リップルと米証券取引委員会(SEC)との法廷闘争を通じて新たに公開されたヒンマン文書は、SEC内部の分裂を浮き彫りにし、その動機に疑問を投げかけている。

ヒンマン文書は、2018年にSEC元企業金融部長のウィリアム・ヒンマン氏が行ったスピーチに関するSEC内部の議論や検討に関する文書だ。ヒンマン氏は、仮想通貨の中でも最大規模のものの1つであるイーサリアム(ETH)は、証券として分類されるべきではないとスピーチで述べた。

コインテレグラフとのインタビューで、仮想通貨を専門とするフレッド・リスポリ弁護士は、最近公開された文書についての見解を語った。

リスポリ氏によれば、ヒンマン文書は、米国の投資家を保護するという本来の使命よりも、権限拡大により関心を持つSECの姿を反映しているという。リスポリ氏は「これらの文書を総合的に見ると、SECは米国人投資家を保護するという90年近い使命よりも、自らの権限を拡大することに明らかに関心がある。官僚組織の最悪の側面を示している」と指摘する。

リスポリ氏はさらに次のように説明している。「例えば、未編集文書の1つでは、SECの法務顧問室が、仮想通貨は『その他』のカテゴリーに分類される可能性が高いことを認識している。これは、支配的なグループが存在しないため、(少なくともハウィーテストの意味で)証券ではないが、薬品やクレジットカードなどと同様に購入者を保護するための規制が必要になる可能性がある」としている。

「ハウィーテスト」とは、1946年のSEC対ハウィー事件において米最高裁判所が確立した法的枠組みで、取引が投資契約に該当し、証券の定義に該当するかどうかを判断するものだ。

リスポリ氏によれば、核心となる問題は、仮想通貨が一部の証券属性を持っている一方で、その根本的な特性が従来の証券とは異なることである。そのため、規制が必要であるが、「権力に飢えた」証券規制当局による独占は避けるべきだという。

「仮想通貨は一部の証券属性を持っているが、その他の属性は証券とは根本的に異なる。したがって、規制が必要であるが、明らかに権力に飢えたSECではない。SECもこれを認識しているはずだが、議会の承認がないにもかかわらず、管轄範囲を保護・拡大しようと奔走している」

ヒンマン文書の公開により、リップルや仮想通貨業界全体に潜在的な影響が及ぶ可能性がある。

「これらの文書が公開された影響はさらに深く、広がる可能性がある。他の訴訟当事者や議会の調査者、情報公開請求などからも、さらなる文書の要求が間もなく出されるだろう」とリスポリ氏は述べている。

リスポリ氏は、ヒンマン氏のスピーチをめぐる出来事に光を当て、ナラティブ形成に影響を与えた団体や個人を明らかにする追加の文書が要求される可能性があると推測している。これには、スピーチ内容からイーサを除外するようSECスタッフからの勧告されたにもかかわらず、ヒンマン氏がそれを無視した理由も含まれるだろう。

また、ヴィタリック・ブテリン氏とヒンマン氏との間で行われたSECのメール、プライベートメール、テキストなどのやり取りの内容も要求される可能性がある

リップルとの法廷闘争において、公開された文書が仮想通貨業界の他の法的闘争にどのような影響を与えるかについて、リスポリ氏は次のように述べている。

これらの文書は、ドラゴンチェーンコインベースの訴訟での公正通知防御の主張で役立つだろうし、イーサリアムネットワークで発行されたトークンをめぐる訴訟でも役立つだろう」と述べている。

これらの文書は、裁判官や陪審員に、SECの疑わしい慣行を嫌い、信用しないよう説得する上でも役立つだろう。これは、仮想通貨投資の規制環境をより混乱させ、不確実にすることを意図的に行っている」と付け加えている。

リスポリ氏は最後に、自身の法律事務所であるHodl Lawが、イーサリアムとイーサリアムネットワークが「連邦法によって証券ではない」とすることを確立するために、カリフォルニア南部地区連邦裁判所でSECを訴えていると語った。SECは、自らの立場を公表する義務はないと主張し、訴訟の却下を求めている。しかし、Hodl Lawは、ヒンマン文書を裁判官に提出し、SECの営利追求と法的義務からの逸脱を指摘する予定だという。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン