ビットコインやブロックチェーン技術はアフリカでメインストリームに受け入れられる時期に来ている。アフリカに住む人々は、旧式で費用が高くつく銀行システムに替わり、この革新的な技術を採用する準備が出来ている。

 経済インフラの欠如と不十分な経済についての教育が合わさり、アフリカ人の大部分は、銀行口座もしくは基礎的な金融手段を保有していない。しかし、多くの国では、スマートフォンの普及により代替的な金融サービスを利用することができるようになっている。そのようなサービスが、特に大部分のミレニアル世代にとっては主流の支払い手段となっている。
ビットコインの魅力は大部分をその利便性と参加性にある。また、仮想通貨の使用におけるトラスト・フリーなシステムは、オンライン支払いプラットフォームにおける銀行に対するアフリカ人の不信という、長年にわたる問題も解決してくれる。 

 アフリカ全域に及ぶ仮想通貨コミュニティは、大陸初の多国籍仮想通貨となるヌルコインを2月に正式にローンチした。多くの人が、これによりアフリカの国家間の取引が促進され、旧来の銀行口座を利用することが叶わなかった人々に対し、金融サービスが提供されることを期待した。しかし、これを利用することが主流として受け入れられるためには、この技術が持つ潜在的利点を、より一層周知する必要がある。

 17年後半以降、アフリカにおける技術革新への期待は高まっている。各国の政府は、活況にある仮想通貨市場に対する取り組みや態度をほとんど統一できていないものの、仮想通貨や非中央集権化には、人道支援をもたらし、十分なサービスを受けられない人々の暮らしを変えられるという期待が寄せられている。

 今回はアフリカの仮想通貨規制に対する評価を紹介する。このシリーズでは、世界で発展するフィンテック業界に対する規制を評価している。シリーズの第1回では、アジアにおける日本、香港、シンガポール、そして台湾といったホットスポットにおける動きや、各国政府がどのように成長を促進、もしくは妨げているかに目を向けた。第2回では、仮想通貨規制と多くのヨーロッパの指導者が仮想通貨に対し批判的な態度を取っていることについて調査した。第3回ではアメリカの規制当局が仮想通貨を主流として受け入れるための準備を行っていることについて分析した。以下は、ニュースを元にした調査であり、決して完全なものではない。

 ここで述べられている見解や意見は著者個人のものであり、必ずしもコインテレグラフの見解を反映していない。あらゆる投資や取引にはリスクが伴う以上、決断を下す際には自身で調査をお願いする。

LEGEND

South Africa

南アフリカ

 南アフリカでは、政府による初めての仮想通貨スタートアップ事業、プロジェクトUBUが17年後半に開始された。貧困に悩む家族を助ける事を目的とした他のプロジェクトと同じく、プロジェクトUBUの目的は、経済的に恵まれない南アフリカ国民に対しユニバーサル・ベーシック・インカムを配布することにある。

 ブロックチェーンと仮想通貨は南アフリカでは一般的なものであり、金融機関はこれらの業界への関与について顕著な前進を見せている。ブロックチェーンアフリカ会議が15年以来、毎年ヨハネスブルグで開催されており、またIBMやマイクロソフト社と提携している。この会議はここ一世紀におけるアフリカの技術開発に対する最大の貢献者となっている。
南アフリカ準備銀行は、フィンテックの発展を分析し、政府に対し規制に関する適切な助言を行うために金融テクノロジープログラムを設立した。さらに、同行はイーサリアムの分散型台帳技術に基づいたブロックチェーンプロジェクトを立ち上げ、銀行間支払いの実験を行う予定だ。

 政府は仮想通貨の使用に対して明確な規制や規則を定めていないものの、ビットコインを法定通貨としては認めておらず、南アフリカ歳入庁は、仮想通貨を通常の所得税法の対象となる無形資産であるとみなしている。

Nigeria

ナイジェリア

 ナイジェリア中央銀行は17年8月、仮想通貨に対する委託研究について初めて発表した。研究の目的は、ステークホルダーを集めてブレインストーミングを行い、アイデアを交換し、この国がアフリカにおけるブロックチェーン及びビットコイン規制におけるリーダーになることを目指すことだった。

 その後まもなく、ナイジェリア・ブロックチェーン・教育ネットワーク及びブロックチェーン・ナイジェリア・ユーザーグループが、この国初となるブロックチェーンカンファレンスを主催したところ、スタートアップが10社と多くの業界有力者たちが参加し、ブロックチェーンのスタートアップをナイジェリアに誘致するためのインセンティブについて議論した。

 テックポイント主催の別のカンファレンスが今月下旬に予定されており、推定参加者は5000人以上だ。しかし技術コミュニティが活発化する一方で、規制当局による反応や政府の方針は未だ示されていない。

