ステーブルコインを持っているだけで利子がもらえる時代がくるという見方が出ている。
フリーの仮想通貨研究者Hasuによると、これまでステーブルコインの保有者は発行者に対してある意味「無料のローン」を提供していたが、今年その流れが変わるかもしれない。
ビットコインなど仮想通貨より価値が安定するとされるステーブルコイン。円やドルなど法定通貨に1対1で連動する形態のものが多く、現在は数多くのステーブルコインが誕生している。Hasuは、差別化を図る上でステーブルコイン保有者に対する利子の付与が一つのカギになるのではないかと予測。ステーブルコイン同士で価格競争が始まるだろうとみている。
これまでのステーブルコイン運用
Hasuによると、5大ステーブルコインは現在、26億7000万ドル(約2900億円)ほど顧客から預かっており、年率2.5%の利子率で、年間6750万ドル(約74億円)の収益を生み出している。
これまでは、この顧客の資産をどのように運用するかが焦点となっていた。
例えば、USDコイン(USDC)を発行する米仮想通貨決済企業サークルは、顧客から預かっている法定通貨について「流動性が高く、AAA評価の債券に投資する」と発表。また、仮想通貨取引所ビットメックスのリサーチ部門は、ステーブルコインの発行者はただドルを保管するのではなく、リスクの高い債券への投資に回すだろうと予想。ステーブルコインに投資する前に次のことを確認するよう呼びかけた。
・提携先の銀行はどこか
・どのような債券をファンドが保有しているか
・一個人としてのあなたが等価(1ユニット=1ドルなど)で換金できるか?その時間はどのくらいかかるか?
これからの差別化
Hasuは、こうした流れが今後代わり、保有者が利子を得られる時代がもうすぐ来るとみている。
実際、起業家のウィンクルボス兄弟が手がけるジェミナイは、1ドル分のトークンを0.99ドルで販売したことは、利用者に対して利子を払う時代がもう目の前にあることを示唆しているという。
利子の支払いは、毎月か2カ月に1回、保有者のアドレス宛に支払うのが簡単な方法だろうとHasuはみている。
ただ、これはステーブルコイン業者同士の間で「価格戦争」が起きるようなもので、保有者にとっては嬉しいが、発行者にとっては悪夢のような時代が来るのではないかと指摘。ドルに連動するステーブルコインに対して、投資されすぎたのではないかという懸念を示した。
ステーグルコインが増加することで、差別化が次の焦点になるという声はすでに出ている。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所の河合健弁護士は、昨年11月にコインテレグラフ日本版のインタビューに答え、ステーブルコインの差別化のポイントについて言及。「自分たちのコインを使ったら〇〇という特典がつきます」といった点が差別化の要因になると指摘し、景品表示法には気をつけなければいけないものの「キャッシュバック」や「イベント招待」などの特典をめぐって競争が生まれるという予想した。