国際通貨基金(IMF)はこのほど、仮想通貨が金融の安定に危機をもたらさないとの見解を示した。IMFは、世界金融安定報告書で仮想通貨(暗号資産)について言及した。規制に関する国際的な合意の実現に努めるという最近の姿勢を維持し、「もし適切な予防措置がとられないまま、仮想通貨の使用場面が増えれば、危険をもたらす可能性がある」と続けた。

 世界金融を「待ち受ける困難な道のり」という表題に反して、報告の調子は楽観的だ。そして、仮想通貨が「金融活動を変革する」可能性も軽視してはいない。報告は次のように述べている。

「仮想通貨が金融インフラをどの程度変革するのか、また、これまでの技術革新で起きたように(例えば90年代終わりのブーム時に多くのテクノロジー企業が消滅したように)、新しい仮想通貨のほとんどが消滅する可能性が高いかどうかを知ることは不可能だ。仮想通貨が、意義のある、継続的な形で金融活動を変革する前に、まず消費者と金融当局の信頼と支援を得る必要があるだろう」

 さらに、報告は、この信頼を得るためには、仮想通貨は証券なのか貨幣なのかという性質について、国際的な規制当局コミュニティの間で合意を形成することが必要だと述べた。これにより、IMFは他の金融機関、とくに金融安定理事会(FSB)が今年に入って示した道筋に倣うこととなった。イングランド銀行(イギリスの中央銀行)総裁であり、金融安定理事会(FSB)議長を務めるマーク・カーニー氏は、3月に開かれたG20で仮想通貨は、世界経済に「リスクをもたらさない」と発言した。

 一方、IMFのクリスティーヌ・ラガルド専務理事も、同様に仮想通貨を擁護する姿勢を示している。彼女は、仮想通貨の利点を認めつつ、不法行為への利用を警告し、注意が必要だとしている。先月投稿された公式ブログには、「分別をもって仮想通貨を検討することで、仮想通貨を非難するだけということも、仮想通貨に陶酔するだけということも避けられるはずだ」と書いている。