 しかし、事態はすぐに変わるかもしれない。4月上旬、ナイジェリア国民議会の下院は「ブロックチェーン・アプリケーション及びインターネット技術の規制の必要性」と題した法案を採択し、中央銀行に対しブロックチェーン開発及びその他のフィンテックに対する規制枠組みの作成を支援するよう求めた。

Uganda

ウガンダ

 ウガンダ銀行は昨年3月、投資家に対し仮想通貨に関連するリスクについて警告を発した。しかし、この警告によって、投資家が取引所の開設を支援し、ウガンダの経済を強化するための機会を追求する流れが止まることはなかった。

 最近の報道によれば、ウガンダ政府は基礎的な公共サービスを提供するためにブロックチェーン技術を使用することや、主に技術革新を原動力としてウガンダを世界の市場でより良い位置に付けることに興味を示している。アフリカン・ブロックチェーン主催の来月に開かれるカンファレンスでは、有力者らがブロックチェーンを経済に組み込むための実現可能な計画について議論する予定だ。

 ウガンダのブロックチェーン組織であるクリプト・サバンナは、この国の経済の発展を支援するための取り組みとして、4月に世界的な仮想通貨取引所であるバイナンスと提携した。この国は世界最貧国と考えられており、1人あたりのGDPは2000ドル(約22万円)、人口の77%は銀行を利用することができない。

Kenya

ケニア

  ケニア中央銀行は4月、銀行に対し警告を発し、仮想通貨関連の取引及び法人を拒否するよう要請し、ビットコインを無限連鎖講に例えた。しかし、ケニアの仮想通貨投資家たちに対しては、未だに明確な規制のガイドラインは示されていない。

 中央銀行総裁はブロックチェーン技術への支持を表明しているが、各銀行は15年以来、デジタル通貨に対しては慎重かつ懐疑的な態度を取り続けている。
世界的なブロックチェーン企業であるフィンテラは、ケニアに拠点を正式に設けた。ウフル・ケニヤッタ大統領が、ケニアはブロックチェーン技術が持つ潜在的な有用性を探るべきだと発言したことから、ブロックチェーンへの関心が高まったからだ。

 大統領の支持でブロックチェーン・タスクフォースが3月に設立された。多くの支持者たちは分散型台帳技術が土地所有権の登録、既存のモバイルマネーサービスの強化に使用されることを期待している。

 ケニア最大のモバイル通信事業者は、携帯電話用の送金・支払いサービスであるM-Pesaを立ち上げている。このサービスは3000万人のユーザーを誇っており、旧来の銀行業の支配に対し徐々に立ち向かうようになってきている。しかし規制についての見通しが不確かなことから、M-Pesaはビットコイン取引プラットフォームでのサービスについては否定している。

Egypt

エジプト

  17年前半、ある現地のビットコイン愛好家が仮想通貨の使用を麻薬の使用に例えた。ローカルビットコインズというウェブサイトを使用したことで、友人が裁判無しで投獄されたという。

 17年半ば、初のビットコイン取引所が開始されたとする報道がなされたが、エジプト中央銀行は、仮想通貨の法的地位についてあらためて表明し、どの取引所も認可していないとした。

 エジプトの法律下の仮想通貨の取引については、外国法人と取引できるのは公的銀行に限られ、また電子バンキングは禁じられている。イスラム教の聖職者が最近、仮想通貨はハラールであると発表したにも関わらず、エジプトではデジタル通貨がシャリーアの下で受け入れられるべきかどうかについて混乱が見られる。歴史的にいえば、イスラム教徒は「内在的価値を持つ商品」のみを受け入れ可能な通貨として認める。

 政府は仮想通貨を禁止し続けているものの、最近はエジプト中央銀行がアメリカに拠点をおくR3ブロックチェーンコンソーシアムに参加し、同技術について実験するのを許可している。

Rwanda

ルワンダ

  ルワンダのキガリで7〜10日にかけて行われたトランスフォーム・アフリカ・サミットでは、国家元首、フィンテック企業、ブロックチェーンの専門家、政府規制当局、AI企業、投資銀行、そしてベンチャー資本家などから4000人以上の代表者が出席した。

 公的、そして私的セクターの双方から様々な代表者が出席したこと、そしてカンファレンスのテーマである「アフリカにおける単一デジタル市場の促進」は、アフリカが来たるデジタル革命に取り残されないようにすることを目的とした、有力者たちによる総力を挙げた取り組みの典型例である。

 ルワンダ国立銀行は今年初旬、同行の仮想通貨に対する立ち位置と、既存の金融機関に関する新興の仮想通貨市場に関係した潜在的リスクについて詳述した資料を発行した。同資料では仮想通貨を主流として受け入れるための準備には、銀行による通貨の開発と規制などが含まれると締めくくった。

