FTX破綻以来、最悪の四半期となった仮想通貨市場に対し、多くの投資家が強気相場の終焉を懸念している。しかし、業界専門家によるパネルディスカッションでは、ビットコインおよびアルトコインのパラボリックな上昇は「まだ始まってもいない」との見解が示された。

4月7日にフランス・パリで開催されたコインテレグラフ主催の「LONGITUDE」イベントにて、MN Capitalの創設者マイケル・ファン・デ・ポッペ氏は、「実際には、強気相場はここから始まる」と語った。

ビットコイン(BTC)が関税ショックで8万ドルを割り込んだ直後では信じ難いかもしれないが、「過去の歴史からわかるように」、混乱による売りが反転の好機を生み出すことはよくあると指摘した。

ファン・デ・ポッペ氏は、現在の市場の急落と2020年のCOVID-19ショックを比較した。当時、ビットコインは1日で40%近く暴落したが、「あれが真の大底だった。そしてその後、ビットコインは20倍になった」と語っている。

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Cointelegraph Managing Editor Gareth Jenkinson, left, moderates a panel with three crypto experts in Paris, France, on April 7. Source: Cointelegraph

仮想通貨分析企業メサーリのCEOであるエリック・ターナー氏もこの見解に同調し、「我々はまだ強気相場を経験していない。ただの二面性のある市場だった」と語った。

「ETFに資金が集中したビットコインがあり、もう一方にはミームコインの狂騒など短期的トレンドが点在していたに過ぎない」という。

「むしろ本当の問いは、『強気相場はいつ来るのか?』ということだ。私の見立てでは、それは今年の第3四半期から第4四半期になる」とターナー氏は述べた。

MANTRAの共同創業者兼CEOであるジョン・パトリック・マリン氏は、短期的な価格動向よりも、米国における政策環境の変化に注目すべきだと述べた。同氏は、行政府を含む米国からの「強い政策的追い風」に期待を示している。

好調な政策と悪化するマクロ環境

ドナルド・トランプ米大統領は、仮想通貨規制の見直しを主導しており、議会ではステーブルコイン規制法案および市場構造法案の成立が近づいている。

さらに、トランプ氏は仮想通貨支持派の人物を政権内の要職に次々と起用している。中でも注目されるのはポール・アトキンス氏であり、同氏は証券取引委員会(SEC)委員長への指名に一歩近づいている。

しかし、こうした前向きな動きにもかかわらず、市場はまだ本格的な強気相場入りとはなっておらず、資本流入も限定的だ。その背景には、トランプ氏の主要な経済政策──とりわけ貿易不均衡の是正を掲げた方針──が成長懸念を引き起こしていることがある。

4月2日に発表された「解放の日」関税は、当初案の10%の包括的関税を大きく超える内容で、多くの投資家にとっては「グローバル貿易のルールを書き換える無謀な試み」と映った。

この発表を受けて、米国株式市場ではCOVID-19パンデミック以来最大規模の資金流出が発生した。

Source: Andrea Junker

もっとも、COVID-19のような過去の危機と同様に、米連邦準備制度理事会(FRB)が市場を下支えする可能性もあるとファン・デ・ポッペ氏は指摘する。

「過去の危機を振り返れば、どこかの時点でFRBが利下げを行い、国内経済を刺激するために資金供給を開始する。だから、それは起きるだろう。問題は“いつ”かということだ」と述べた。