南北アメリカの仮想通貨規制状況

 米商品先物取引委員会(CFTC)のクリス・ジャンカルロ委員長は、仮想通貨を規制する包括的な法律が、連邦レベルで近い将来制定されるとは考えていないと述べた。CNBCが4月30日に伝えた。当日これより早く、米証券取引委員会(SEC)のロバート・ジャクソン委員は、イニシャル・コイン・オファリング(ICO)における消費者保護問題に関連して、ICOは無秩序な証券市場の典型例であると述べている。

 これらの声明は、将来、仮想通貨の規制が不可避であることを示すサインと読み取ることができる。共通の傾向として、仮想通貨取引に対する政府の監視が後戻りすることはない、ということを示しているように見える。そして米国やカナダ、その他の西半球のプレイヤーたちは、デジタル市場のグローバルな理解と規制のための道筋をつけようとしているようだ。

 南北アメリカにおける仮想通貨規制に関する以下の評価報告は、世界的に隆盛しつつあるこのフィンテック業界の規制に関する、より広範囲な一連の評価活動の一環である。これまでにアジア欧州アフリカをそれぞれ検証してきた。

以下に述べる内容は報道の調査に基づいているが、完全であるとは考えないでもらいたい。この記事で述べられている見解や意見は執筆者単独のものであり、必ずしもコインテレグラフの見解を反映していない。あらゆる投資や取引にはリスクが含まれており、意思決定の際には自分自身で調査をお願いする。

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The United States

米国

 米国における規制に関しては、すべての注目はSECとCFTCに集まる。投資家保護と、オープンで透明で競争力の高い金融市場の促進、その両方を任務とするこの2つの連邦機関は、仮想通貨の主流での採用推進において、重要な役割を果たす存在だ。

 仮想通貨資産は現在、1993年証券法に基づく有価証券関連法が適用されているが、この時代遅れの規制の枠組みが、多くの多様なビジネスプランの統治をやりにくくしている。SECは取引プラットフォームに対し、より適した分類が存在しないため、取引所として同機関に登録することを求めている。デジタル資産は有価証券として定義され、SECの管轄・規制範囲に分類されているのだ。

 複数ある中で別の重要な連邦機関は、仮想通貨を連邦税の対象資産とみなす米国税庁(IRS)である。IRSは18年2月に調査チームを立ち上げ、脱税目的の法定通貨の換金を詳しく調査すると共に、国際的な犯罪捜査機関と協力して、無認可取引所の調査を行うことになっている。

 同様に米国の銀行分野でも、仮想通貨取引に対する慎重なアプローチがとられている。有名な米国の銀行JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティグループは2月、デビットカードやクレジットカードでの仮想通貨の購入と送金を禁止し、それをきっかけとしてこの動きが世界的に広がった。JPモルガン・チェースとシティグループは方針変更の理由として、ビットコインの激しい価格変動と、仮想通貨市場の全般的な不安定さを引き合いに出したが、市場の発展に伴い、方針を見直す意志があることも口にしている。
銀行の中には、仮想通貨に関連した口座への国際送金を拒否しているところや、米取引所でのビットコイン先物取引を辞退しているところもある。多くの事例で仮想通貨関連企業は、銀行との建設的な関係性構築に苦労している。

 しかし、伝統的な金融分野の象徴的存在であるゴールドマン・サックスは最近、この新たなテック分野へのアクセスを求める顧客が増えていることを受け、仮想通貨トレーダーをデジタル資産マーケット担当副社長として採用した。ゴールドマン・サックスやウォールストリートの幹部社員の何人かが、仮想通貨分野に従事するため、伝統的な銀行業務を離れようとしているという話も聞かれる。

 多くの有名な銀行が仮想通貨の使用を禁止する動きを見せているが、彼らがこのテクノロジーに反対している訳ではない。ブロックチェーン ネットワークは、金融サービスの高コスト構造を排除し、銀行のリスクを最小化する共有台帳をもたらす。また、銀行業務活動の規制当局への報告も強化される。

 米国のテック企業R3は、15年下旬に銀行業界向けの新たなオペレーティングシステムを構築する、初のブロックチェーンプロジェクトを開始した。それ以降、世界最大手の金融機関70社以上がこの事業に参加し、力を合わせて分散型台帳技術の研究開発を推進している。このグループは2月、サプライチェーン全体にわたる処理を単純化するオープントレード金融ネットワークの開発を目的とする、貿易金融プラットフォームの試験的なリリースを発表した。

