世界で2億人以上が使用するチャットアプリ「テレグラム」創業者であるドゥロフ兄弟が、「TONブロックチェーンの開発、およびテレグラムメッセンジャーの構築・維持」のため、既に81人の投資家から8億5000万ドル(約900億円)を集めていたことが分かった。同兄弟が今月13日に米証券取引委員会(SEC)に提出した私募の通知から判明した。

 今回公開された証券の種類は「仮想通貨の購入契約」とされている。また、今回SECに提出されたのは規則506(c)の証券登録免除規定に基づく「適用除外の証券公開通知」であり、同証券に投資する米国人は100万ドル以上の資産があるか年収が20万ドルを超える「適格投資家」でなければならない。

 イーストマン・コダックは同じ免除規定に基づいたICOを1月上旬に発表していたが、出資者の適格性審査に時間を要するとしてこれを延期している。

 今回SECに提出された書類によると、テレグラムICOの初回売り出しの日は1月29日となっている。SECへの申請により、米国人も同ICOに合法的に投資できる準備が進むこととなる。81人の出資者の中に米国人が含まれている可能性もある。

 ロシア「ベドモスチ」紙は関係者の話として、同ICOに投資したとされる人物の名前を挙げている。

 テレグラムのブロックチェーンプロジェクトへの出資を許された最初のロシア人の1人として名前が挙がっているのは、以前から仮想通貨に投資しているとされるロシアの富豪ロマン・アブラモビッチ氏。同氏に近いとされる情報源によれば、アブラモビッチ氏は3億ドル(約320億円)を出資したという。しかし総額を2000万ドルとする情報もある。

 (参考記事:「ロシア富豪三人組が欧州ファンドを通して仮想通貨に大規模投資、チェルシーFCのオーナーも」2017年11月25日)

 また、ロシアの決済サービス会社QIWIのセルゲイ・ソロニンCEOも1700万ドル(約18億円)を出資した、とベドモスチ紙は報じている。ロシアを拠点とする乳製品会社ウィム・ビル・ダンの共同創業者デビッド・ヤコバシビリ氏は、1000万ドル(10.6億円)を投じたと同紙に語っている。

 テレグラムのICOは昨年12月から噂になっていた。同社が「ザ・オープン・ネットワーク」または「テレグラム・オープン・ネットワーク」(TON)と呼ばれる独自のブロックチェーンプラットフォームと仮想通貨を立ち上げると元従業員がネットに書き込んだのが発端だ。

 (参考記事:「【コインテレグラフ独占スクープ】2億人のチャットアプリ「テレグラム」が仮想通貨統合へ、競合アプリまたぐ新たな仮想通貨も発行か」2018年12月22日)

 TONのホワイトペーパーとされる文書が1月中旬に流出したが、ドゥロフ兄弟はその信憑性について公に認めていない。

 (参考記事:「リークされたテレグラムICOのホワイトペーパーを入手! 計画の信憑性を検証する」2018年)

 ドゥロフ兄弟によるSEC申請では、証券発行者として「Ton Issuers Inc.」と「Telegram Group Inc.」という2つの企業名が記されており、所在はともに英領バージン諸島となっている。申請の「関係者」の部分では、パヴェル・ドゥロフ氏が「役員および取締役」として記載されているのに対し、ニコライ氏の役職は単に「役員」となっている。

 ベドモスチ紙はTONに近い人物の話として、資金調達プロセスは「通常の意味での」ICOとは異なっていたと報じている。通常、トークンは他の仮想通貨(ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)が普通)で購入されるが、今回は「一般的な(法定)通貨での証券の限定的割当」のような形だったという。

 この人物やドゥロフ兄弟のSEC申請によると、出資者が買ったのは、「グラム (Gram) 」と呼ばれるTON内の仮想通貨を購入する権利であり、プラットフォーム立ち上げの際に分配されるようだ。