マネックスグループの松本大CEOは26日、フェイスブックの独自仮想通貨「リブラ」の発行体であるリブラ協会に申請を出していることを明らかにした。日本企業でリブラ協会への参加の意思を表明しているところは初めて。
松本氏は26日、マネックスの2019年4~6月期決算の記者会見で、リブラ協会に参加する意思があること、および申請を出していることを明らかにした。
同氏は、日本の金融機関は例外はあるが基本はグローバルではないので参加条件をみたせないところが多いが、マネックスはグローバルにビジネスを展開しているので「形式的には」条件をクリアしているとみている。
松本氏によれば、8月末までに第1次審査が終わり、9月末までに参加するかどうかが決定する。ただ、リブラは米議会などから厳しい批判を浴びているためスケジュールは流動的になる可能性もある。
リブラ協会への参加には1000万ドル(約10.8億円)支払う必要があるが、松本氏は「しっかり考える」と語った。
「私はリブラというのは大きな可能性を持っていると思うので、前向きに考えたい」
リブラ協会はフェイスブック以外に、VISAやウーバー、コインベースなど27の企業・団体が参加することになっている。もしマネックスが参加すれば、日本企業としては初めてリブラ協会に参加する企業となるだろう。フェイスブックは、リブラ協会の参加企業を100社にまで拡大したいとしている。
追記 7月26日17時
松本氏は、クロスボーダー(国をまたいだ)送金市場、新興国への寄付や出稼ぎ労働者の母国への送金などに「金融包摂」にリブラの可能性を感じている。
また日本でもリブラ活用の可能性はあるとみている。松本氏は、日本では「ポイントや疑似通貨が乱立」しているものの「東京五輪などで外国人が来ても使えない」と指摘。そういう状況をリブラは解決できる可能性があると指摘した。
既報の通り、リブラには世界中で慎重論が噴出している。一方、イランが仮想通貨を産業として認めると報道されている。米国で仮想通貨に関する議論が進まない中、イランは着々と規制緩和を進めている形だ。
こうした現状を受けて松本氏は、「仮想通貨を止めようとすればするほどアンダーグラウンドに行ってしまう」と指摘。今後は「アンダーグラウンドで信用がない人たちがやるよりは、信頼できるオペレーターが良いという議論に変わっていくと思う」と述べた。
現時点でマスターカードやVISAなど世界を代表する企業27社の参加が見込まれるリブラ協会。松本氏は、「VISAとかマスターカードは世界の時価総額の20位内の会社」であり、「これ以上信頼できるオペレーターがいるんですか?」とオペレーターの信頼度の高さを評価した。
また、金融活動作業部会(FATF)が仮想通貨に対して厳しいルールを課すことに対しても「信頼につながる」とし、「今後仮想通貨は正常化していくというか、市民権を得ていくという風に私は考えている」と話した。
米議会からは、「リブラは米ドルに匹敵するまったく新しい国際金融システムを脅かす可能性がある」という声も出ている。
これに対して松本氏は、あくまでリブラはドルやユーロ、円など法定通貨のバスケットと連動するため、「ドルがなければリブラができない」。まだ議論の余地はあるとしつつも、「中央銀行の機能をないがしろにするものとは思えない」とし、「中央銀行や議会はネガティブな反応をしすぎ」という印象を語った。