「若者」と言えば、仮想通貨業界が期待を寄せるターゲット層だ。「安全資産といえば金(ゴールド)しか思いつかないブーマー世代」とは異なり、若者世代はデジタルゴールドであるビットコインの魅力に気づいているはずという見込みだ。昨年12月には、米国のミレニアル世代はディズニーやマイクロソフト、ネットフリックの株式よりも、ビットコイン投資信託の方に投資しているという調査結果も発表された

しかし最近、ビットコインと若者の強固な関係を疑う声が出始めている。

先週には、ビットコインのボラティリティ(変動幅)が過去3ヶ月で最低レベルとなっており、すぐに利益を得たいデイトレーダーは株式市場の方に目を向けているという見方が話題になった。また、ブルームバーグ・デジタルのエグゼキュティブ・エディターであるジョー・ウィーゼンタール氏は、若者がロビンフッドのようなプラットフォームを通じて株式市場を発見していると指摘。ビットコインの過去1年間のパフォーマンスの「失望」の理由にあげた。

ロビンフッドは米国で人気急上昇中のトレーディングアプリだ。

実際、仮想通貨業界にとって若者による株式市場の「再発見」は思わぬ伏兵になり得るのだろうか?コインテレグラフジャパンは、ビットバンクのアナリスト長谷川友哉氏とFXcoinシニアストラテジスト松田康生に見解を聞いた。

ビットコインと株のトレードオフ関係に疑問符

ビットバンクの長谷川氏は、株式市場伏兵説に懐疑的だ。5月~6月の株価上昇局面でビットコインがついて行けなかった背景として「株式取引アプリの手数料無料化により、若年層の資金が株式市場に流れた」という見方があることに対して、「一見して筋が通るように思える反面、市況的な要因も大きかった」とみている。

「ビットコインの出来高が細り始めたのは5月の半減期を通過した後で、この頃にはネットワークのファンダメンタルズが一時不安定になったことや、鯨の動向を巡り市場心理が冷え込んだことで相場の上値が抑えられました。株式取引アプリの台頭により、確かに潜在的な流入資金の一部を株式市場に奪われているとは思いますが、これだけの材料をこなしつつも尚、相場が今年の高値圏を維持していることに鑑みるに、仮想通貨市場から株式市場へ著しい資金流出が伺えるとは言えず、こうしたアプリがビットコイン市場のダイナミズムを変えるような「伏兵的」存在とまでは現状で認識していません」

一方、FXcoinの松田氏も、「BTC相場と株式相場がライバル関係にあり、その出来高がトレードオフの関係」にあることに否定的だ。

「2019年のデータでは1日の株式相場の出来高は3000憶ドル、対してBTC相場は上下はあるものの数百億ドルで桁が一つ違います。また時価総額でに至っては株は昨年末で86兆ドル、これに対し仮想通貨市場全体でも数千億ドルで2桁違います」

株取引アプリは仮想通貨にプラス

その上で、両氏は、むしろロビンフッドが手がけるような株取引のアプリは仮想通貨業界にとっても追い風になるのではないかとみている。

松田氏は、「全体で言えば株投資が増えて投資家の裾野が広がれば、仮想通貨にも目が向きやすくなるという関係ではないか」と分析。長谷川氏は、ロビンフッドでは株取引以外に仮想通貨銘柄の取引も可能という点を指摘し、「むしろ若年層や投資初心者が、今後、仮想通貨に触れる機会を作ってくれているといった認識も持っています」と話した。