スイスのダボスで開催されている世界経済フォーラムにおいて、デジタル通貨のパネルディスカッションが開催され、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を巡って議論が行われた。

デビッド・マーカス氏は、デジタル通貨の性質に関係なく、これらの議論が国境を越えた決済を革新し、銀行外の問題を解決する鍵となると強調した。同氏は、フェイスブックで仮想通貨リブラの責任者、独自仮想通貨リブラのウォレットを開発するカリブラのCEOを務めている。

金融機関向けCBDCと、消費者が利用可能なCBDC

国際決済銀行(BIS)イノベーション・ハブの責任者ブノワ・クーレ(Benoît Cœuré)氏は、世界の中央銀行の80%が、主にリテール型(消費者が利用可能な小口取引向け)CDBCに関心を持っていることを明らかにした。

(出典: 国際決済銀行(BIS)による報告書「中央銀行デジタル通貨」

マーカス氏は、リテール型CDBCとホールセール型(大口取引対象の金融機関向け)CDBCについて説明した。

「中央銀行は、(大きく分けて)2形態のCBDCを発行できる。ひとつは既存銀行と銀行システムを介したホールセール型、もうひとつは消費者が利用可能なリテール型となる」

またマーカス氏は、消費者が閉め出される上に、中央銀行自体はこの変化の恩恵を受けないため、ホールセール型CBDCは、既存エコシステムの文脈ではほとんど意味がないと主張した。

「最大の論点は、ホールセール型CDBCをターゲットにする場合、どのような問題が解決されるのかだ。ある程度効率化が図られる可能性があるが、すでに銀行は十分な機能を備えている。FRB(米連邦準備制度理事会)、ECB(欧州中央銀行)はじめ、彼らは非常に優秀だ」

マーカス氏は、銀行がリテール型CDBCを処理するための技術を持っているかどうか、個人を対象とする銀行業務に与える問題についてさらに懸念を表明した。同氏は、いくつか重要な問題を解決できる「興味深いハイブリッドモデル」が存在すると結論付けた。

金融排除は受け入れがたい

特定の国を基盤としないグローバル通貨の支持者として、マーカス氏はデジタル通貨の究極の目的について説明した。

「我々が約6ヵ月前に(リブラを)発表した際の目標は、物事を行う特定の方法を問うものではなく、受け入れがたい問題(金融排除)をどのように解決できるか、理解し試すことだった。現在、10億人が金融サービスを十分に受けられず、17億人は金融サービスそのものを利用できない状況にある」

マーカス氏は、高価な国際電話サービスが、インターネットを介した通話アプリで置き換えられたというテクノロジーの進歩を指摘した。

「お金の世界では、同じことは起きていない。一部のネットワークは50年前のままで、ウェブも30年前のものだ。人々がデジタル通貨にアクセスし移動できる、簡単で安価かつ効率的な方法はいまだ存在していない。

個人的には、こういった議論を今行えていることに本当に興奮している」

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン