ブロックチェーンと仮想通貨の熱狂が続いている。そして、より多くの人々がデジタル空間における革命的な技術に加わるにつれて、新たな改良が行われている。ここ数年、DeFiとNFTは非常に大きな成長を遂げており、現在ではメタバースとWeb3がデジタル空間を照らしている。

この破壊的なテクノロジーが私たちをどこに導くかはまだわからないが、多くの価値を手に入れることができるのは間違いない。Web3とNFTが融合するために、多くのプラットフォームがNFTのエコシステムをより分散化し、構造化し、コミュニティ主導にするためにテクノロジーとインフラを活用している。

社会的構築とガバナンスの両方を駆使し、自律分散型組織(DAO)によるディスラプションは一段と進んでいる。DAOは、現行のガバナンスシステムに挑戦する一つの大きな発明だ。NFTを活用したDAOは、組織やシステムがどのように運営されるべきかという我々の視点を変え、最適なガバナンスの形は階層構造とは関係ないという考えにさらなる信憑性を与えている。

プリンシパル=エージェント問題が組織の成長を制限し、エージェントがチームの一員であることを感じられなくなっている今、コミュニティの包摂を促進する分散型組織の必要性が最も重要である理由がお分かりいただけるだろう。

もし機会があれば、現在の組織について変えたいと思うことはあるだろうか? リーダーシップ? 構造? 支払いシステム? もし今の組織が、プリンシパルとスタッフの間の格差をなくすことで、あなたがチームの一員であることを実感できるとしたらどうだろうか? あるいは、組織のガバナンスの一翼を担えるようになったらどうだろうか? 面白そうだろうか? ここでお話しするのは、このようなことだ。

DAOとは

自律分散型組織(DAO)とは、その名前だけで、どんなものかイメージできるのではないだろうか。DAOとは、特定のミッションに特化した組織で、ブロックチェーン上にコード化された共有ルールに従って、メンバーが連携して活動するものだ。DAOの大きな目的は、従来の多くの組織における重大な問題である「プリンシパル=エージェント問題」の払拭に貢献することだ。

英語ではtwo's company; three's a crowd(二人で仲間、三人では仲間割れ)という言葉がよく用いられる。組織には、より多くの人が必要だ。しかし、新しい人がチームに加わるたびに、利害関係、優先順位、目標に乖離が生じるのは必然のことだろう。その結果、自分勝手な選択をしてしまうことがよくある。DAOは、トラストレスシステムとして存在し、中央集権的なリーダーシップの必要性を排除することで、この問題を回避している。

企業が自律分散型組織とみなされるには、いくつかの基準を満たす必要がある。統治規則や方針は、ブロックチェーン上のスマートコントラクトとして設定する。これにより、中央集権性を取り除くことができ、また、組織の目標と異なる意思決定をする関係者を防ぐことができる。組織の資産は、グループ全体の同意、または少なくとも事前に定義された割合の同意がなければアクセスできないようにしなければならない。

DAOの歴史

DAOの初期の適用がうまくいかなかったのは、関係者が予防策を講じなかったからにほかならない。2016年初頭に作成された最初のDAOは、単に、The DAOと呼ばれた。The DAOはベンチャーキャピタルに焦点を当てたオープンソースのフレームワークだった。瞬く間に成功を収め、2億5000万ドル以上のイーサ(ETH)をかき集めた。なお、このときのETHの価格は20ドル程度だった。

しかし、この成功は長くは続かず、2016年半ばにバグを悪用した攻撃により、The DAOはおよそ360万ETHの損失を出した。それ以来、DAOを運営する試みがいくつか行われ、今この瞬間も多くのDAOが作られている。(後述するフェイス・トライブは、完全な分散化に最も近いものの1つだ)。DAOの成功は、そのスマートコントラクトの強さにある。そして、投資家として、スマートコントラクトのオープンソースコードに目を通し、レッドフラグや異常がないかをチェックすることに時間を費やすべきだ。

 

DAOはどのように機能するのか?

