今夜、フェイスブックのザッカーバーグCEOが米議会でリブラに関して証言を行う。発行元のリブラ協会から相次いだ離脱。G20は厳しい規制を発表し、米金融大手CEOは「一生無理」と発言するなど、リブラは風前の灯火となっている。そんな中、ついにフェイスブックのトップであるザッカーバーグ氏が議会に登場する。今夜は、”仮想通貨史の転換点”になるという見方も出ている。

しかし、ザッカーバーグCEOは、逆に米議会を怒らせることになるかもしれない。

米政治メディア、ポリティコのレポーターによると、リブラ中心人物のデービッド・マーカス氏が10月17日の夕食会で次のように発言した。

「(来週の議会証言でザッカーバーグCEOは)リブラ協会の代わりに話すことができない。なぜならリブラ協会には20名のメンバーがいるからだ」

ザッカーバーグCEOはリブラ協会の顔になれない」(マーカス氏)というのが理屈のようだ。

また、本日リリースされた同CEOの証言文書では、リブラのホワイトペーパーは「共同執筆」と強調。「本日話すことは、1つの会社だけでは手に負えない案件だ」や「デザイン上、我々はこれ以上プロジェクトをリードすることを望んでいない」と述べた。

フェイスブックの屁理屈が、リブラ反対派の急先鋒で今回の議長であるウォーターズ議員をはじめ米議会を納得させることは難しいだろう。CNBCによると、議会証言を開く下院の金融サービス委員会のメンバーに近いスタッフは、「もしザッカーバーグがフェイスブックのリブラ開発における役割を控えめに言えば、不誠実とみなされ、メンバーに良い印象を与えないだろう」と述べた。

今回これほどリブラ協会が逆風にさらされている理由は、単純に「フェイスブックだから」という声が多い。ペイパルなど他の企業がリブラを率いていたら同じ結果にはならなかっただろうという意見もある。それほど、過去のプライバシー侵害問題などでアメリカ社会のフェイスブックに対する信用は失墜しているのだ。

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本音での議論を

議会証言でザッカーバーグCEOは、以下のように本音を話す場面もあるようだ。

「我々がここでは理想的なメッセンジャーではないことは理解している。我々は、過去2、3年間で多くの問題に直面してきた。人々がフェイスブックではない誰かがこのアイデアを前に進めることを望んでいることは確かだ。

フェイスブックがリブラを主導しているのは明らかだ。下手な理屈で攻めようとするのではなく、誠実に本音で「フェイスブックは変わったんだ」という姿を議員たちに見せた方がよいのではないだろうか。

デジタル通貨開発分野における中国の脅威は確かだ。同CEOの言うように「民主主義や基本的な表現の権利を認める国が(デジタル通貨開発競争で)勝つという保証はない」。「フェイスブックだから」という理由で欧米諸国が足並みを揃えられない間、中国は、着実に、デジタル通貨の開発・普及を進めるだろう。

そんな時だからこそ、ザッカーバーグCEOは、議員たちを煙に巻こうとして火に油をそそぐような事態を避けた方がよいのではないだろうか。

ザッカーバーグCEOによる議会証言は、日本時間10月23日の23時より行われる。