コインテレグラフのレギュラーコメンテーターである仮想通貨トレーダー、トシムリン氏今後のビットコインの相場展望について最新記事を寄稿した。
筆者は今年の4月に投稿した記事からビットコインの予測としては「3万ドル台が限界」だと主張してきた。
9月21日(日本時間)に開催されたFOMCの結果が、この予測にリーチをかけたように見える。
前回の記事ではカナダ中銀が利上げを見送ったことによって、FRBも9月は利上げ見送りとなり、11月にもう一度利上げを行う可能性があると予測したが、その通りとなった。
また、「ファンドのショートも含み損となっていることから、しばらくは24120~25820ドルが固いサポートになると予測している」と記載したが、24120~25820ドルがサポートとなり続けているため、これも想定通りだと言えるだろう。(図1参照)

(図1 24120~25820ドルがサポートとなったビットコイン)
今回のFOMCでパウエル議長は「引き締めの効果はまだ十分に現れていない」、「今後、どの程度の追加的な引き締めが適切かを慎重に判断する立場にある」とした上で、「インフレ率を持続的に2%まで低下させるプロセスは、まだ長い道のりがある」と述べ、引き続き年内の追加利上げ方針を示唆した。
今回は四半期ごとに発表される経済見通しも公表されたが、ここで示された見通しはタカ派色の強い内容となった。
今回のFOMCで公表された経済見通しを各セッションにわけると以下の通りとなる。(図2参照)

(図2:9月FOMC経済見通し)
今回、注目すべきポイントは2023年から来年の2024年の推移だ。
経済成長率は2.1%から1.5%へと鈍化、失業率は3.8%から4.1%へと増加、FFレートは5.6%から5.1%へと低下する見込みとなっている。
インフレ率に関して、もう少し詳しく述べるのであれば、2024年以降は2.6%から2.3%,2.3%から2%と0.3%ずつ低下しているが、2023年9月から2024年9月は3,7%から2.6%と1年で1.1%低下する見込みとなっています。
また、FFレートも2024年は5.1%となっていることから高金利が維持されることになる。
そして、今回の見通しから実質金利を算出すると2024年は2.5%とオーバーキル的な数値となっている。
つまり、FRBは大統領選を意識して2024年にはインフレを片付けるために本気で引き締め姿勢を維持することを示唆している。
これにより2年金利は5.1%台まで上昇し、実質金利は節目である2%を超えて、2.23%まで上昇している。(図3参照)
(図3 実質金利とビットコインドル)
独自で作成している実質金利とビットコインの乖離率かなり上ザヤとなっているため、ビットコインだけではなくゴールドや米株にとっても重石となる。(図4参照)
(図4 実質金利とビットコイン乖離率)
現在、アメリカ経済は加熱もせず、冷え込みもしない「半好況」となっていることから期待インフレ率の緩やかな上昇と過剰流動性に支えてられて底堅い動きとなっているが、これらの梯子が外されると金利に寄り切られてビットコインは、さらに下落する可能性があるので注意したい。
前回、記事を投稿した際には米ドルの流動性が上昇しており、これがビットコインの支えとなっていたものの、現在は再び減少しているため、下支えは弱くなりつつある。(図5参照)
但し、現段階では米ドルの流動性を構成するリバースレポが減少していることは救いである。
(図5 米ドルの流動性とビットコインドル)
また、前回の記事では「26057ドルと25793ドルでショートを大量に積んでおり、9月16日現在ではこの価格を上回っていることから、ここまで戻ってくると「買い戻し」が起こり、サポートになりやすいように見える」と記載したが、その後は2週連続でショートが大幅に解消されていることからショートカバー(ショートの損切を巻き込んだ上昇)発生による上昇の目も摘まれてしまったように見える。
その一方でETHはショートが大量に積まれたままの状態であるため、ショートカバーがいつ起こってもおかしくない。
図をご覧いただければわかる通り、過去にもETHのショートが大量に積まれるとETHUSDは反発している。(図6参照)
そのため、ETH主導の上昇が起こる可能性はあるだろう
(図6 イーサドルのファンド大口ショートポジション)
足元ではSECと一部米議員が暗号資産の規制をめぐって対立を深めている。
SECのゲンスラー委員長は暗号資産業界でコンプライアンス問題と不正行為がまん延していることについて再び懸念を表明し、申請されたビットコイン現物ETFに関しても未だに難色を示している。
他方で、ワシントンD.C.の控訴裁判所は8月29日、SECに対し、暗号資産運用会社グレイスケールが申請する現物ビットコインETFの承認拒否を取り消すよう命じた。
それに加えて、民主党と共和党の議員らはETF上場を認めるよう迫っていることが明らかとなっている。
ビットコインにとってポジティブサプライズが起こるとすれば、政治的圧力に負けてSECがビットコイン現物ETFを承認することだろう。
前回の記事でも述べた通り、現在はFTX破綻前の動きと似ていることから、もしビットコインに少し目立った反発が起こるのであれば恐らく、10月中旬頃から11月にかけてだと見ている。その要因が現物ETFの承認になる可能性はあるだろう。
しかし、上昇できたとしてもファンドは3万ドル付近で高値掴みをしているため、上昇すれば「やれやれ売り」が発生しやすい。
また、上述したように「金利」という大きな柱はビットコインにとってネガティブに働きやすい水準まで上昇している。
従って、金利の重みにより、当面の間ビットコインは上値が重い展開が続くだろう。
引き続き、今年は3万ドル台が限界だという予測を堅持したい。
著者 トシムリン
トレード歴16年の現役為替トレーダー。20歳の頃から専業トレーダーとなる。6年間はトレードが上手くいかず一時借金を背負ったが、研究と分析を積み重ねて独自手法を編み出し、7年目からプラス収益となり、そこからは安定的に利益を出し続けている。一般投資家が持ちえないマーケットの内部構造を多角的に分析して市場を予測していくことが得意分野。分析能力と育成能力に定評があり、トレード教育によって多くの常勝トレーダーを輩出している。
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