより強力になり、RAIを均衡地点に戻すインセンティブはより大きくなる」としている。

2020年を通して実施されたテスト段階では、ETH価格が250%上昇する中、RAIは4%以下のボラティリティレベルを維持することに成功したという。

ドルなどの法定通貨にペグされない、クリプト・ネイティブな単位をもつ仮想通貨RAI。注目に値するプロジェクトだ。