世界的なステーブルコイン決済システム構築の競争が加速している。従来型の金融機関と仮想通貨インフラ企業が、国際的な資金フローを巡ってしのぎを削っている。
ブロックチェーンインフラ提供企業ファイアブロックスは、コンプライアンスと接続性に重点を置いたグローバルなステーブルコイン決済ネットワークを発表した。同日には、ストライプの最高経営責任者(CEO)であるパトリック・コリソン氏が、ステーブルコイン取引に特化した新たなレイヤー1ブロックチェーン「テンポ(Tempo)」を公開した。
ファイアブロックスの上級副社長であるラン・ゴルディ氏は、この新ネットワークについて「プログラム可能でコンプライアンスに準拠し、リアルタイムでの資金移動を可能にする相互運用性に注力している」と説明した。
同社によると、ステーブルコイン決済を検討する企業は、銀行、流動性、コンプライアンスのパートナーが入り乱れた状況に直面しており、スケーリングが難しいのが現状だという。今回の新ネットワークは、100か国以上にわたる40以上の事前審査済みプロバイダーと接続することで、ステーブルコイン導入を容易にすることを目的としている。
ストライプが狙う決済の空白地帯
ストライプもまた、企業向け導入を視野に入れている。特に既存のブロックチェーンが未対応の決済サービス統合に焦点を当てている。
コリソン氏はX投稿で「現実の金融アプリケーションにとって、手数料がユーザーにとって理解しやすい法定通貨建てであることは価値がある。しかし既存のブロックチェーンは、手数料をブロックチェーン固有のトークン建てで設定している」と述べた。
テンポはストライプとベンチャーキャピタルのパラダイムによってインキュベートされたネットワークだ。コリソン氏はテンポを「大規模で現実的な金融サービスアプリケーションに最適化した、決済志向のL1だ」と説明した。
DefiLlamaによると、法定通貨にペッグされた仮想通貨の時価総額は2812億ドルに達しており、ステーブルコインの勢いは増し続けている。
相互運用性はステーブルコイン戦略の中心となっており、発行者は複数のブロックチェーン上でのローンチを目指すが、流動性の分散やユーザーベースの断片化に苦戦している。
2023年9月には、クロスチェーンブリッジのワームホールがサークルのクロスチェーントランスファープロトコルを統合し、USDコイン(USDC)の4つのブロックチェーン間での移転を可能にした。
グローバルな競争が本格化
ファイアブロックスとテンポは、ステーブルコイン決済システムの提供企業だけでなく、ここ数年で仮想通貨業界に参入してきたVisaやマスターカードといった伝統的な決済事業者とも競合する。
Visaは7月に、決済プラットフォーム上で取り扱うステーブルコインを拡大すると発表した。
仮想通貨ネイティブ企業も決済ネットワークを展開している。リップルは8月にステーブルコイン決済プラットフォーム「レール」の買収計画を発表し、ステラは国際送金を可能にする分散型決済ネットワークを構築している。
5月にアルテミスが発表したデータによれば、ステーブルコイン決済の取引高は940億ドルに達しており、その牽引役はB2B(企業間取引)とカード連動型ステーブルコイン決済の2分野であった。
ステーブルコインは「プログラム可能なマネー」とみなされ、従来の法定通貨と比べて利便性が高い。発行企業はスマートコントラクトを通じてお金にロジックを組み込むことで、摩擦やカウンターパーティリスクを軽減できる。
従来の金融機関もステーブルコインに関心を示しており、JPモルガン・チェースやシティグループはステーブルコイン分野への参入を検討している。
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