米コロラド州に登記された企業が、中国語圏の違法マーケットプレイス「シンビ・ギャランティー(Xinbi Guarantee、新币担保)」と関連していることが明らかになった。このプラットフォームは、東南アジアで活動する詐欺グループにサービスを提供し、数十億ドル相当の仮想通貨を不正に流通させていたという。
ブロックチェーンセキュリティ企業エリプティックが5月13日に公表した調査によると、シンビ・ギャランティーはこれまでに主にステーブルコインのテザー(USDT)による取引で84億ドルを受け取っていた。
この中国語の違法マーケットはテレグラム上で運営されており、東南アジアで豚の屠殺詐欺を行う詐欺師たちに対して、テクノロジー、個人情報、マネーロンダリング手段などを提供していた。
シンビ・ギャランティーの公式サイトでは、同社は「投資と資本担保のグループ会社」であると主張しており、2022年に設立されたコロラド州法人「Xinbi Co. Ltd」を通じて運営されていると記載されている。
しかしエリプティックによれば、2025年1月時点で同法人は定期報告書を提出しなかったことから「報告義務不履行」とされていたという。
主なサービスはマネロンと偽造文書の提供
シンビ・ギャランティーで提供されていたサービスのうち、最も多かったのがマネーロンダリング関連だった。そのほか、詐欺行為に利用されるスターリンクの通信機器、被害者を標的にするための個人情報、偽造IDや不正な書類の販売などが確認されている。
同プラットフォームは、これまでに確認された中で2番目に大きい違法オンラインマーケットであり、2024年第4四半期だけで10億ドル以上が取引されたとされる。さらに、北朝鮮のハッカーグループによるマネロンにも関与していた証拠があるとエリプティックは指摘している。
また、シンビ・ギャランティーとその参加業者が使用していた数千の仮想通貨アドレスも特定された。84億ドルという取引額は「実際の取引総額の下限にすぎない可能性が高い」と同社は付け加えている。
シンビ・ギャランティーには現在約23万3000人のユーザーが存在し、ベンダーが保証金を預けることで詐欺を防止する「担保モデル」に基づいて運営されている。
フイワンに続く規模の違法市場
2024年7月、エリプティックはシンビ・ギャランティーと類似するテレグラムベースの中国語違法市場「フイワン・ギャランティー(汇旺担保)」の実態も暴露している。
調査によれば、フイワングループ全体で980億ドル以上の仮想通貨取引を仲介していたという。
このフイワンは2025年5月初旬、米財務省によってマネーロンダリングの拠点と認定され、米国の銀行システムから切り離される制裁対象となった。
エリプティックはこれらのマーケットプレイスについて、「ステーブルコインを基軸とする中国発の地下銀行ネットワーク」の一端を示すものであり、大規模なマネーロンダリングに利用されていると結論づけている。