最近のビットコイン急騰には、短期的なテクニカル要因や投資家心理の改善だけでなく、もっと構造的な要因があるのかもしれない。
仮想通貨ファンド「イキガイ」の創業者トラヴィス・クリン氏は、ビットコインの急騰の背景にはビットコインに対する態度の変化があり、大まかに言って中央銀行を意識する動きがあったとみている。米有力経済メディアMarketWatchが4日に報じた。
クリン氏は、米国のFRB(連邦準備制度理事会)が今年の利上げを見送り、資産の縮小を9月に終了させる予定を示したことについて、次のように述べた。
「FRBが完全にUターンをしてハト派になった。そして、他の人たち(ECBと日銀)も追従した。中央銀行はアメリカでも世界でも政治の道具とかしている。我々は新しい世界に住んでいるんだ」
FRBのUターンの背景にあるのは、トランプ大統領のツイッターでの発言だ。トランプ大統領は、パウエルFRB議長が進めていた利上げ方針に対する批判を続け、先月にも「FRBには利上げが好きな紳士がいる。FRBには量的な引き締め策が大好きな紳士がいる。FRBにはかなり強いドルが好きな紳士がいる」と圧力をかけた。
本来、FRBは米政府から独立した機関とみなされている。
クリン氏によると、政治介入によってFRBの金融政策がブレていることを受けて、人間の介入がなく透明な政策が期待できる分散型技術を求める声が高まっているという。政策エラーに対してリスクを分散化させる。ビットコインと仮想通貨は、その役割を提供している。
世界的な金融緩和路線への転向について、フリーマネーが仮想通貨相場にも流れ込むことからビットコインにとってはプラスとみる専門家はいる。対照的にクリン氏が指摘しているのは、既存の金融システムの構造上の問題だ。「ビットコインは無責任な金融政策や財政政策に対するヘッジになったんだよ」とクリン氏は語る。
同じように参議院議員(日本維新の会)の藤巻健史氏は、日銀の金融政策の失敗の結果、避難通貨としての仮想通貨に対する需要は高まるという見方を示している。
クリン氏は、昨年12月まで「資産1兆円の男」スティーブ・コーエンのヘッジファンド運営会社ポイント72アセット・マネジメントで働いていた。独立後、イキガイを立ち上げ1500万ドル(約16億円)の資金調達。「仮想通貨は数兆ドルの資産クラスになる」と自信を見せている。