米国で中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行に関する議論が活発化している。しかしCBDCが政府に与える強大な力とその権力の潜在的な乱用リスクについて明確に理解し、慎重に検討することが重要だ。

今年3月にはフロリダ州ロン・デサンティス知事(共和党)が、連邦政府による通貨管理がアメリカ社会にとって危険であると主張し、同州でのCBDC使用禁止を提案。一方ホワイトハウスは経済報告書を発表し、CBDCを「人権、民主主義の価値、プライバシー」を推進するメカニズムとして支持している。

CBDCは基本的には単なるツールでありそれ自体は善悪を持っていない。しかしCBDCの悪用によるリスクは非常に大きいため、その概念は拒否されるべきである。完全に中央集権化された通貨システムは悪用される可能性が高い。そうした強力なツールが社会全体に制約をかける目的で使用される可能性があることを考慮すると、CBDCの発行に極度の疑念を抱かざるを得ない。

米国ではCBDCが金融監視の目的で使用される可能性を無視することは極めて無責任である。

CBDCの提唱者はそれが金融包摂を促進し、支払いの効率を向上させる可能性があると主張している。しかし重要なのは、これがどの程度のコストで達成されるのか、そして同じ目標をより少ないリスクで達成できる代替案があるかどうかである。幸いなことに代替案は多数ある。例えば分散型金融(DeFi)プロトコルや郵便局銀行などが挙げられる。

重要な点はこれらの代替案が、CBDCの提唱者が指摘するような主要な利点を達成しながら、個人の権利を脅かすリスクを回避できることだ。CBDCは政府に誰かの財政状況を完全に監視する権限を与えるだけでなく、個人が商取引に従事することを完全に禁止したり、個人やグループの資産を簡単に差し押さえる権限も与える可能性がある。そのような権力を恣意的に利用できる政府は存在すべきではない。

CBDCでないにしろ、例えば2022年中国の市民が中国共産党総書記習近平氏を非難する横断幕の写真を共有したことで、WeChatアカウントへのアクセスが制限された。WeChatは決済方法として一般的に使用されているため、利用停止されたユーザーはタクシーを呼んだり、食料品を購入することができなくなった。またカナダ政府は昨年、緊急権限を使用して政府が違法とみなした抗議活動に参加していた市民の銀行口座を凍結するよう命じた。

アメリカ人はその政治的信条にかかわらず、CBDC発行を拒否する共通の理由を見つけるべきである。それは、CBDCが非常に個人的な人生の選択に対する政府の「絶対的なコントロール」権限を付与することに懸念を抱くか、あるいは連邦政府が個人やある一定の集団を標的にすることを懸念するかのいずれかである。

完全に集中化された通貨システムは乱用されることを求めているかのようである。そのような強力なツールが不道徳な理由で使用される可能性があるという単なる可能性が、CBDCの発行を強く疑う、あるいは完全に拒否する理由となる。

著者 ミラー・ホワイトハウス・レヴィーン (Miller Whitehouse-Levine) は、米DeFiエデュケーションファンド(DEF)のCEOである。同氏は同ファンドに参加する前にブロックチェーン協会の政策運営を率いており、ゴールドスタイン・ポリシー・ソリューションズで暗号資産を含むさまざまな公共政策問題に取り組んでいた。ミラー氏はジョージタウン大学外交学部で国際政治学の学士号と、中国語のマイナーを取得している。

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