 JPモルガンは4月、イーサリアムプロトコルを利用する独自の銀行間決済プラットフォーム「クォーラム」を開発するため、R3を離れた。JPモルガンとカナダ・ナショナル銀行はこのほど、ブロックチェーンプラットフォームの試験に成功した。この企業向けプラットフォームは、分散型台帳技術を利用して透明性の高い規制当局へのアクセスを提供すると共に、顧客のプライバシーと匿名性を保護すると説明されている。

 米国郵政公社は昨年9月、ユーザー情報を認証し、オンライン取引の安全を確保するブロックチェーンベースのシステム導入に備え、特許を出願した。この動きは、米国においてさらに多くの企業がブロックチェーン関連特許を出願する流れを示している。

Canada

カナダ

 カナダの高度に発展した経済の中で運営されている仮想通貨業界は、政府から大した関心を示されることなく、何年も存続してきた。しかし、今年始めに世界の金融当局が、仮想通貨取引所と詐欺的なICOに対しより厳しい監視を適用し始めたのを受け、カナダの政府機関も規制の流れに飛び乗った。

 カナダの金融基準委員会(FINA)は、既存の2014年金融法の修正を可決した。この修正により法律の適用範囲に仮想通貨を取り込んで、仮想通貨会社に当局への登録を義務付けると共に、銀行には未登録の企業との取引を禁じた。

 この変更はまだ施行されていないが、FINAはさらに多くの規制を適用できないか、可決された修正を見直している最中だ。同委員会は毎週土曜日に、政府広報誌ガゼットで規制案を公表している。

 仮想通貨支持者たちは、業界の成長を阻害することなく欠点に適切に対処する規制を確保するため、積極的にその役割を果たしている。FINAの委員会公聴会にも呼ばれ、証言を行った。ビットコイン自体は規制されていないものの、支持者たちは規制当局に対し、個人が仮想通貨市場へのアクセスに利用する周辺ビジネスがいかに大きな影響力を発揮しているか、考慮に入れるよう強く要請している。

 カナダの仮想通貨業者は、アメリカの同業者に比べ、それほど多くの政府よる関与や、ICOに対する調査を受けて来なかった。しかし4月に、オンタリオ州証券委員会は仮想通貨業者の事業運営に関するいくつかの調査を実施しており、既存の証券法の適用を開始する可能性がある。米SECの姿勢に合わせ、カナダの規制当局も仮想通貨業界を制限するのではなく、成長を促進しようとするだろう。

 一方、銀行は違う懸念を抱えている。カナダの3大銀行であるモントリオール銀行、スコシアバンク、トロント・ドミニオン銀行は2月、米国の銀行にならい、デビットカードとクレジットカードによる仮想通貨の購入を禁止した。

 この禁止措置にも関わらず、バンククーバーのフィンテック企業モゴ社は、ビットコイン売買のための簡易化されたサービスを、カナダ国民向けに提供すると発表した。大手銀行が取引所に禁止令を発した、わずか数日後のことだった。

 話は違うが、カナダの政府と銀行はどちらも、分散型台帳技術(DLT)に興味を示してきた。政府はブロックチェーンベースのシステム「ノウン・トラベラー・デジタル・アイデンティティ」のリリースを発表している。このシステムは、海外からの旅行者が個人情報を政府機関に送信するための、安全なプラットフォームを提供するものだ。

 カナダロイヤル銀行は、特定の状況下を除き、仮想通貨の購入を認めないと発表した。しかし同銀行も昨年、信用スコアの計算をより透明化するために使われる、ブロックチェーンベースのクレジットスコアプラットフォームの特許を申請している。

 同様にトロント・ドミニオン銀行も、資産移転を電子的に追跡する新たな販売時点管理システムのブロックチェーン関連特許を、16年に米国で申請した。今年始めには、カナダで初めてブロックチェーンをベースとした上場投資信託(ETF)が、カナダ当局から承認を受けた。このETFは2月にトロント証券取引所で取引が開始され、さまざまなDLT企業により売買されている。

 カナダ証券取引所は2月、トークン化した有価証券を通して企業が株式や債券を発行できるようにする、ブロックチェーンベースの有価証券クリアリング清算プラットフォームを導入した。有価証券トークンの発行には、証券委員会による規制が適用される。

 カナダ国立研究機関も1月に、公開ブロックチェーンを利用して政府の補助金交付・資金拠出管理の透明性を高める試験のため、イーサリアムブロックチェーンで実験を行うと発表した

Mexico

メキシコ

 ラテンアメリカのリーダーとされてきたメキシコには、仮想通貨業界の有望な未来がある。国民の半分以上が伝統的な銀行口座を持っていないメキシコでは、金融機関に対する国民の信頼が急速に低下しており、これが仮想通貨プラットフォームに大きなチャンスをもたらしている。15年にはたった50社だったフィンテック企業が、17年には2000社以上に達している。

