ビットコインのネットワークに異変が起こっている。

 セグウィット2xの中止が発表されて以来、ビットコインの取引手数料が過去最高となり、ネットワーク上で16万件以上の大量の取引が承認されないままになっている(日本時間で12日午後8時現在)。承認待ちの取引数としては、今年5月以来の高水準。マイナーの離脱等を背景にネットワークに巨大な負荷がかかっているようだ。

 また、ビットコインキャッシュの暴騰とビットコイン暴落の背後には、セグウィット2xを果たせなかったグループの暗躍があるのでは、という憶測もある

 香港在住のトレーダーがコインテレグラフジャパンに語ったところによると、「確証はできないが、もしかしたらこれは一種の市場操作かもしれない。何者かが架空の取引を増大させてビットコインのネットワークに圧をかけているようにみえる。もしかしたらセグウィット2xを推進していた何者かが分岐案の中止をうけビットコインを売って、得た資金でビットコインキャッシュを買いあげている。「ブロックサイズ引き上げを頑なに拒むビットコインの終焉」を演出し、やはりブロックサイズ引き上げは必要だったという印象を与えるためだ」。

 実際、8MBのブロックサイズを持つビットコインキャッシュが暴騰し、一見、ブロックサイズ引き上げ派が市場の支持を集めた形になっている。

 しかし大きなブロックサイズを持つブロックチェーンは、資金力のある企業やマイナー集団による中央集権を助長する傾向があり、ビットコインの思想から乖離する恐れがあるのも事実だ。

 ブロックサイズの引き上げ以外で、ビットコインの処理能力を大幅に向上させる方法として残されているのは、「ライトニング・ネットワーク」と呼ばれる新技術だ。

 

「ライトニング・ネットワーク」はビットコインを救うか

 ライトニング・ネットワークは、ユーザー間で私的な「決済チャンネル」をブロックチェーンの外に開くものだ。ユーザーは取引の際この私的決済チャンネルを使って行うが、取引の結果内容は、別のチャンネルを使ってブロックチェーン上に送りこむ。これによりブロックチェーン上でマイナーが処理しなくてはならない取引量が激減し、取引コストやスピードが上がるという。同ソフトは現在開発中で、ライトコインのネットワーク上で現在トライアルが始まっている。

 ライトニング・ネットワークの実施の前提になるのは、今回中止されたセグウィット2xの第一段階といえる「セグウィット」の実施だった。セグウィットはセグリゲイテッド・ウィットネス(分離された証人)の略で、ブロックチェーン上の各ブロックから署名情報だけを分離してブロック内のスペースを空ける方法だ。セグウィットは今年8月に実施され、ブロックが処理できる取引量を約2倍にしたとされる。

 また、ライトニング・ネットワークを稼働させるためのバグ修正にも、セグウィットが必要とされた。

 ちなみに多くのマイナーや企業が参加したニューヨーク合意においては、今年11月にブロックサイズを1MBから2MBに引き上げることを条件に、第一段階としてセグウィットの実施が認められた。

 ところがセグウィット2xは空中分解した。

 そこでビットコインの処理能力を上げるために残っている方法が、ライトニング・ネットワークなのだ。

 ライトニング・ネットワークを使うと、ビットコインのブロックサイズを引き上げをせずに、安全性の確保された私的決済チャンネルを通して取引が瞬時に承認されるため、取引承認の遅延や「渋滞」がなくなる見込みだ。

 うまくいけば、ビットコインがビザ並みの決済処理速度を有する日がくるかもしれない。

 

処理速度のボトルネックを解決するコインが勝つ

 もちろん、取引処理能力の問題は、全ての仮想通貨に共通する。この問題を解決できるコインが、今後の勝者になっていくだろう。

 たとえばイーサリアムも、ライトニング・ネットワークと似た仕組みをもつ「ライデン・ネットワーク」を開発中だ。ダッシュはあくまでもチェーン上でのスケール化を追及し、今から一か月後にはブロックサイズを2MBへ引き上げる。

 成長期にある仮想通貨に高くそびえるスケール化問題。これが今後の仮想通貨相場の重要テーマになってきそうだ。