仮想通貨の「疑わしい取引」の報告は月1500件以上、米金融犯罪取締ネットワークの局長が明かす

 米金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)のケネス・A・ブランコ局長は、FinCENへ提出される仮想通貨関連の疑わしい取引の報告が急増していることを明らかにした。同氏によれば、報告の数は現在、月間1500件を超えているという

 ブランコ局長は、9日に開催された2018年シカゴ・ケント ブロック・リーガル・テック・カンファレンスでのスピーチの中で、このことを明かした。

 ブランコ局長は新興の仮想通貨分野に対し、証券取引委員会(SEC)及び商品先物取引委員会(CFTC)と連携した法規制面でのFinCENの現在の役割について、その概要を説明した。同氏は次のように述べた。

「金融サービスにおけるイノベーションは素晴らしいものとなる可能性がある(一方で)...私たちはそれに伴って金融犯罪が進化したり、実際にイノベーションのせいで、テロリストやならず者国家などの犯罪者や悪人たちに対し、犯罪の機会を生み出す場合があることも認識しなければならない」

 ブランコ氏は、「悪意ある行為が、デジタルの世界で目を見張るほどのスピードで増加し、より広範囲で、難解さを伴って行なわれる可能性がある」とすれば、最先端のフィンテックの「素晴らしいイノベーション」を守るためには、当事者たちによる明確な規制措置の順守が極めて重要だと強調した。

 FinCENの13年3月付けガイドラインで示されている通り、仮想通貨を含む、法定通貨を代替する価値の受領や移転は送金と見なされ、必然的に米銀行秘密法(BSA)に基づく特定の規制義務を負う。

 したがって、送金事業者(MSB)としての仮想通貨取引所は、疑わしい取引の報告及び通貨取引報告(CTR)の両方を提出する必要があり、また、マネーロンダリング対策(AML)及び反テロ金融(CFT)の枠組みも順守しなければならない。

 ブランコ氏は、仮想通貨の送金元を隠そうとする匿名化サービス(しばしば「ミキサー」や「タンブラー」と呼ばれる)を提供する企業に対し、同一の義務を課すことを明言した。事業の一部として米国民にサービスを提供する米国外の取引所も、FinCENの監視対象となる。

 ブランコ氏は疑わしい取引の報告が「重要な役割を果たした」例として、FinCENが17年にロシアの仮想通貨取引所BTC-eに対し、AMLを怠ったとして実施した法的措置を挙げた。その際、銀行及び他の仮想通貨取引所からの報告が、取り締まりの手がかりとなった。

 同氏は、疑わしい取引の報告が増えている一方で、企業が「(検査の準備があるとの)通知を受け取った後にやっと」規制要件の適切な順守に踏み出したことに「驚かされた」と述べた。「本日、このメッセージをはっきりと送る。それはコンプライアンスとは呼べない」と、同氏は強調した。

 ブランコ氏によれば、FinCEN、米銀行秘密法(BSA)の調査官、及び米内国歳入庁(IRS)は14年以来、登録された仮想通貨取引所及びその運営者全体の30%以上に対し、検査を実施してきた

 ブランコ氏はさらにイニシャル・コイン・オファリング(ICO)にも言及し、ICOはその管轄が米国のさまざまな規制機関に重複する場合があるものの、そのAML/CFT義務が変わらないのは「疑いの余地がない」と強調した。

 一方、ワシントンDCで最近行なわれた仮想通貨とICOに関する公聴会で、コインベース社の最高法務リスク責任者は、SEC、CFTC、IRS、FinCENを含む米国の規制当局全体が著しく「連携を欠いている」と非難し、イノベーションにネガティブな影響を与えているとの見解を述べている