 メキシコの上院は仮想通貨を規制する法案を可決し、現在はペーニャ大統領の署名待ちの状態にある。署名をもって法律として成立させ、市場の安定性を促進する。この法案で仮想通貨運営者は、金融技術機関としてメキシコ銀行への登録が義務付けられ、銀行と同等の存在と見なされる。

 法案はクラウドファンディングにも対応し、また、同国の取引所でどの仮想通貨の取引を許可するか判断を行う最終決定者として、メキシコ銀行を指定している。17年下旬にメキシコの中央銀行が、ビットコインはリスクの高い投資で、顧客は詐欺的なICOに用心する必要があると警告しており、今回の法律制定はこの警告に従うものだ。

 この法律は一般的な内容で起草されており、国立銀行や証券委員会のような規制機関、中央銀行、及び金融当局が、仮想通貨業界と取引のある企業に対する、具体的な規定を加えると見込まれている。メキシコ政府は、公的機関の契約を追跡し、公開入札プロセスを透明化するために設計された、ブロックチェーンプロジェクトを発表した。同国では選挙シーズンが近づいており、ある大統領候補者は、政府の汚職にブロックチェーンで闘うと話したと言われている。

Argentina

アルゼンチン

 15年に新しく選出された大統領が、前政権からの厳格な金融政策を撤廃したのを受け、アルゼンチンでビットコインが初めて解放され、国民から温かい歓迎を受けた。同国民は操作された為替レートや国の通貨の深刻なインフレに裏切られたと感じており、そのためビットコインは、同国の金融に再出発の機会を与えたのだ。

 アルゼンチンの中央銀行総裁は先月のG20サミットで、18年7月までに規制案を提案する責任を負っている。また同国政府は、毎週の報告書で一定の紙面を割いて、ブロックチェーン及び分散型タイムスタンププラットフォームアプリの利用に対する関心も示してきた

 アルゼンチン最大の先物市場であるロサリオ先物取引所(ROFEX)は、昨年から仮想通貨に対する関心が飛躍的に高まっていることを受け、顧客にビットコイン先物の提供を開始すると見られている。

Brazil

ブラジル

 多くの国民が伝統的な銀行に口座を持たず、十分な金融サービスを利用できていないブラジルにおいて、仮想通貨は人々の生活を変える存在であることが証明されるかもしれない。
同国では主要銀行による仮想通貨取引所の取り締まりが行われる中、ブラジル最大の投資会社が連邦歳入局に対し、ビットコインの店頭取引を開始するための書類を提出した。銀行は商業的関心の不足と不法行為の懸念を理由として、国内の取引所に対しサービスの提供を停止し、口座の閉鎖を進めていると伝えられる

 最近の銀行の方針転換にも関わらず、ブラジルにおいて仮想通貨は広く定着しており、国民にとって特に必要不可欠な存在になっている。今年2月、モバイル金融サービスプロバイダーのエアフォックス社は、ブラジルの高コストで官僚的な銀行システムに対するソリューションとして、同国民向けに無料アプリをリリースした。

 ブラジルの仮想通貨業者コインBR社は、有望な仮想通貨「ダッシュ」と提携し、今後国内全域1万3000ヶ所以上で同通貨を提供する予定だ。その他の関心事として、仮想通貨はブラジル税務当局の権限の範囲内でもある。税務当局は仮想通貨を資産と見なし、課税のため、投資家にキャピタルゲインの報告を義務付けている。仮想通貨業者と取引所を規制するブラジル証券取引委員会(CVM)は、国内の投資ファンドによるビットコインの購入を禁止し、取引所に対しては反マネーロンダリング(資金洗浄)法の順守を義務付けている。

 ブラジルの元大統領は、政府が資金拠出したビットコインをベースとするマネーロンダリングの仕組みに関与し、約2240万ドルの政府資金を流用したして、投獄されている。このスキャンダルにより政治が混乱したため、ブラジル政府は署名と請願のための登録システムとして機能する、ブロックチェーンベースのモバイルアプリに対し投資を行っている。

 ブラジルの中央銀行は、アメリカがベースのR3ブロックチェーン連合と提携しており、そのCorda(コルダ)プラットフォームを利用して、同国の既存のインフラには属さない金融の構成要素向けに、ブロックチェーンの開発を行っている。また同銀行は、その他に4つのプラットフォームについても概念検証を進めており、即時グロス決済システムでのブロックチェーンの利用に力を注いでいる。

 同国政府もまた、財産所有権登記のためのプラットフォームとして、ブロックチェーンベースの土地権原システムを開発した。この取り組みは、アマゾン熱帯雨林における土地の違法開発を阻止することを目的としている。