DAOは、大きく3つのことに基づく。

  • スマートコントラクトが実装されていること
  • 全メンバーが知っている一連のルールがあること
  • 報酬のためにシステム内で使用することができるトークンがあること

スマートコントラクトは、DAOの規則と細部を決定する。それはメンバーや投資額、大多数の利害関係者が誰であるか、ワークフロー、報酬メカニズムに至るものだ。スマートコントラクトに欠陥があると、プロジェクトが危険にさらされるため、残りの2つの点はスマートコントラクトに依存するものだ。また、アップグレードには全メンバーの投票が必要なため、最初から正しく設定することが重要だ。

スマートコントラクトには、トークンが含まれている。このトークンは、組織のメンバーに権利やインセンティブを割り当てるのに有効だ。DAOはミッションに全員を巻き込むが、メンバーは異なる入力値に基づいて異なるレベルの利益を得ることができる。

DAOの利点

  • DAOの自律的な構造は、透明性に対してオープンであることだ。分散化の概念は信頼という概念を育み、DAOでは組織の背後にいる人々や悪意があるかどうかを心配する必要がない。全員で判断するテンプレートはスマートコントラクトであり、すべての取引はブロックチェーン上に不変に記録される。
  • 中央の権威がなく、イノベーションを受け入れるために必要な長くて大変なプロセスはない。DAOでは、イノベーションが意思決定の権限を持つ人の手元に届くまでに、さまざまな階層を通過する必要がない。また、誰でも提案することができ、その提案が有料であるということは、漠然としたアイデアではなく、よく研究され、考え抜かれたアイデアであることを後押しする。
  • DAOは、プリンシパル=エージェント問題を解決する。メンバーは組織の進歩に等しく責任があると考えるので、権力闘争はない。全員が組織の方向性に責任を持ち、軌道修正する場合は、参加者全員の同意が必要だ。

DAOのデメリット

  • DAOの大きなデメリットは、全員が関与する必要があることだ(「メリットのはずでは」と思われるかもしれない)。スマートコントラクトに書かれたコードにバグがあり、抜け道がある場合もあり、その問題をどう修正するか、組織全体の合意を得るのは時間のかかる作業となるからだ。ハッカーは十分な時間があれば、より効果的に活動できることを知っているので、これは大きな問題を引き起こす可能性がある。
  • DAOの法的領域は、まだ各国の規制の枠組みに左右される。DAO自体は国境に縛られないので、異なる都市/国から複数の訴訟に直面する可能性が高い。これは、まだ克服されていないハードルだ。

DAOのユースケース

フェイス・トライブ

フェイス・トライブ(Faith Tribe)は、ファッションクリエイターにメタバースと現実世界の両方において発言権を与えるために特別に作られたオープンソースのデザインプラットフォーム。ファッションクリエイターのための初の完全な分散型プラットフォームであり、コミュニティが運営している。

NFTの一般的な考え方は芸術と関連しているため、フェイス・トライブは、Web3の成長に貢献しながら、経済的に実行可能なエコシステムを構築することによって、ファッションデザインのシナリオを変えようとしている。

ファッションアパレルの世界市場はおよそ3兆ドルで、そのうち15%はノーブランド。ミレニアル世代とZ世代がファッションに強い関心を示していることから、フェイス・トライブは、彼らのメタバースとの関わりを活用して、仲介業者を介さずに多くのブランドを脚光を浴びさせたいと考えている。

ゲインズ・アソシエイツ

DAOのユースケースのもう一つの素晴らしい例は、ゲインズ・アソシエイツ(Gains Associates)だ。ゲインズ・アソシエイツは分散型投資ファンドで、仮想通貨やブロックチェーン空間のプロジェクトに誰でも、しかも透明性の高い方法で投資できるようにするためにDAOを利用している。この組織は、この業界への投資に関して確かな適性と知識を身につけることを主な目的とする、同じ考えを持つコミュニティとニュース、洞察、意見を共有することでこれを実現する。

パラゲン

DAOがプロジェクトのラウンチパッドとして使用されている素晴らしい例として、パラゲン(Paragen)が挙げられる。パラゲンは、プロジェクトが立ち上がる前の準備段階を支援することに重点を置いている。マーケティングから戦略、綿密な技術開発まで、プロジェクトのサイクルを通して包括的なアドバイザリーサポートを提供している。

