仮想通貨投資家支援サービスのクリプタクトは5日、仮想通貨のオプション取引を開発するProtoption(プロトプション)を設立したと発表した。仮想通貨のオプション市場の創設を目指し、仮想通貨オプション取引の研究を進めていく。まず年内は小規模なレベルでの検証を行い、来年以降に投資家への提供を目指す。

新会社プロトプションは、仮想通貨分野でのオプション取引の提供を目指す。オプション取引は、将来の売買の権利を取引するデリバティブ取引の一種。

クリプタクトの斎藤岳Co-CEOは「暗号資産におえるデリバティブは、現時点では専ら投機を助長するような仕組みが多く、『ヘッジ手段の提供』が十分になされていない」と語る。

「価格変動リスクが高い状態では、多くの投資家が安心して取引ができない。ヘッジ手段を提供することで機関投資家を含めた投資家層の拡大を促す」(斎藤氏)のが目標だ。斎藤氏は、国内では類似の商品が存在しないことから、投資家の需要は大きいとみる。

プロトプションでは、まず仮想通貨のインデックスを対象にしたオプション組成を検討していく。同社がオプションを組成し、ユーザーに提供する形を考える。斎藤氏をはじめ、創業チームは大手金融機関でヘッジファンドの運用やツール開発の知見があり、その経験を活かしていくという。

今年春以降、クローズドで少額のポジションでのオプション取引の提供を行う予定だ。クローズドなテストを行う中で、オプション取引を提供する際にどのようなリスク管理が必要なのかを検証する。

仮想通貨デリバティブについては、今後の法改正で金融商品取引法の範疇に入るとの見方が有力だ。斎藤氏は、将来的には新会社での金商法のライセンス取得も検討したいとしている。

スマートコントラクトの研究開発も

仮想通貨のオプション取引の検討と同時に、仮想通貨デリバティブでのスマートコントラクト活用の研究開発も進める。

伝統的な金融市場ではISDA(国際スワップ・デリバティブ協会)が作成した基本契約書をベースに、個々の取引における明細を決め、取引全体の契約者を作成するという。

仮想通貨デリバティブでも同様の契約書を作成する必要があり、スマートコントラクトベースで契約書の中身を表現できるかを検討していく。またハードフォークのような仮想通貨特有のイベントへの対応も研究する。

斎藤氏はスマートコントラクトで約定や清算を自動化できれば、オプション取引の口座管理もより簡便になるだろうと語る。

「現状では、個別株のオプションは機関投資家向けにOTC(店頭取引)で提供されるのがほとんど。金融機関にとっては口座管理のコストをかけたくなく、個人で利用しようとすると高い手数料を取られる」

テクノロジーで自動化できれば、仮想通貨に限らず、株式などでもより少額で個人投資家にもヘッジ手段を提供できるようになるだろうとみる。

クリプタクトは、これまで仮想通貨の確定申告に必要な損益計算サービスやポートフォリオ管理ツールを提供してきた。斎藤氏によれば、1年前に比べると伸び率は鈍化しているものの、ユーザー数は着実に伸びている。税理士向け有料サービスも「大幅に減少するかと想定していたが、大きく変わっていない」(斎藤氏)状況という。ただ長期的には仮想通貨投資家のすそ野拡大が大きな課題だ。同社は、価格変動リスクへの回避手段を提供することで、仮想通貨に安全して投資できる環境を整えたいとしている。