Venezuela

ベネズエラ

 ハイパーインフレと低迷する経済に苦しむベネズエラは2月、海外からの投資を呼び込むため、原油を裏付けとする国の仮想通貨「ペトロ」を発行した。ニコラス・マドゥロ大統領は今年始め、企業や政府サービスに対し、仮想通貨やペトロの受け入れを命令した。しかしこの命令は、わずか数週間前に仮想通貨を違法と宣言した、ベネズエラ国会と矛盾するものだった。国会の反対派は、マドゥロ大統領は米国による制裁を回避する手段として、ペトロを利用しようとしていると異議を唱える。

 ペトロはリリース後すぐに壁に突き当たった。世界最大の仮想通貨取引所の1つ、ビットフィネックスは、ベネズエラに対する米国の制裁措置を理由に、同社プラットフォームでのペトロの使用を禁止・制限する声明を発表した。トランプ大統領も3月、同国の独裁政治に圧力をかけるキャンペーンの一環として、米国民によるペトロの購入を禁止した。ベネズエラは、政府が保有する自国通貨ボリバルに残っている価値を回収するため、ビットコインやアルトコインへ多額の投資を行っている。

 同国通貨の壊滅的なインフレに反応し、マイニング業者の数が飛躍的に増加したが、政府はその行為に明確なルールを確立する前に、多くの疑わしいマイナーたちを逮捕したと伝えられている。政府は仮想通貨マイニング業者に対し、昨年末に作成されたオンライン登記簿への登録を求めており、これが仮想通貨規制の最初の一歩になると見られる。同国政府は引き続きペトロへの支援を後押ししており、国民にペトロの売買やトレードの方法を学ばせるため、仮想通貨訓練コースの創設さえ行っている。

Chile

チリ

 チリの仮想通貨取引所2社が、複数の銀行で法人口座を閉鎖されたことを受け、チリ銀行協会に規制の明確化を要求した。チリの銀行は、仮想通貨に関する「懸念及び情報不足」から、同様の口座閉鎖を行った。口座を閉鎖された取引所は、チリで複数の政府機関に登録されており、反マネーロンダリング及び反テロ資金供与法も順守していると説明する。

 銀行幹部は口座閉鎖について、仮想通貨に対する偏見が理由ではなく、金融的な期待に沿わない口座へのサービスを拒否する、より広範囲な銀行業務方針を反映したものだと述べている。4月25日に報道された通り、チリの独占禁止裁判所はチリ国立銀行とイタウ・コープバンカに対し、ブダ社の口座を再開するよう命じた。同国における仮想通貨取引所の訴訟は、前述の2件を含む10の銀行に対して続いている。

 チリのエネルギー規制機関は、イーサリアムブロックチェーンネットワークを利用して、同国のエネルギー供給網の情報を認証するプロジェクトを発表した。同機関の事務総長はブロックチェーンへの移行について、データのセキュリティー対策が目的と述べている。

 このプロジェクトは開発に関する情報の公開を予定しており、一般からの信頼向上と、南米におけるブロックチェーン技術の理解促進に役立つだろう。

Bolivia

ボリビア

 ボリビアの中央銀行は14年から、政府が発行又は管理する通貨やコイン以外は、全て禁止とする徹底した措置をとっている。同銀行は発表の中で、特にビットコイン、クォーク、ピアコイン、ネームコイン、プライムコイン、及びフェザーコインについて言及しているが、この声明は全ての仮想通貨を対象としているように見える。

 銀行関係者は、「政府又は権限のある機関が発行・管理するもの以外のあらゆる種類の通貨は、違法である」と意見を述べた。また同銀行は、ボリビア国民はあらゆる未承認通貨について、その価格を表示することが禁じられているとも述べている。

Ecuador

エクアドル

 エクアドル政府は過去4年間にわたり、仮想通貨に対して断固とした否定的立場をとってきた。18年2月16日、同国中央銀行は声明を発表し、ビットコインは国内で使用が認められている決済手段ではないと国民に知らせた

「ビットコインを通して行われる金融取引は、エクアドルのどの機関にも管理、監督、又は規制されていないため、ビットコインの利用は、利用者が金融上のリスクを負うことを意味する。インターネットを通したビットコインなどの仮想通貨の売買は禁止されていない事実を、指摘しておくことは重要である。しかし、ビットコインは法定通貨ではなく、エクアドルにおいて通貨金融法第94条に規定される商品やサービスの決済手段として、認められていないことも強調しておく。

 しかしながら、エクアドルは14年から、独自の国営仮想通貨システム「システマ・デ・ディエロ・エレクトロニコ」の公式な開発を進めている。ディエロ・エレクトロニコ トークンはエクアドル中央銀行の資産に裏付けられ、エクアドルの国定通貨である米ドルとの固定相場制となっている。.

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