今年8月にブロックチェーン技術をポイントサービスに活用する米ロイアル(Loyyal)にLINEやリクルート、マネックスが出資した。
ロイアルは独自のポイント台帳機能とスマートコントラクト技術により、それぞれ独立しているポイントサービスのシステム接続してポイントの相互交換を可能にする技術をもつ。
仮想通貨や、ポイントサービス、キャッシュレスサービスを進める企業が投資するロイアルは日本で進むポイント経済圏にはどのような可能性を感じているのか。
日本でロイアルのアドバイザーを務める増田剛氏に今後の戦略を聞いた。
日本にロイヤルティ文化の醸成が必要
LINEや楽天、Tポイントなどのポイント経済圏をもつ企業だけでなく、航空会社のマイレージなど、国内外問わず多くの「ポイント」が存在する。
ロイアルはこうしたポイント交換のハブになっている企業に対し、ブロックチェーン技術を使ったマーケティング支援をしている。現在はエミレーツ航空のマイレージにブロックチェーン技術を活用する取り組みを進めている。
特にマイレージのようなロイヤルティポイントの市場規模は世界で5兆ドルあると言われており、ブロックチェーン技術活用のポテンシャルは高いとされる。
ロイアルはこうしたポイントの中でも、特に「ロイヤルティ」に着目した戦略を持つ。航空会社のマイレージや高級ホテルグループが取り扱うVIP待遇を含むものだ。
しかし、日本ではこの「ロイヤルティ」がしっかりと認知されているとは言い難い。増田氏も「日本のポイントはロイヤルティではない。おまけ的についている要素が強い」と指摘する。
さらに経済規模もまだ大きくないこともある。「日本でポイントを数十万単位で持っている人は多くはない」。動く金額としても小さいもののため、日本ではロイヤルティという意識での使い方が認知されていない。
「ロイヤルティ」とした場合にそのポイントを使う先になるのは高級ホテルなど体験を通して使われることを想定することが本来あるべき姿だという。ただ、増田氏は「日本ではまだロイヤルティという文化の醸成が進んでいない」と話す。
しかし、ロイアルはここに商機があると見込む。日本には多くのポイントシステムがあり、日本人はポイント文化には親しんでいるからだ。
ロイアルの顧客として想定されるのが航空業界や旅行業界、ウェルネスなどの健康分野、ホスピタリティ分野だ。
航空業界やホテル業界のロイヤルティにはポイント交換の適正化の他に、ポイントの動きの合理化がある。
例えば航空会社を利用した場合のマイルなどがいい例だ。ファーストクラスで付与する1マイルと、エコノミークラスの1マイルは獲得コストは異なる。一つひとつのマイルにかかった実際のコストが把握できていれば、今期利益を出したい、という場合にどのマイルを計上するか、という収益の出し方をコントロールすることにつながる。
こうした違いをブロックチェーンを用いたロイアルの技術で追跡できるようになるという。
ブロックチェーンを使ったポイントシステムは横断マーケティングに
海外ではこうしたポイントを意識した市場は、ロイヤルティを意識した高級路線と低価格路線の二極化が進んでいる増田氏は説明する。日本ではどちらかというと低価格路線が進んでいると言えるだろう。
増田氏は日本のポイントシステムの問題を、低価格路線よりも「ポイントシステムに参加する各店舗のロイヤルティにつながっていないこと」だと指摘する。Tポイントなどさまざまな店舗で貯めることができるものは、どの店舗で貯まったのかは考慮されていないのが実情だ。
増田氏は今後、日本のポイント経済について「各店舗のポイントが個別で把握できるようになるのではないか」と分析する。ブロックチェーン技術を用いることで、より細分化されたポイント評価システムができるようになるからだ。「Tポイント・ファミマ」「Tポイント・吉野家」といった個別の利用を想定する。
ポイントを個別に把握できるようになることで、顧客の趣味嗜好にあったマーケティングに使われるようになっていくだろうと予想する。企業側としてもこうした世界ができれば、商品開発や合理的な経営に生かすこともできる。
ポイントと仮想通貨の相関性
日本では現在、ポイントでビットコインを購入するという動きも出てきている。
ポイントは仮想通貨との相関性はあるのだろうか。
増田氏は「日本企業はこれまでポイントを抱え込みたいという意識が強かった」と話す。ポイントは使われない方が、企業側にとって利益があるからだ。ポイント利用のための最低ポイントの指定などがその例だろう。
しかし最近は「使わせる意識」にシフトしてきているという。
「ポイントをマーケティングに使っていこうという考えが出てきている。政府のキャッシュレスの推進の動きと合わせていい傾向だ」と話す。ポイントを使う出口が増えてきており、仮想通貨はこの出口の一つとして捉えられると考えられる。
今後ポイントが仮想通貨にどう使われていくかは判断は難しいが、増田氏は「新しいサービスが新しい風土を作っていき、新しいマーケットを醸成していくのだろう」と話した。
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文:Yoshihisa Takahashi