また、パラゲンでは人材発掘によるプロジェクトのインキュベーションも行っている。人材が見つかったら、パラゲンはインキュベーターとして、その人材と一緒にアドバイザーを務め、プロジェクトの立ち上げを支援する。DAOの厳格な審査プロセスや洗練されたリサーチペーパーを通じて、コミュニティのメンバーは、単一のハブで安全かつ確実なプロジェクトにアクセスすることができるポータルを手に入れることができる。

タンジブル

タンジブル(Tangible)は、高級ワイン、金、不動産などの現実世界の資産を保管し、その物理的資産を表すNFTを鋳造する。NFTは、近日中に開設予定の同社のマーケットプレイスで取引可能だ。これにより、従来取引が困難であった資産に即時流動性を持たせることができる。

ゲームとDAO

2021年、ブロックチェーンゲームは高い普及率で世界を驚かせた。ブロックチェーン上でゲームをプレイし、そこから価値を得られるだけでも素晴らしいが、DAOの利点をコミュニティに活用したゲームをプレイすることはさらに素晴らしいことだろう。

こうしたゲームを提供するプラットフォームの1つがネスト・アーケード(Nest Arcade)だ。ネスト・アーケードは、ブロックチェーン上で遊べるアーケードアプリケーション。このプロジェクトの目標は、コミュニティのメンバーが様々なゲームを選んで遊べるシンプルなアプリケーションの助けを借りて、ブロックチェーン技術の採用を大幅に加速させることだ。

ネスト・アーケードを利用することで、プレイヤーはNFTを利用してゲーム内のキャラクターを所有し、様々なプレイ・トゥ・アーン(P2E)のゲームで遊ぶことができるようになる。プレイヤーは、ネスト・アーケードのプラットフォームで遊ぶことで、プロジェクトの通貨である独自のSPLトークン(NEST)や、ソラナを介して報酬を得ることができる。

DAOの成長は、NFTや様々なプレイ・トゥ・アーンのモデルの影に隠れているが、静かに大きく成長しており、その多くはベンチャーキャピタルが大規模に関与している。ゲーミングDAOは、VCファンドから多額の投資を受けているDAOエコシステムの主要な部分だ。

その多額の資金にもかかわらず、ロブロックス(Roblox)のような分散化されていない仮想世界のゲームに対してどのように対処するかは難しいところだ。

なぜDAOが未来なのか

ステレオタイプの伝統的な組織には想像以上の欠陥があり、COVID-19の大流行により、利用され発言権がないと感じて元の職場に戻りたがらない労働者が大勢いるのが現状だ。従来の制度が変わるかどうか、またどの程度で変わるかは不明だが、DAOは労働条件やスタッフの管理を改善する明確な道筋を示している。

DAOのユニークなモデルは、トークンベースのメンバーシップとシェアベースのメンバーシップの2つで、どちらもチーム中心の動機を持っており、優越コンプレックスの表れではない。

これらの理由により、民間および公共のガバナンスに分権を持ち込むというコンセプトが生まれた。

DAOは、Dash、Digix、さらにはBitSharesのようなプロジェクトで利用されてきた。トレントが同様のモデルを運用し、ブロックチェーンの包括性を将来のアップグレードに統合しようとしたこともある。

イーサリアムの共同創設者であるヴィタリック・ブテリン氏が引用したように、DAOシステムは運用コストを削減し、これらの企業の財務の底上げに役立つため、ほとんどの企業が購入する可能性が高いのだ。

ここで示された見解、考え、意見は筆者個人のものであり、必ずしもコインテレグラフの見解や意見を反映・代表するものではありません。

エヴァン・ルスラ氏は技術系起業家であり、分散・分散システムの名誉博士号を持つブロックチェーン専門家。Influenciveの "The Top 30 Entrepreneurs Under 30 Creating Life On Their Own Terms "に選ばれた。彼の会社であるStartupStudioとIyokoは、企業への投資と構築を支援している。また、世界中の様々な大学やカンファレンスで講演を行っている。