ブロックチェーン分析企業チェイナリシスの最新のレポートによると、2023年上半期における仮想通貨詐欺の被害額は、33億ドル(約4568億円)から11億ドル(約1522億円)へと77%も減少した。一方でランサムウェア攻撃が再び増加し、2022年上半期と比べて被害額が62.4%増加した。
チェイナリシスは、詐欺収益が2年連続で減少傾向にあるとする「仮想通貨犯罪レポート」を発表した。同社は、通常、詐欺収益は強気相場で増加するが、2023年はこれまでとは異なる傾向が見られると指摘した。「通常、価格の上昇は詐欺収益の増加につながり、市場活況とFOMO(取り残される恐怖)が被害者を詐欺師の誘惑に引っかかりやすくする。しかし、2023年の詐欺の大幅な減少は、この長期的な傾向を覆している」とのことだ。
2023年上半期における既知の不正なエンティティへの流入は、前年同期比で65%減少した。また、リスクの高いエンティティ(仮想通貨ミキサーやハイリスクな取引所など)への流入も42%減少した。チェイナリシスはこの減少を、取引量の減少に部分的に起因すると説明しつつ、不正な流入がより速いペースで減少しているとした。「取引量は全体的に減少しているが、正規のサービスに対する減少は28%にとどまっている」という。
チェイナリシスの調査部門ディレクターであるキム・グラウアー氏は、過去の詐欺被害者が投資判断に「慎重」になり、詐欺師の誘いに引っかかることが少なくなっている可能性もあるとコインテレグラフに語った。これが詐欺収益の減少に寄与している可能性もある。「詐欺被害者がより慎重になっている可能性は十分にある」という。「政府や業界の啓発キャンペーン、メディアの報道が、詐欺のリスクについて人々を教育するのに役立っている可能性もある」。
チェイナリシスは、人工知能(AI)ツールがディープフェイクなどを利用して詐欺を推進するために、ますます使用される可能性があると警告している。
また2022年上半期と比較して、ハッキングによる被害額は11億ドル減少したという。一方で、ランサムウェアの収益は62.4%増の4億4910万ドル(約622億円)に達した。これは、身代金を支払う意思のある企業から「可能な限り多くの金を搾取する」ため、攻撃者が大規模な組織を狙っているからだとチェイナリシスは説明した。
サイバー犯罪コンサルティング企業キヴのリスクオフィサー、アンドリュー・J・デイビス氏は、2022年の減少は、より強固なサイバーセキュリティ対策と、身代金支払いに対する厳格な制裁を課す新法の影響によるものだと語った。その結果、ランサムウェア攻撃者は、身代金を払うことを選んだ企業から「可能な限り多くの金を搾り取ろう」としている可能性があるとデイビス氏は付け加えた。
国連薬物犯罪事務所は2021年10月、世界中でランサムウェア攻撃が11秒ごとに発生し、2021年だけで総被害額が200億ドルに達したと発表した。サイバーセキュリティベンチャーズは6月に、2031年までにランサムウェアによる被害額が年間2650億ドルになると予測した。
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン