世界的な人工知能(AI)の権威であるベン・ゲーツェル氏が主催するシンギュラリティネットが22日、ICOを通して約40億円を調達した。AGIトークンを1分間で売り切ったという。

 ICOには2万人が応募し400億円相当のトークンへの需要が発生したが、購買希望者を本人確認手続きやアンチロンダリング等法規制の観点からスクリーンニングし5000人まで減らした。

 シンギュラリティネットは異なったAI間で様々な取引するのための非集権型市場とされ、イーサリアムを基盤とする。複雑な仕事の依頼に対して、AIが自分でできない部分を仮想通貨を支払って他のAIに外注し、サービスを完結させるイメージだ。

 創始者のゲーツェル氏はこれを次のように説明している。

 「ある文書を要約してほしいというリクエストをシンギュラリティネットに出す。すると20の異なった文書要約ノードから入札がくる。そこから評判と価格のバランスが適切なノードを選んで仕事を発注する。ところがこの文書要約ノードが文書中に解決できない問題に出くわしたら、他のノードに外注することができる。例えば文書中にビデオが埋め込まれていたとしたら、これをビデオ要約ノードに受注額の一部を払って外注する。あるいはロシア語の引用がでてきたらこれをロシア語から英語に翻訳するノードに外注する。このノードは翻訳が終わったら文書要約ノードに送り返すわけだ。」

 今注目を浴びているAIやマシン・ラーニングはそのほとんどが大企業によって管理されている。これらの企業は、システムとソフトウェアを自社開発しキープする。シンギュラリティネットは個人ユーザーをAIが展開するサービスに呼び込むことでAI開発者に収益化の機会を提供し、この極度に中央集権化された領域を分散化しようとしている。

 もちろん、この目論見がうまくいくかはまだ未知数だ。グーグルのような大企業による独占が続くかもしれないが、分散型AIシステムへの期待はシンギュラリティネットのトークンセールによって証明されたはずだ。