5月12日の半減期から1カ月以上が経過したが、ビットコイン(BTC)はわずかな上昇に止まっている。今週は一時9000ドルを割り込んだが、基本的には9500ドル付近で安定した推移が続いている。話題に乏しい仮想通貨業界の中で、ブルームバーグ・デジタルのエグゼキュティブ・エディターであるジョー・ウィーゼンタール氏のニュースレターが注目されている。同氏は、過去1年はビットコインにとって「失望の1年だった」と述べた。
(出典:Coin360 日本時間6月18日18時)
ビットコインに失望 6つの理由
仮想通貨に対して懐疑的な同氏は、「失望」の理由を以下のように6つあげた。
- ボラティリティ(変動幅)が高い中で新たな高値を記録していない。実際、これまでの大きなトレンドにおけるロウアーハイ(Lower Highs)をつけ続けているだけに過ぎない。このため、経済危機がビットコインにとっての追い風になるという議論は成立しない。
- 急上昇しないだけでなく、S&P500と同じ方向に進んでしまった。ビットコインは年初に急騰し、3月の大暴落で急落。その後、回復期で上昇して過去2、3日の間低迷している。
- ビットコインは今年、イーサリアムとほぼ同じのパフォーマンスをみせた。このため、ビットコインが「デジタルゴールド」であり、危機の時に他の仮想通貨とは異なるパフォーマンスをみせるという議論は成立しない。
- ビットコインの新規の供給量が半減する半減期は、多くのビットコイナーの間で価格上昇のきっかけと見られてきたが、無風だった。
- 米連邦準備理事会(FRB)による前例のない規模での金融緩和が続いて世界の政府が赤字を垂れ流している中、ビットコイナーが予想していたようなインフレや法定通貨暴落は起きていない。ビットコイン上昇のきっかけになるとする人気ストーリーの1つが成立しないことになる。
- 若者は、ロビンフッドのようなプラットフォームを通じて株式市場を発見している。ボラティリティ好きな投資家がビットコインに資金を投入するという現象がある一方で、新たな競争相手が出てきている。
メサーリ共同創業者の反論
メサーリ共同創業者であるライアン・セルキス氏は、ウィーゼンタール氏の議論は「ほとんどゴミ」だが、最後の1つだけは的を得ていると指摘。「確かに考えたことがなかった」と告白した。
以下がセルキス氏からの反論だ。
- ビットコインは流動性危機のためのヘッジではなく、通貨の失敗の際のヘッジ。
- イーサや他の仮想通貨は歴史的にビットコインと連動していない。ビットコインが2017年初期に1000ドルを回復した時、マーケットのドミナンス85%を超えて90%に迫った。その数カ月後にイーサ(ETH)とXRPが爆発してバブルが崩壊した。
- 2013年につけた過去最高値の回復は、2016年の半減期の半年後に実現した。ナラティブ(物語)ほど半減期は影響力がないという証拠かもしれない。
- 流動性危機のど真ん中で、中央銀行のマネープリントによる「即座の」反応としてビットコインに津波のように資金が流れるとは思わない。また機関投資家の参入には時間がかかる。彼らは「明らかな」安全性を確認してから、話に乗ってくるだろう。この議論は、1年後に確かめよう。
- 原則的にジョーのタイムラインはおかしい。文字通り全ての資産が1つの「コロナ恐怖指数」によって同じように動いた。
- 現在は、長期的なポジションを作る時。新型コロナの追い風を受けるのはハイテク業界、逆風を受けるのは商業不動産になるだろうが、一夜にして好景気と不景気がくるわけではない。しかし、長期的な強気派は強い。
最近、ウィーゼンタール氏の第6のポイントと似たような指摘も出ている。
VISAで仮想通貨部門トップのカイ・シェフィールド氏は、ビットコインが長期投資としての魅力を増している一方で、すぐに利益を得たいデイトレーダーは株式市場の方に目を向けていると指摘している。