今年のビットコインの予測として「3万ドル台が限界」と主張してきたトシムリン氏。実際に3万ドルが壁となっている。久しぶりに今後のビットコインの相場展望について寄稿した。

今年は半減期を前にしてビットコインは大きく上昇すると予測していたアナリストや投資家も多かったが、その一方で筆者は前回の記事では「今年は3万ドル台が限界」と主張してきた。

今年もあと残すところ3カ月となったが、3万ドル台が壁となって未だに2万ドル台で推移しているため、想定通りだと言える。(図1参照)

(図1 これまでの振り返り)

前回の記事では「中国はずしを加速させることで、インフレが粘着性を見せ、アメリカが、さらなる利上げに踏み切る必要性に迫られる」と言及したが、インフレは未だに粘着性を見せており、前回の記事投稿移行もFRBは継続的な利上げを行っている。

そして今もなお、タカ派姿勢を維持している。

追加利上げを行うべきかの議論の一つの材料になる8月の米CPI(消費者物価指数)が9月13日に発表された。

結果は前年同月比の上昇率が3.7%となり、2カ月連続で加速。

ガソリンは前月比10.6%上昇と、前月の0.2%上昇から急加速し、CPIの伸びの半分以上を占めた。

コアは前年同月比で4.3%上昇となっており、7月の4.7%よりは低下したものの、依然として4%台となっている。

この結果だけを見ると、まだアメリカはインフレ退治のために追加利上げを行う必要性があるように見える。

しかし、一般的に公開されている前年同月比は遅行指標であり、今後を予測する上ではあまり使えない。
そこで筆者はインフレ動向をリアルタイムで把握するために独自でリアルタイムCPIを作成している。

これを見ると、リアルタイムではCPIは3.87%、コアは2.07%となっている。(図2参照)

(図2 リアルタイムCPIと前年同月比CPI)

CPIが3.7-3.8%まで上昇するのは最近の伸び率としては高い。

しかし、これはエネルギーのリアルタイム伸び率がマイナスから一気に上昇したことが要因となっており、エネルギー以外の項目は、ほとんど変わっておらず、むしろ沈静化方向に動いているものも多い。

リアルタイムCPIの観点から言えば、コロナ起因による猛インフレは、もはや問題ではないということになる。

8月の米CPIが発表される前の9月6日にカナダ中銀の政策金利が発表された。

結果は5%で据え置きが決定された。

声明では「過大な需要が緩和していることを示す証拠が最近示されており、金融政策の効果は遅れて出てくることを踏まえ、理事会は政策金利を5%に据え置くことを決定した」と述べた一方で、「基調的なインフレ圧力が根強いことを引き続き懸念しており、必要であれば政策金利をさらに引き上げる用意がある」とも述べ、今後の物価動向次第では追加の利上もあることを示唆。

上述したように、足元では米CPIが再び上昇し、コアは低下傾向を見せているものの粘着性が感じられる結果となっているものの、リアルCPIでは今のところ、ここから急激にインフレ率が上昇するような絵も見えてこない。

そのため、カナダ中銀が述べているように「時間差効果」を使えば、コロナ起因のインフレはさほど心配する必要はないだろう。

しかし、景気回復によるインフレの粘着性はFRBにとっては悩みの種だろう。

FBRが2022年後半から急速な利上げを行ってきたが、これはポール・ボルカー元FRB議長をお手本としているのだろう。

こうしたことを鑑みれば、最後の追い打ちとして、もう一度利上げを行う可能性は十分にあると見ている。

とりあえずは、カナダの政策金利はアメリカの先行指標になる傾向があるため、アメリカも9月の利上げは見送る可能性が高いが、11月もしくは、その先はもう一度利上げが行われるのではないかと予測している。

但し、猛威を振るっていたインフレは沈静化していることから、それを抑制するために行ってきた一連の急速な利上げは終了している。

ここからは景気回復に伴って、状況に応じ利上げを行うフェイズとなっていることから利上げに対して強い懸念は抱かなくなってもいいように見える。

景気回復によりインフレが思った以上に下がらないため表向きはFRBもタカ派姿勢を崩すことはできないが、裏では4週連続で緩和に動いている。(図3参照)

以下は緩和度合いを見るために作成した流動性指標だが、足元では上昇しているのがわかる。

つまりはFEDは緩和に動いているということになる。

(図3 流動性とBTCUSD)

これによりビットコインはやや売られすぎとなっているためサポートは入りやすいと言えるだろう。

その一方で、米株はこれに対してやや買われすぎとなっていることから上値が重い展開が続きやすいし、上昇してもジリ上げとなる展開が予測される。

また、ビットコインに関しては9月10日週では一部ショートを利確しているが、それまでは3週連続で大幅にショートを積んでいる。

26057ドルと25793ドルでショートを大量に積んでおり、9月16日現在ではこの価格を上回っていることから、ここまで戻ってくると「買い戻し」が起こり、サポートになりやすいように見える。

3週間のショート平均は26534ドル近辺なので、ここを上回るとショートカバーが発生して反発基調が続く可能性がある。

いずれにせよ、様々な関連指標に対してビットコインは売られすぎであり、ファンドのショートも含み損となっていることから、しばらくは24120~25820ドルが固いサポートになると予測している。

万が一、大きく下落したとしても19805~22125ドルはサポートになるだろう。(図4参照)

(図4 ビットコインのサポートゾーン)

bitfinexの取組高を見ると現在は緑枠のFTX破綻前の動きと似ており、上昇トレンドラインを下抜けているため、しばらくの間はFTX破綻前のような動きとなり底値圏で上下動を繰り返しながら、10月半ばから11月頃にかけて一旦大きめに反発する可能性があるだろう。(図5参照)

(図5  bitfinexの取組高とBTCUSD)

チャートの動きを見ても似ているように見える。(図6参照)

(図6 FTX破綻前の動きと現在)

しかし、上述したようにアメリカは景気回復に伴ったインフレに悩まされやすため、早々に利下げに転じることはく、しばらくは金利が高止まりすることだろう。

そのため、金利の重みによって当面の間、ビットコインの上値は重い展開が続くだろう。

従って,2023年は,ビットコインは3万ドル台が限界という予測を引き続き堅持したい。

著者 トシムリン

トレード歴16年の現役為替トレーダー。20歳の頃から専業トレーダーとなる。6年間はトレードが上手くいかず一時借金を背負ったが、研究と分析を積み重ねて独自手法を編み出し、7年目からプラス収益となり、そこからは安定的に利益を出し続けている。一般投資家が持ちえないマーケットの内部構造を多角的に分析して市場を予測していくことが得意分野。分析能力と育成能力に定評があり、トレード教育によって多くの常勝トレーダーを輩出している。

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本記事の見識や解釈は著者によるものであり、コインテレグラフの見解を反映するものとは限りません。この記事には投資助言や推奨事項は含まれていません。すべての投資や取引にはリスクが伴い、読者は自分でリサーチを行って決定してください。