中国人民銀行でデジタル通貨研究所の所長を務めていた姚前(ヤオ・チェン)氏は、中国デジタル人民元は、スマートコントラクトを活用し、アリペイのような決済プラットフォームとして構築されるべきであり、監視ツールとすべきではないと述べた。
5月29〜30日に北京で開催された国際金融フォーラムで姚氏は、デジタル人民元が成功するためには、単に物理的な通貨を置き換えるだけでは十分ではないと主張した。現地の報道によると、姚氏は、デジタルであることの恩恵を十分に受けるためには、スマートコントラクトを活用した「スマート通貨」への移行が必要だと付け加えた。
姚氏は、スマートコントラクトを活用したデジタル通貨に取り組む例として、欧州中央銀行、日本銀行、カナダの中央銀行を挙げた。
姚氏によると、中国がデジタル人民元を導入した当初の目的は、普及が進んでいる民間の決済プラットフォームに対抗するためだったといい、これは中国の決済サービス「アリペイ」であるという。しかし、中国政府はデジタル人民元を、すべての取引をリアルタイムで追跡する監視ツールとして開発したわけではないと主張している。
「デジタル人民元は、ユーザーのプライバシー保護と、マネーロンダリング、脱税、テロ資金供与などの犯罪の取り締まりとのバランスをとる必要がある」
姚氏によると、「デジタルドルとデジタル人民元がイーサリアムやディエムのようなブロックチェーンネットワーク上で直接稼働すれば」、中央銀行は仲介者なしでユーザーにデジタル通貨を提供することができるという。そうすれば中央銀行のデジタル通貨は、銀行口座を持たない人々により良い利益をもたらし、金融包摂を実現することができると主張した。
姚氏は現在、中国証券監督管理委員会の科学技術監督局の局長を務めている。同氏は、2014年のデジタル人民元の初期段階から、デジタル人民元に取り組んできたことで知られている。また、中国証券監督管理委員会の職員として、仮想通貨に対して友好的な態度をとっていることから、「中国の仮想通貨の父」と呼ばれている。