マサチューセッツ工科大学(MIT)のデジタル通貨イニシアチブ(DCI)が、消費者向けに拡張することを目的としたデジタル通貨の開発で、ボストン連邦準備銀行を支援する。DCIのディレクターであるネハ・ナルラ氏はコインテレグラフに対し、以下のように述べた。

「私たちは、消費者が使用でき、国の通貨に必要とされる安全性と耐性を提供できるハイスループットで低遅延な取引システムを開発しようとしている」

これら2つの組織の間の複数年にわたる連携はいまだにごく初期段階にあり、情報はあまり公表されていない。一方、銀行間のデジタル台帳のより新しいバージョンの開発ではなく、消費者が使用できるようなものの開発に焦点が合わせられている。そのような技術に必要な取引スループットを推定することは困難だが、米国の人口が約3億3000万人であり、米ドルが世界で最も広く使用されている通貨である(米ドルを公式に採用している国もある)ことを考慮すれば、必要な取引スループットはかなり高いだろう。

DCIの任務はMITのライセンスの下でリリースされる技術を構築することだとナルラ氏は述べた。プロジェクトは2~3年におよぶと予想されており、開発された技術がデジタルドルの発行に使用されるかどうかについて最終的な決定を下すのは議員と政策立案者だ。プロジェクトの重要な問題の1つは、潜在的利用者に提供されるべきプライバシーと匿名性の水準を決めることのように思われる。

「そのため、本プロジェクトの2年目に、法律に準拠しながらプライバシーや匿名性を確保するためにどのような妥協を行えるかをより深く調査していく」

研究者たちは既存の技術を調査してきたが、任務に適した技術を見出していない。DCIが連邦政府から受けた任務は、新しい技術をゼロから開発することだ。

「私たちが目にしてきた既存のプラットフォームはどれも、中央銀行デジタル通貨(CBDC)のユースケースのために特別にデザインされたものだとは思わない。また、それらがCBDCのユースケースの要件を満たすことができるのかどうかも不明だ。既存のプラットフォームが要件を満たすことができる可能性もあるが、私たちに託された任務は、ゼロからスタートしてCBDCに特化したデザインだと思われる技術をデザインすることだ」

現時点で、ナルラ氏はこの新しい技術のバックボーンがブロックチェーンになるのかどうかを明らかにしてくれなかった。「分散型暗号システムのベストプラクティスを幅広く適用したデザインを生み出すつもりだ」と彼女は述べた

DCIはフェイスブックのリブラの調査を行い、その技術は興味深いものだが、民間部門の企業によって開発され、中央銀行が完全にコントロールできないような技術を中央銀行は使用したいとは思わないだろうとナルラ氏は考えている。

ナルラ氏によると、DCIは暗号専門家を雇用しているが、今後外部からの助けを求める可能性があるという。今回のプロジェクトを通じてDCIが行った研究とDCIによって生成されたコードはすべて将来に一般公開されるとナルラ氏は述べた。

今回のプロジェクトが、この技術の開発に重点を置く米政府主導による唯一のデジタル通貨プロジェクトなのかどうか不明だが、もしその場合、デジタル通貨分野の競争で米国は中国に大きく後れを取っていることになる。従って、最短でも2024年または2025年より前に米政府がこのプロジェクトで得たものを適応させることができる可能性は低いだろう。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン