4月以降、日本では10万円の特別定額給付金が支給されている。米国最大の仮想通貨取引所コインベースで見られたように、新型コロナ対策用の政府からの給付金をそのまま取引所に入金した日本人は多かったのだろうか?

ビットバンク、ビットフライヤー、コインチェックのデータによると、日本では給付金による仮想通貨購入への影響は限定的だったことがわかる。

「給付金の10万円は仮想通貨市場に注ぎ込まれているのか?」というレポートの中で、ビットバンクのマーケットアナリストである長谷川友哉氏は、一部で「若干の異変」は見られたものの、総じて給付金の効果は特に確認さなかったと報告した

「若干の異変」として長谷川氏は、例えば6月に20〜30代の若年層と40代、そして関東圏で丁度10万円の入金が前月比でやや増えていたと指摘。10万円丁度の入金は、40代で36%以上の増加して2カ月ぶりに20代の数値を上回った。

ただ、長谷川氏によると、これらの増加は投資行動全体に重大な影響を及ぼしたとは言えない。

6月の10万円入金と2019年12月〜2020年12月における同等額の入金を比較して、長谷川氏は次のように分析した。

「6月の入金件数は、過去に月次BTC出来高が同等だった月(2019年9月〜2019年12月)と比較すると決して多くはなく、『多くの日本人投資家が給付金を利用して暗号資産(仮想通貨)を購入している』と結論づけることはできないでしょう」

ビットフライヤーとコインチェックで給付金効果は?

コインテレグラフジャパンは、新型コロナ対策として配られている10万円の定額給付金の効果があったかビットフライヤーとコインチェックにも質問をした。ビットバンク同様、両者ともに給付金の効果は限定的であったことが明らかになった。

ビットフライヤーによると、4−6月の各月を2月と比較したところ10万円の入金件数は1.1~1.2倍程度伸びていた。ただ、先述のコインベースで見られたような急激な増加ではなく微増であることに加えて、ビットフライヤーは「給付金を活用するためなのか、コロナ禍での投資先見直しの影響なのか、また関係ない別の要因なのか」について結論づけられないと述べた。

またコインチェックでは、10万円丁度の入金は「今年に入ってから4月までは増加傾向」だったものの、5月は増加が見られなかった。2020年第1四半期(1~3月)と第2四半期(4~6月)を比較した場合、10万円丁度の入金は後者が前者より減少傾向だった。

なぜ効果は限定的?

長谷川氏は、特別給付金による仮想通貨への効果が見られなかった理由について「本邦消費者の投資に対する傾向に起因しているのではないか」と指摘した。

「日本の一般的な家計の金融資産構成は、15%が金融資産(保険、年金、定型保証を除く)で、50%が現金・預金であるのに対し、欧米の平均的な家計では日本と比べ金融商品への配分が多いというデータがあり、日本人は投資よりも貯蓄をする傾向が強いようです」

実際、金融機関を除く企業、個人、地方公共団体などが持つ現金、普通預金、定期預金といったマネーストックは6月に統計開始以来最大の伸び率を記録した。