Zimbabwe

ジンバブエ

 ジンバブエ準備銀行 (中銀) は5月、国内の金融機関による仮想通貨の取り扱いを禁止すると発表した。 昨年末には、ビットコインを法定通貨として認めないと発表していた。政治混乱が巻き起こっていた時期、中銀は仮想通貨市場に対する規制の展望について調査と開発を行っていたと主張している。

 この中央銀行による発表は、軍事クーデターがジンバブエ政府を打倒することに成功した数日後に行われた。これによりビットコインの価格はこの国最大の仮想通貨取引所であるゴリックスで10%の急上昇を見せた。

 ゴリックスは首都でビットコインATMを開設し、それらには米ドルを投入したと報じられた。ジンバブエは現代史において、最悪の1つに数えられる程のインフレを記録しており、近年になって自国の通貨を見限り、米ドルに大きく依存した複数通貨制に切り替えた。

Tanzania

タンザニア

  外野がタンザニアにおけるビットコインの成長に気がついたのは、取引所ローカルビットコインズでの取引量が、昨年夏に急上昇した際だった。タンザニアにおけるビットコインの使用の増加は、仮想通貨がナイジェリアのようなアフリカにおけるホットスポットから田舎の国々へと普及している顕著な兆しである。

 タンザニア中央銀行は3月、最近のビットコイン価格の上昇における市場についての推論と関連付けながらコメントを行い、リスクの高い市場で売買を行う投資家に対して警告を行った。ビットコインが中銀の注目を集めたのは、昨年12月だ。それ以降、中銀は将来実現可能な規制を作成するために、ビットコインの研究を慎重に進めている。

 タンザニア政府は公式に仮想通貨を禁じてはおらず、この国の仮想通貨コミュニティは、銀行やその他のこの地域の規制当局からの規制方針を待ち望んでいる。

Botswana

ボツワナ

  ボツワナには現在取引所は存在しないものの、小規模ながら活発な仮想通貨及びブロックチェーンのコミュニティが維持されている。多くのトレーダーは南アフリカのような近隣諸国の取引所を使用するか、もしくはオンライン取引グループを活用している。

 しかし、ボツワナ人はブロックチェーンに関心を持ち続けており、16年にはこの国初となるビットコイン・ブロックチェーンサミットが開催された。ボツワナには現在3社のブロックチェーンスタートアップがあり、それらの企業全てが、銀行を利用することができない大部分の国民のニーズに応えることを目標としている。

 ボツワナ銀行は市場に対し何ら規制を発しておらず、17年末には、基本的に仮想通貨の研究に対しては興味を持っていないと発言した。

Ghana

ガーナ

  15年、ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、ガーナに拠点を置くブロックチェーンスタートアップであるビツォコに対し、研究助成金を寄付した。ビツォコは、モバイルマネーの受け入れを促進し、安価で効率的な越境支払いシステムを提供することを目的とている。

 しかし、ガーナの銀行は資金洗浄やテロへの資金提供といった違法活動に仮想通貨が使用される懸念から、仮想通貨の使用を制限している。ガーナの中央銀行は今年初め、ビットコインは法的に認められていないと発表したが、支払い及び決済システムの強化のためにブロックチェーン技術には興味があることを示唆した。

Morocco

モロッコ

  モロッコ外国為替局及び中央銀行は17年後半、公式に仮想通貨取引を違法とし、送金と支払いの受け取りには罰金を課すとした。外国為替局はあらゆる対外支払いは公認の仲介者及び中央銀行を経なければならないと要求した。

Algeria

アルジェリア

  アルジェリア国民評議会は金融関連法案を17年末に提出した。もしこの法案が署名され成立した場合、ビットコインの使用と保有は違法になる。

 この法案の他の条項では、仮想通貨が麻薬取引や脱税といった違法行為に仮想通貨が使用される可能性が示されており、おそらくこれらのことが政府の懸念や厳しい対応の原因になっていると思われる。

Ethiopia

エチオピア

 エチオピア科学技術省は今月初め、仮想通貨スタートアップであるカルダノとの合意書に署名した。2者により署名された了解覚書には、ブロックチェーン開発やこの国のアグリテック産業のトレーニングを指導するなどと記されている。

 より厳密に述べると、科学技術省はカルダノと協力することにより、この国最大の輸出商品であるコーヒーの出荷のためのブロックチェーンアプリケーションを開発しようとしていると言われている。

Sierra Leone

シエラレオネ

 シエラレオネでは、最近の大統領選挙での投票の集計に、ブロックチェーン技術を用いる可能性があるとメディアが大々的に報道したが、失望と疑惑の内に終わった。

 国家選挙委員会はメディアの報道を受け、選挙テクノロジー企業であるアゴラを選挙で利用しているという疑惑を否定した。アゴラもまた、国際的なオブザーバーとして法的な役割を担っていたことは認めたが、選挙結果に関するどんな公的な立場にも就いていなかったと主張した。

仮想通貨規制状況のアジア版ヨーロッパ版アメリカ版はこちら。