金融庁は11日、コインチェックに対して仮想通貨交換業のライセンスを付与したと発表した。これによりコインチェックは仮想通貨交換業の登録業者となる。昨年1月26日にコインチェックで発生した仮想通貨NEMの不正流出事件から約1年。経営体制や内部管理態勢の強化を進め、ついに登録取得となった。

コインチェックは18年1月26日、仮想通貨NEMの流出事件が発生。その後、金融庁の立ち入り検査を受け、昨年1月と3月に2度の業務改善命令を受けた。昨年3月の業務改善命令については「経営管理態勢及び内部管理態勢等に重大な問題が認められた」とし、経営体制の抜本的な見直しを求めた。その後、4月にマネックスグループに入り、経営体制や内部管理態勢の強化などを進めてきていた。

コインチェックの登録取得は、過去にも何度か時期について観測が浮上してきていた。

マネックスグループの松本大CEOは、昨年4月のコインチェックのグループ入りの時には「(登録取得は)2か月以内にできるだろう」と見通しを語っていた

「現在進めている内部管理体制の構築・強化も考えると、2か月以内にできると思っている」(4月6日の記者会見)

その後、7月27日の決算説明会では「いつでも再開できるようにしている。8月には登録を受けたい」とも語っていた。

しかし、その後は金融庁から登録を得られない状況が続いた。10月の決算発表時には、松本氏も「(登録は)金融庁の判断」と述べ、時期について明言することはなくなった。ただ「(業務改善命令で指摘された)宿題は着実にこなしている」と、「ゴーサインを待つだけ」だと語っていた

登録取得に先行し、業務の再開は着実に進めていた。10月末には新規口座開設を再開し、11月末には全取扱通貨での取引再開を果たした。

昨年12月に開かれたマネックスの事業説明会では、コインチェックの勝屋敏彦社長は 「3月22日に提出した業務改善計画に基づき、しっかりとオペレーションを行っている」とし、ガバナンスやサイバーセキュリティへの強化を進めていると語っていた。

登録取得後はどうなる

コインチェックは昨年1月26日に発生した仮想通貨NEMの不正流出事件以降、顧客獲得に向けて積極的なプロモーションは実施してきていなかった。

しかしマネックスの松本氏は、コインテレグラフとの昨年12月のインタビューの中で、「新規口座の開設のペースで、実はコインチェックの方がマネックスをわずかに上回っている」と語った。

流出事件以後もコインチェックのプロダクトやブランドが評価されているとみられる。コインチェックが金融庁に正式に登録されれば、伸び代はまだありそうだ。

またコインチェックは現在、仮想通貨取引を手掛けているが、決済などより実利用に焦点を当てた活動を進めていく可能性もあるだろう。

コインチェックの勝屋社長は12月、将来的には交換業に限らず、クリプトアセット(暗号資産)事業を進めることにも意欲を見せていた。また松本氏も決済やスマートコントラクト分野の将来を指摘していた。

どんな金融商品でもトレーディングから始まり、そこから様々なサービスが作られてきた。クリプトについても、もっと社会で有用性が実感できるサービスがあるはずだ。我々がそのサービスを作っていきたい。